魔女とレヴィ 第2話 霜が降りる頃に
レヴィは何も言わずに踵を返す。
ざわめきの残る広間を、静かに背にして歩き出した。
(……帰りたい。)
胸の奥に浮かぶのは、月光に照らされたあの庭。
風の匂い。ハーブの香。
あの穏やかな時間が、心の奥で微かに疼く。
その瞬間――
「もう行くの?」
シンシアの声が、背後から柔らかく届いた。
振り返れば、薔薇色のドレスの裾が静かに揺れ、
金糸のような髪が燭光を受けてきらめいていた。
「用は済んだ。」
レヴィの声は冷たく、感情の色を欠いていた。
「あなたって、ほんとに仕事が終われば風みたいに消えるのね。」
シンシアは笑みを浮かべ、ゆっくりと歩み寄る。
「たまにはアフターも楽しんでいきなさいな。
この夜会のワイン、私が選んだ最上級よ?」
「……俺は酒は嗜まない。」
「ええ、知ってるわ。」
唇の端を上げ、彼女は囁く。
「でも――その冷たい瞳に、いつか熱を灯してみたいと思うの。
私の手で。」
レヴィは眉をひそめもせず、ただ短く言う。
「……くだらない。」
すれ違うように歩き出す彼の肩先を、
シンシアの指先がかすめる。
その仕草は、命令でも誘惑でもない――ただ、挑戦。
「いいえ、レヴィ。
くだらないことほど、女は本気になるものよ。」
返事の代わりに、微かな風が舞う。
光の粒が一瞬きらめき、レヴィの姿は掻き消えた。
その場に残ったのは、
夜気に溶けていく銀木犀の香り。
静かで、冷たくて、けれどどこか胸を締めつけるような――
彼そのものの残り香だった。
シンシアは目を細め、ゆっくりと息を吸う。
「……ねえ、レヴィ。」
唇が艶やかに笑みを描いた。
「あなたの風、いずれ私の香りに変えてみせるわ。」
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