第2章 第1話 初雪の日の記憶 


雪を踏みしめる音。
身を切るような冷気。
眠りについた庭を、やさしい雪が覆っていく。


ふと、腰の剣を抜く。
刃に映ったのは――騎士だった頃の自分。


胸が詰まり、息が浅くなる。
レヴィは深く息を吸い、空を仰いだ。


――レヴィ。


ああ……。


懐かしい声。
忘れるはずのない声。


足は自然と、神殿へ向かっていた。
毎日のように通った道。
祭壇へと続く、整えられた石畳。


迷いはない。


レヴィは神殿の扉に手をかけ、押し開けた。


重い扉の隙間から、金色の光が差し込む。
神聖な乳香の香り。
そして――彼女が好んだ、白檀の香り。


光の中で、ひとりの女性が振り返った。


「……リリー」


レヴィは、懐かしさを滲ませて、その名を呼んだ。