魔女とレヴィ 第9話 君の手が 


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 百合夜は、壊れた鉢植えに駆け寄った。
「どうしよう……枯れちゃう……」
 指先が、小さく震えている。
「枯れちゃったら……」
 その先の言葉は、喉の奥で途切れた。
「百合夜? どうした?」
「ママ……? ごめんね、ママ……」
 ふたりの声は、どこか遠くに弾かれていく。
「枯れちゃったら……いなくなっちゃう……!」
 百合夜は、割れた鉢の破片も構わず、必死に拾い集めようとする。
「百合夜、危ない! 怪我をする!」
 レヴィが腕を掴む。
 けれど、その手は振り払われる。
「いなくなっちゃう……
 そんなの、嫌よ……」
 ぽろぽろと涙をこぼしながら、土にまみれた花を抱え込む。
「百合夜、落ち着け……!
 誰が、いなくなるんだ?」
 そのとき、大樹が不安そうに口を開いた。
「レヴィ……それ……
 レヴィが好きだって言ってた、ビオラだよ」
 ――はっとして、視線を落とす。
 割れた鉢の中。
 泥にまみれながらも、かろうじて形を保っている小さな花。
 あの日、庭に咲いていたビオラ。
 周囲に馴染もうともせず、
 かといって、強く主張するわけでもない。
 ただ、そこに在るだけの花。
 その姿に――
 いつかの自分を、重ねただけだった。
 ただ、気に入った。
 それだけのはずだった。
「枯れたら……レヴィが、いなくなっちゃう……」
 百合夜は、声を押し殺すように呟いた。


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