魔女とレヴィ 第8話 暗闇を照らすもの
「この道をずーっと進むと、大きな木が見えるの。そこを左よ」
百合夜は軽やかに闇を歩く。
その声が――ふいに重なった。
(レヴィ……この道は、祭壇への近道よ)
遠く忘れていた、懐かしい声。
封じたはずの過去の音色が、微かに揺れる。
レヴィの胸の奥では、
溶けた闇の隙間に、小さな光が灯っていた。
押し込めていた記憶を、そっと照らす光。
「レヴィ、見て。もうすぐ抜けるわ」
振り返った百合夜が、月明かりの影の中でふわりと笑う。
その一瞬――
レヴィの目には、彼女がリリーと重なって見えた。
「……リリー」
「レヴィ?」
真っ直ぐな瞳がこちらを見る。
「……なんでもない」
レヴィは目を閉じ、深く息を吸った。
「帰ろう」
その手を離さないまま、いつもの坂を上った。
*
大樹を寝かしつけ、百合夜がリビングに戻ると、
レヴィはテラスで欠けた月を見上げていた。
百合夜はレモンバーベナとカモミールのティーを差し出す。
甘く爽やかな香りがふわりと広がり、レヴィの眉がほどける。
「レヴィ、なんかいいことあった?」
「ああ……なぜか、心が軽くなった」
胸の奥底に沈んでいた濁りは今、
静かで澄んだ水面になっている。
その向こうには、閉ざしていたはずの思い出が、
やわらかな光の中に立っていた。
「そう。よかった」
百合夜が微笑んで部屋へ戻ろうとした、そのとき。
「……百合夜。ありがとう」
レヴィの声は、確かに微笑んでいた。
百合夜もそっと笑みを返す。
その夜、レヴィははじめて――
ずっと触れられなかった記憶の扉に、静かに手をかけた。
今なら、
あの頃の“綺麗な思い出”を拾える気がした。
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第1話です。
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魔女とレヴィ
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