魔女とレヴィ 第8話 暗闇を照らすもの 


「この道をずーっと進むと、大きな木が見えるの。そこを左よ」


 百合夜は軽やかに闇を歩く。


 その声が――ふいに重なった。


(レヴィ……この道は、祭壇への近道よ)


 遠く忘れていた、懐かしい声。
 封じたはずの過去の音色が、微かに揺れる。


 レヴィの胸の奥では、
 溶けた闇の隙間に、小さな光が灯っていた。


 押し込めていた記憶を、そっと照らす光。


「レヴィ、見て。もうすぐ抜けるわ」


 振り返った百合夜が、月明かりの影の中でふわりと笑う。


 その一瞬――
 レヴィの目には、彼女がリリーと重なって見えた。


「……リリー」


「レヴィ?」


 真っ直ぐな瞳がこちらを見る。


「……なんでもない」


 レヴィは目を閉じ、深く息を吸った。


「帰ろう」


 その手を離さないまま、いつもの坂を上った。



 大樹を寝かしつけ、百合夜がリビングに戻ると、
 レヴィはテラスで欠けた月を見上げていた。


 百合夜はレモンバーベナとカモミールのティーを差し出す。
 甘く爽やかな香りがふわりと広がり、レヴィの眉がほどける。


「レヴィ、なんかいいことあった?」


「ああ……なぜか、心が軽くなった」


 胸の奥底に沈んでいた濁りは今、
 静かで澄んだ水面になっている。


 その向こうには、閉ざしていたはずの思い出が、
 やわらかな光の中に立っていた。


「そう。よかった」


 百合夜が微笑んで部屋へ戻ろうとした、そのとき。


「……百合夜。ありがとう」


 レヴィの声は、確かに微笑んでいた。


 百合夜もそっと笑みを返す。


 その夜、レヴィははじめて――
 ずっと触れられなかった記憶の扉に、静かに手をかけた。


 今なら、
 あの頃の“綺麗な思い出”を拾える気がした。

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魔女とレヴィ

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