魔女とレヴィ 第二話 霜が降りる頃に
「こんにちは、奥様。こちらに“レヴィ”という名の――」
青年が言いかけた、その瞬間。
背後から、風がわずかに揺れた。
「……何の用だ。」
不満そうな声とともに、レヴィが現れる。
白いセーター姿のまま。
いつもの冷ややかな気配とは違い、どこか柔らかく――そして、少し可愛らしい。
青年は思わず目を瞬かせ、口を半開きにした。
「……レヴィ? その格好……」
レヴィは眉をひそめ、低くため息をつく。
「……なんだよ。」
次の瞬間、風がふわりと二人のあいだを抜け、
霜の粒がきらめきながら舞い上がった。
百合夜は、不服そうに眉を寄せるレヴィを、不安げに見つめた。
彼の隣では、金の髪の青年――エルがにこやかに微笑んでいる。
その笑みにはどこか“余裕”があって、見ているだけで空気がやわらかくなる。
けれど、レヴィの肩は明らかに強張っていた。
「まぁ、寒い中ありがとう。どうぞ、上がって?」
百合夜がそう促すと、エルは軽く頭を下げて玄関を上がろうとする。
その背を、レヴィの低い声が止めた。
「エル、靴は脱げ」
「おっと失礼。……お邪魔します、奥様。――あぁ、レヴィ、そんな顔しないでくれるか?」
「……してねぇよ」
短いやり取りに、ぴりりとした空気が走る。
けれどその緊張を吹き飛ばすように、奥の部屋から小さな足音が駆けてきた。
「レヴィー! ゲームしよーっ!」
大樹がポータブルゲーム機を握りしめ、勢いよく飛びつく。
レヴィは反射的に受け止め、思わず息をついた。
「……おい、大樹。まずは挨拶だろ」
「えー、だって――」
「だって、じゃない」
その声音があまりにも“父親”めいていて、百合夜は笑いをこらえきれずに頬を押さえた。
エルが口元に手を当て、くすりと笑う。
「ふふ……意外と似合ってるな、レヴィ。そんな家庭的だったとは」
「黙れ」
「まぁまぁ、ここじゃ寒いでしょ。居間へどうぞ」
百合夜が笑いながら促すと、三人はリビングへ向かった。
ソファに腰を下ろすや否や、大樹は当然のようにレヴィの膝に乗る。
レヴィが眉を上げる間もなく、小さな手がゲーム機を押しつけた。
「はい、二人プレイ!」
「……おい」
百合夜が吹き出し、エルは隣で肩を震わせた。
霜の朝の張りつめた空気が、ゆるやかにほどけていく――。
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