魔法とレヴィ 第1話 十六夜の魔法
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「ねぇ、ママ。」
大樹がレヴィを見上げて首をかしげた。
「この綺麗なお兄さん、だれ?」
百合夜は息をのんだ。
綺麗?!――見えている? 彼が?
レヴィの姿を。
「えっと……ママの、お友達よ。」
ぎこちなく笑うと、レヴィは小さく肩をすくめた。
「……まぁ、そういうことにしておこう。」
大樹は納得したように「ふーん」と言って笑った。
その笑顔に、レヴィの表情がほんのわずか緩む。
その後、レヴィは庭の一角に歩み寄った。
小さな石を四つ拾い、静かに四隅へと置いていく。
指先が空をなぞるように動き、囁くような呪文が風に溶けた。
淡い光が一瞬、庭を包み――空気が透きとおる。
まるで世界そのものが、息を整えたように。
「……これでよし。」
呟く声は、どこか優しかった。
その夜。
膨らみ欠けた月が雲間に浮かぶころ、百合夜はテラスで静かに茶を淹れていた。
ミントと蜂蜜の香りが夜気に溶ける。
「……いい香りだな。」
声に振り向くと、レヴィが欄干にもたれていた。
闇に溶ける髪が月の光を受け、銀糸のようにきらめく。
「珍しいわね、自分から来るなんて。」
百合夜が微笑むと、レヴィは視線を逸らしながら、
「……息子、可愛いな。あと――この庭、悪くない。」
と、ぼそりと呟いた。
百合夜は思わず吹き出してしまう。
「ふふっ……何それ、褒め言葉として受け取っておくわ。」
レヴィは小さく息をつき、月を見上げた。
「……しばらく、ここで様子を見させてもらう。」
「様子?」
「そう。まぁ、悪い気の流れがないか……それとなく、な。」
百合夜は不思議そうに笑いながら、湯気の立つカップを差し出す。
「それなら――お茶でも飲んでいけば?」
レヴィは視線を落とし、一瞬だけ懐かしむように微笑んだ。
まるで、遠い記憶の中に何かを見たように。
夜風が二人の間を抜け、
その奥で、欠けたままの月が静かに光っていた。
――庭は再び、穏やかな眠りにつく。
第1話 十六夜の魔法
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