魔女とレヴィ 第1話 十六夜の魔法
レヴィは、枯れかけたハーブの間を抜け、風の吹く方へ静かに歩き出した。
その足取りには、いつもの気怠さよりも、わずかな緊張が混じっている。
「……やっぱりか」
短く呟いた瞬間、空気がざわめいた。
庭を包む風が逆流し、ハーブの葉を逆立てる。
その中心で、淡い光が輪郭を描く――大気の妖精だ。
透明な翼が震え、怒りを帯びた風がレヴィの髪を乱す。
「レヴィ! あの子、怒ってる……!」
「見りゃ分かる」
レヴィは片手を上げ、低く呪文を唱えた。
次の瞬間、光の帯が走り、妖精の体をやわらかく縛る。
風が止まり、空気がぴたりと凍りつく。
「やめて! 苦しそうよ!」
「お前、下がれ」
レヴィの声は冷たく響いた。
その瞳の奥には、怒りよりも――警戒がある。
「今のは“大気の理”が乱されてる。放っとけば、この庭ごと吹き飛ぶぞ」
そう言うと、レヴィは百合夜には理解できない古語で、空に向かって何かを命じた。
その声に応じるように、風の層の中から小さな光がいくつも現れ、
拘束された妖精のまわりを静かに旋回し始める。
百合夜はその光を見上げ、胸に手を当てた。
「……あなた、本当に妖精たちを知ってるのね」
レヴィは軽く鼻を鳴らす。
「知ってるどころか、こいつらの気まぐれにはうんざりだ」
そして、小さく吐き捨てるように――
「お前の庭も、こいつらが荒れてりゃ長くはもたねぇ」
とだけ言い残し、風の向こうを見つめた。
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