【好事家w.w.からの挑戦状 19-2】 この作品を作ったのは誰?(作曲家、解答編) | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 さてさて。まずはクイズを出題しっ放しで解答編のアップが思いっきり遅れてしまったお詫びをしなくてはなりませぬ…m(u_u)m。実は、先月下旬あたりから、夏の疲れなのか、はたまた歳のせいなのか、しばらく体調を崩しておりまして(かといって本業の方は休むワケにもいかず…)ブログのアップもままならぬ間に、あっという間に10月に突入してしまいました。ようやく記事を書く気力と体力が少しばかり回復してきたところで、解答編をお送りしたいと思います。改めて、長らくお待たせしてしまって本当に申し訳ありませんでした。

 

 今回出題したクイズは、全部で6問でした。さっそく順番にみていきましょう。


【第1問】

≪解答≫

長渕剛

≪ヒント再掲&補足情報≫

(a) 「夏に、フレッシュ。」(渡辺千秋)[作詞:秋元康、作曲:長渕剛、編曲:大谷和夫][1984.4.1発売、オリコン最高位 -位、売上げ枚数 -万枚]

(b) 「秘密じゃないけど秘密」(つちやかおり)[作詞:秋元康、作曲:長渕剛、編曲:飛澤宏元][1983.3.1発売、95位、0.5万枚]

(c) 「わたしの胸に」(伊藤麻衣子)[作詞:荒木とよひさ、作曲:長渕剛、編曲:今泉敏郎][1985.5.22発売、43位、2.0万枚]

≪解説≫

 「70年代にフォーク歌手としてデビュー」、「熱狂的なファンを多数抱えることで有名」というヒントのみから、アーティストを一人に絞るのはさすがにムリかも…。だって、吉田拓郎、長渕剛、さだまさし、松山千春あたりはみーんな当てはまっちゃいますからねー。

 そこで、ヒントとしてアップしたYouTubeに着目してみることにします。「夏に、フレッシュ。」と「秘密じゃないけど秘密」は、どちらも頭サビが正統派女性アイドル向けの典型的な爽やかポップスですが、これらの作品、実は長渕剛のペンによるもの。80年代中盤頃から”無頼派(?)ロックシンガー”の道を歩んでいったイメージとはまるでかけ離れていますが、こんな風に意外性のある優れたオリジナル作品が書けるところが、長渕剛のすごいところだと思うワケなんですよね~。

 で、ここまでで分からなかった人が最後に伊藤麻衣子の「わたしの胸に」を聴いてみると、彼のフォーク時代の楽曲を髣髴させるコード進行が現れる、という仕掛けになっていたんですが、いかがでしたか。つちやかおりの楽曲として、いかにも長渕的”な「失恋散歩道」をあえて外して「秘密…」をアップしたのは、言うまでもなくクイズとしての”意外性”を演出するためでした…その辺お察し下さいね!

 ちなみに「わたしの胸に」は、テレビドラマ「青が散る」の挿入歌として小ヒットとなった「人間(ひと)の駱駝(らくだ)」を歌っていた大塚ガリバーの2ndシングル「さよならだけの終止符」と異名同曲だったりします。

 

   「さよならだけの終止符」(大塚ガリバー)

 


【第2問】

≪解答≫

奥居香 (現:岸谷香)

≪ヒント再掲&補足情報≫

(a) 「HELLO」(松下萌子)[作詞:中山加奈子/岸谷香、作曲:岸谷香、編曲:小西貴雄][2001.11.21発売、オリコン最高位 90位、売上げ枚数 0.3万枚]

(b) 「エデンの都市(まち)」(観月ありさ)[作詞:田口俊、作曲:奥居香、編曲:奥居香/笹路正徳][1991.8.28発売、5位、18.1万枚]

(c) 「スピード」(森口博子)[作詞:西脇唯、作曲:奥居香、編曲:奥居香][1992.9.24発売、15位、10.3万枚]

≪解説≫

 「エデンの都市」、「スピード」 ともに、作曲者である奥居香の“手くせ”がメロディーにくっきりと出てますよね! 3曲の中では一番マイナーなミディアムテンポの「HELLO」も、またしかり、ですし。

ヒントにある「90年代にトップアーティストとして活躍したとある有名バンド」というのは、もちろん“赤坂小町”ではなくて“プリンセス プリンセス”のこと(苦笑)。もっとも、超低空飛行だった赤坂小町時代はさておき、プリプリになってからも、デビューから2年くらいはさっぱり鳴かず飛ばずでしたけど…。マイナー時代からのファンの中には、2年ぶりに再リリースされた「世界でいちばん熱い夏」(1989.7.1.発売、オリコン最高位1位、売り上げ枚数86.5万枚)が大ヒットした時に、「何だよいまさら…」と感じた人も多かったみたいですね。

 奥居香については一般的に、“ルックスもいけてるロック姐さん”の印象が強いかも知れませんけど、“赤坂小町”時代の2作目シングル「ひと夏のスキャンダル」(1984.7.5.発売、オリコン最高位-位、売り上げ枚数-枚)では、当時のアイドルも思わずびっくりの“舌っ足らずの媚びた歌唱”を披露してます。やー、私はこういうの大好物なんですケド(爆)、本人にとっては間違いなく黒歴史に違いありません。

 

   「ひと夏のスキャンダル」(赤坂小町)

 


【第3問】

≪解答≫

加藤登紀子

≪ヒント再掲&補足情報≫

(a) 「土耳古行進曲」(小沢昭一)[作詞:加藤登紀子、作曲:加藤登紀子、編曲:佐々永治][1974.9.?発売、オリコン最高位 -位、売上げ枚数 -万枚]

(b) 「わが人生に悔いなし」(石原裕次郎)[作詞:なかにし礼、作曲:加藤登紀子、編曲:若草恵][1987.4.21発売、12位、7.8万枚]

(c) 「難破船」(中森明菜)[作詞:加藤登紀子、作曲:加藤登紀子、編曲:若草恵][1987.9.30発売、1位、41.3万枚]

≪解説≫

 この問題は、ヒントとしては「難破船」一曲で必要十分なのであって、本当は3曲も並べる必要はなかったんですよね。でも、不真面目すぎる問題作「土耳古(トルコ)行進曲」とのギャップがあまりに可笑しいので、つい出題してしまった…という次第です。

 この「土耳古(トルコ)行進曲」、タイトルや歌詞を何気なく聴いていると、単にトルコに出兵される男が勇壮に歌い上げる曲にしか思えないですが、何てったって ♪ 前立腺肥大症~ の件(くだり)が忘れられない「父チャン音頭」をリリースしたあの小沢昭一センセですから、そんな真面目なオチなわきゃーない。

 加藤登紀子女史のペンによる歌詞をよーく聴いてみると、江戸時代に流行った都々逸「三千世界のカラスを殺し、主と朝寝がしてみたい」(遊女と客の睦言を歌ったもの)をもじった ♪三千世界のカラスを殺し あなたとお手玉してみたい~ なんつう歌詞が出てくるんですよね。つまり、「土耳古行進曲」なんていう難しい表記を使ってはいても、その実態は、80年代にトルコ人留学生からの抗議をきっかけに名称が変更になった“アレ”を目指して身体を鍛える野郎のことを暗喩した“エ□歌謡”であるということ。作品自体が一見知的な装いをしているのに実は…という部分は、いかにも東大出身の加藤女史ならではの“諧謔”だと言えましょう。

 

 「父チャン音頭」(小沢昭一)

 


【第4問】

≪解答≫

坂本龍一

≪ヒント再掲&補足情報≫

(a) 「遙かな微笑み」(飯島真理)[作詞:飯島真理、作曲:坂本龍一、編曲:井上鑑][1986.7.21発売、オリコン最高位 40位、売上げ枚数 0.9万枚]

(b) 「無国籍ロマンス」(荻野目洋子)[作詞:岡田冨美子、作曲:坂本龍一、編曲:入江純][1985.2.21発売、35位、2.7万枚]

(c) 「いばらの冠」(中谷美紀)[作詞:松本隆、作曲:坂本龍一、編曲:坂本龍一][1997.9.3発売、36位、1.8万枚]

≪解説≫

 いま思えば、「作曲者は80~90年代にかけて、様々な形態で我が国野歌謡シーンに大きな足跡を残した大物です。」というヒントは、さすがに漠然としすぎていて「いったい何の事やら…!?」状態だったかも。でも、“中谷美紀プロデュース”から、大ヒットしたソロ4枚目シングル「砂の果実」(1997.3.21発売、オリコン最高位10位、売り上げ枚数33.6万枚)が思い浮かべばしめたもの(ちなみに、彼女のソロシングルのうち、これだけが唯一“中谷美紀 with 坂本龍一”と連名になってます)。「いばらの冠」は売れませんでしたが、曲を聴いて戴くと、「The Other Side of Love」(坂本龍一 featuring Sister M)あたりと同じく、大きな掌で包み込まれるような安堵感が感じられる音(教授独特の作風ですね)に浸れます。

 オギノメちゃんの「無国籍ロマンス」は、彼女が「ダンシング・ヒーロー」(1985.11.21発売、5位、32.4万枚)でブレイクする前の作品で、歌謡曲としては奇をてらったメロディラインが並びますが、サビメロの裏声のところで彼女の歌唱力の高さをアピールしようという試みは成功していますし、作品全体に漂うどことなくノーブルな感じがいかにも“教授”らしい佳曲だと思いますねー。

 

   「The Other Side of Love」(坂本龍一 featuring Sister M)

 


【第5問】

≪解答≫

佐野元春

≪ヒント再掲&補足情報≫

(a) 「FREEDOM」(ANDY'S)[作詞:ANDY/SHOW/JOSE/MOTO、作曲:佐野元春、編曲:佐野元春][1997.7.23発売、オリコン最高位 10位、売上げ枚数 11.4万枚]

(b) 「昨日までの君を抱きしめて」(猿岩石)[作詞:佐野元春、作曲:佐野元春、編曲:CHOKKAKU][1998.3.18発売、41位、1.1万枚]

(c) 「すべては、この夜に。」(吉川晃司)[作詞:佐野元春、作曲:佐野元春、編曲:西平彰][1986.9.30発売、4位、12.2万枚]

≪解説≫

 これはヒントの文章よりも、まずはYouTubeを聴いてもらって、それらに共通して通底するアメリカナイズされた作風から、“佐野元春”という答えにたどり着くのが一番楽なのでは…?

 YouTubeの中で一番リリース時期が早い「すべては、この夜に。」(吉川晃司)は、もともと佐野元春が沢田研二のアルバム『NON POLICY』に提供したものを、その2年後にシングルとしてカバーしてヒットに導いたもの。「FREEDOM」は、テレビ番組「とんねるずの生でダラダラいかせて!!」内の企画として結成されたANDY’S(石橋貴明、定岡正二、デビッド伊東、福澤朗)への提供曲です。芸人でありながら爽やかで味のある歌声で楽しませてくれた猿岩石の甘酸っぱい青春ソング「「昨日までの…」は、彼らの人気がすでにピークを過ぎていたせいでほとんど売れなかったのですが、“芸人の余技”として埋もれさせてしまうには勿体ない秀逸な作品だと、ここで言い切ってしまいましょう。(a)(b)の2曲は、佐野元春がセルフカバーしているので、YouTubeをアップしておきますね。

 そうそう、佐野選手は“Holland Rose”名義でこれまた大名曲「ハートのイヤリング」(松田聖子)を書いているんですが、これはさすがにメジャー過ぎると思って敢えて外したので、悪しからず…。

 

 「FREEDOM」(佐野元春)

 

 「Seasons」(佐野元春)[「昨日までを抱きしめて」(猿岩石)の異名同曲]

 

 

 

【第6問】

≪解答≫

浜田省吾

≪ヒント再掲&補足情報≫

(a) 「想い出のファースト・キッス」(三谷晃代)[作詞:浜田省吾、作曲:浜田省吾、編曲:渡辺エジソン][1977.10.5発売、オリコン最高位 -位、売上げ枚数 -万枚]

(b) 「制服をぬいだら」(池田ひろ子)[作詞:林カヨコ、作曲:浜田省吾、編曲:竜崎孝路][1976.3.1発売、-位、-万枚]

(c) 「アテンション・プリーズ」(能勢慶子)[作詞:喜多条忠、作曲:浜田省吾、編曲:船山基紀][1979.1.5発売、62位、2.6万枚]

≪解説≫

 広島フォーク村への参加を経て、1973年にグループ「愛奴」を結成した浜田省吾は1975年に脱退、1976年にシングル「路地裏の少年」でソロデビューを果たします。しかし、1979年にリリースした「風を感じて」が小ヒット(1979.8.21発売、25位、10.2万枚)を記録するまでは、さっぱり売れない時期が続き、その間は所属事務所(カレイドスコープ)の親会社(ホリプロ)の歌手に楽曲を提供することで、糊口を凌いでいた、というワケ。う~む、clicheな言い回しで何なのですが、“人に歴史あり”ですよねぇ…。

 今回のクイズでは、女性アイドルへの提供曲を3発並べてみましたが、(a)「想い出の…」と(b)「制服を…」は、見事なまでに“オールディーズ風味”に仕上がってます。もっとも、ハマショーは、和田アキ子、リューベン&カンパニー、ミッシェルあたりの“非”女性アイドルにも、個々のイメージに合わせた楽曲をきちんと書き分けているので、もともと職業作曲家的な才能が高い人なんですよね。

 最後に、三谷晃代サンは、東芝EMIからリリースしたシングル4枚が奇跡的にすべて名曲という、私の大のお気に入り歌手なんですが、デビュー曲「絶交」以外はCD化されてない…なぜだ~。ユニバーサルミュージックさん、私が生きている間(←あと20年くらいか?)に、何とかCD化をお願いしますね!!!

 

【補足】

 ”宝ちゃん”さんから戴いた情報によりますと、何と、12月21日に三谷晃代さんのコンプリートベストが発売されるようです! これで、ハマショー作曲のラストシングル「想い出のファースト・キッス」はもちろん、2ndシングル「友達の恋人」、3rdシングル「ひい・ふう・みい」も、めでたく初CD化ということになるわけですね~。いやはやめでたい!

 

 

 解答編は以上です。皆さんはどのくらい正解できましたか…?

 今回は全部で7名の皆さんから、嬉しい解答・コメントを戴きました~!毎度のことながら、拙ブログにお付き合い下さって有り難く感じると同時に、本業や体調不良などのためレスポンスが大幅に遅れることが多くて、大変申し訳なく思っております。今回のクイズは、”マニアック度”がそれほど激烈ではなかったせいか、多くの方が半分以上正解されていたようで、出題サイドの独りよがりにならなくて良かったなぁ…とひと安心しているところであります。

 それでは、今回はこの辺でおしまいとします。またお逢いしましょう~!