【独偏ベストテン 47-2】 いしだあゆみのシングル作品 (1~5位) | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 毎度のことながら、wishy-washyが独断と偏見に基づいて自己満足気味にお送りしているベストテンのコーナー…、11/30には、いしだあゆみさんに俎上に載ってもらって久々の独偏ベストテンをお送りしたワケですが、皆さん楽しんで戴いてますでしょうか。クリスマス・イブにアップした“お茶濁し記事”にも書いたように、続きの記事がすっかり遅れてしまって申し訳ありませんでした…m(_ _ )m



 前回の独偏記事に対しては、数名の方からコメント戴きまして、中には上位予想もされた方も(welcome)。大本命と思われる「ブルーライト ヨコハマ」以外では、「太陽は泣いている」「さすらいの天使」…なーんて作品が挙がっていましたが、さて。この酔狂なオヤヂ(←もちろん私のこと)は、いったいどんなセレクトをしていたのでしょうか …ってなわけで、長らくお待たせ致しました。いしだあゆみシングルA面の独偏ベストテン上位5作品の発表を、さっそく第5位からいってみましょう~


第5位 マイルド・ロマン・ロック 【オススメ度★★★】
作詞:仲畑貴志、作曲:大野克夫、編曲:馬飼野康二
[1980.6.25発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]



 第5位は、サントリー樹氷マイルド・ウォッカのCMソングにして、54作目のシングル「マイルド・ロマン・ロック」でした~ バロン吉元の漫画「柔侠伝」シリーズのヒロイン“茜”のイラスト()や、「樹氷にしてねと、あの娘は言った。」という名キャッチコピーを覚えている人は多いと思いますが、彼女が歌っていた“樹氷”のCMソングを知っている人はあまりいない…かも知れません

 実は
いしだあゆみは、この曲の1年前に同じ“樹氷”のCMソングとして宇崎竜童作曲の「MILD NIGHT」をリリースしていて、そちらはオリコン100位以内に入っています。でも、私は「マイルド・ロマン・ロック」の方が断然好みなんですよね大野克夫センセの作風といえば、“メジャーコードとマイナーコードの複雑な饗宴”とか“哀愁たっぷりのメロディ”のように私の大好物が登場するワケではないのですが、とにかくスタイリッシュでハイセンスなのがイイんだな この「マイルド…」も、どちらかと言えば地味な部類に属する作品ではありますが、聴けば聴くほど味わい深くて後から愛しくなってくるタイプの佳曲ではないでしょうか。



第4位 今日からあなたと 【オススメ度★★★★】

作詞:橋本淳、作曲:筒美京平、編曲:筒美京平
[1969.8.1発売; オリコン最高位7位; 売り上げ枚数24.4万枚]

 第4位に入ったのは、28作目シングル「今日からあなたと」でした 大ヒットした「ブルーライト ヨコハマ」のおよそ半年後にリリースされた曲ということもあって、基本的には「ブルーライト…」と同じ路線を踏襲した無難なコンセプトの作品と言えます。で、この曲で目を引くのは、意識的に「お色気」というフレーバーを振りかけてみました~、ってな仕上がりになっている点でしょう。その「お色気」ぶりはと言うと…おっほん。言葉で説明するよりも歌詞を見てもらった方が早いので、こちらをどうぞ~

 ♪ あなたにあげてよかった 悲しい想い出は
   男の人だから忘れて 忘れてくれる
   あなたにあげてよかった 心の秘密を
   かがやく目の中で 生きてる生きてる恋が
   今日からは 愛されて おもいきり甘えて
   くちづけしたいの したいの
   あなたにあげてよかった わたしの真心を
   やさしく守られて 歩いて歩いてゆける

 冒頭のフレーズから、西川峰子の印象的な大ヒット曲「あなたにあげる」(1974.7.25発売、オリコン最高位1位、売り上げ枚数55.6万枚)を連想する人もいそうです
でも、西川サンがあげたのは「私」で、いしだサンがあげたのは「悲しい思い出」コンセプトが全然違うんですよね~。意味シンな言葉遣いなだけに、いしだサンの方はやや“肩すかし”って気がしなくもないですが、一方で少しホッとしている自分がいたりなんかして。これはやっぱり、いしだサンの上品なイメージを壊されたくないという無意識の感覚が、私の中にあるからだと思います(おっと、西川さんが上品じゃないっていう意味ではないですよ。あれは女性が一途な想いを庶民的&ストレートに表現したのが良かったんですから)。 いしだサンの二回目の ♪ したいの~ のところを少しスローテンポにして聴き手の注意を引くところなんかは“技あり!”の作り方ですし、それに、いしだサンがまた“色気”の度合いがほどよく抑制された歌い方でこなしているのが、実にイイ感じなんですよね~。



第3位 ブルーライト ヨコハマ 【オススメ度★★★★】

作詞:橋本淳、作曲:筒美京平、編曲:筒美京平
[1968.12.25発売; オリコン最高位1位; 売り上げ枚数100.3万枚]

 上位3曲の一角に食い込んだのは、皆さんもご存じの26作目シングル「ブルーライト ヨコハマ」でした~ この曲は、1969年の年明けにチャートを急上昇して、2月から4月にかけて9週間もの長い間、オリコン1位をキープしてミリオンセラーとなりました

 もっとも、いしだあゆみとしては、この曲の半年前にリリースした「太陽は泣いている」で、歌手として初めてスマッシュヒットを飛ばしている
んですよね。でも、「太陽は…」の基本コンセプトは、グループサウンズ(GS)の全盛期に出現した、GSサウンドを前面に押し出した女性歌手(例えば、黛ジュン中村晃子など)と同一路線上にある試みに過ぎませんでした。従って、この「ブルーライト…」こそが、彼女が初めて独自の個性を引き出すことに成功した記念碑的な意義を持つ作品と言えるのではないでしょうか。都会的な日本女性の世界を、ちょっと“取り澄ました”雰囲気でゆったりと歌い上げる…というスタイルを確立したことが、他の女性歌手との差別化を図ることにうまく繋がったんでしょうね。

 んもうイントロからして、チェンバロ&トランペットチームとエレキギター&グロッケンチームがユニゾンで掛け合いながら、哀愁たっぷりと華やかなサウンドを展開してゆく
…という、文句なく「売れて当然っ」と思える秀逸な完成度ですよね~。インパクトも抜群だし…。曲調は比較的スローに進んでいくのに、リズム感がカッチリとキープされているせいで、新鮮な聴き心地に仕上がっているのも、いわゆる“筒美マジック”のなせる技()なのでしょう。




第2位 太陽は泣いている 【オススメ度★★★★】

作詞:橋本淳、作曲:筒美京平、編曲:筒美京平
[1968.6.15発売; オリコン最高位18位; 売り上げ枚数12.5万枚]

 第2位に入ったのは、ビクターからコロムビアへの移籍第一弾にして、24作目のシングル「太陽は泣いている」でした~ 作家陣が橋本淳=筒美京平コンビに切り替わって、いしだあゆみにとって初のヒット曲となった記念すべき一作です

 この曲の一番の聴きどころは、何といっても筒美センセの手による力の入ったアレンジ仕事
です。それまでの歌謡曲ではあくまでもメロディの“添え物”的な位置づけにあった“アレンジ”を、手間暇かけて“メロディ+多楽器によるアンサンブル”として捉えることで曲全体に奥行きと重厚感を持たせるという画期的な試みが、我が国の歌謡史に新展開をもたらした点は、筒美センセの特筆すべき偉業と言えますね この曲に関しても、メロディとオブリガードの饗宴を意識しながら聴いてみると、さらに楽しめる作品に仕上がっているので、ぜひヘッドフォンを使ってお試しあれ。

 まず、何とも心地良い音色でチェンバロが奏でるハイテンションなイントロに、思わず心が浮き立ちます
よね~。それと、個人的な好みとしては、切なくて印象的なサビメロ(♪ 忘れたくない恋だから あの日のことが切ないの~)を歌う、いしだあゆみのちょっぴり力の入ったヴォーカルがたまらなくイイっ…んですよね。こういうのを聴いちゃうと、「ああ、いしだあゆみと“こういう”関係になれたらどんなにいいだろうか…」なーんて、ついついイケナイ妄想にふけってしまうのが私の悪いクセ。…おーっとそこのあなた、いま笑いましたね… だけど聴き手にこんな風に妄想させるだけのパワーを秘めた作品なんてなかなかないですし、ある意味、聴き手にそんな風に思わせたら“作品の勝利”だとも言えるワケですから



第1位 さすらいの天使 【オススメ度★★★★★】

作詞:橋本淳、作曲:筒美京平、編曲:筒美京平
[1972.1.25発売; オリコン最高位18位; 売り上げ枚数11.3万枚]

 いしだあゆみシングルA面の独偏ベストテン、栄えある()第一位に輝いたのは、36作目のシングル「さすらいの天使」でした~ わー、パチパチパチ この作品がリリースされた1972年というのは、前年にデビューした新三人娘(小柳ルミ子南沙織天地真理)の大ブレイクに加えて、新御三家(西城秀樹郷ひろみ野口五郎)や麻丘めぐみ森昌子などの新人が続々登場するなど、‘70年代初期のアイドル全盛期に突入した頃に当たります。要は、いしだあゆみのように’60年代から活躍していた歌手にとっては、“世代交代”が進む苦しい時期ってことで、この「さすらいの天使」はオリコン最高位18位、10万枚を少し超えるくらいの中ヒット…という、セールス的には不完全燃焼の結果に終わっています。だけどだけど、私に言わせれば、こんな大名曲が世間(=彼女のファン以外の人達)に知られてないなんて余りにもったいなさすぎるっ  せっかくの機会なので、拙ブログを通じて覚えて帰ってちょうだいませ。きっと、これまで抱いていた“いしだあゆみ”のイメージがちょっぴり(いや、結構…)変わること請け合いですので

 「さすらいの天使」は、彼女のそれまでの“一人GS”+“和風ムード歌謡”路線とはうって変わって、ゴスペル風コーラスをバックにメジャーコードでスケールの大きなメロディが展開される作品です
。いわゆる洋楽方面でいうところのMOR(Middle of the Road)ってやつで、作品全体が尾崎紀世彦っぽい雰囲気をまとっているのはそのせいですね。これは筒美京平センセの一番“得意”で“お気に入り”の路線だけあって、哀愁を帯びているのにさわやかなメロディラインとドラマティックなサビ、ゴージャスなのに絶妙に抑制の利いたアレンジ仕事などなど、筒美センセの力の入りようがビシバシと伝わってくる上々の仕事だと思います

 メロディがフォーク調なのは、リリース当時の我が国の歌謡トレンドに引きずられた影響でしょうか。そうそう、この1年後にリリースされたアグネス・チャンの「妖精の詩」(1973.4.10発売、オリコン最高位5位、売上げ枚数27.0万枚、作曲は加藤和彦センセ)とAメロがそっくり
なのは、歌謡マニアの間では“小ネタ”として有名ですがそうですか、そんなこたぁどうでもいいですか

 ♪ 緑の草原へ 明日こそ出かけましょう~ で始まる橋本淳センセによる詞も、大らかな曲調によく合っていて素晴らしいっ
 心がちょっと折れかけている時にこの曲を聴くと、母性的な包容力に満ちたフレーズの数々に心が癒されて、「明日もまた頑張ろう」と、生きる希望のようなものが湧いてくる…、私にとってはそんな“ヒーリング効果”を持った作品なんですよね

 詞も曲もこれくらいスケールが大きいと、歌い方もついつい大袈裟になってしまいがち。だけど、この手の“おかず沢山”の作品を全力で歌われちゃうと、曲を聴く側はすぐにお腹いっぱいになってしまいます
。そこへいくとこの曲はいしだあゆみが “淡々と歌っているお蔭で、何度聴いても”胃もたれ“しない、絶妙なさじ加減の作品に仕上がっていると言えないでしょうか。




 …さて、独偏ベストテンの発表は、こんなところでおしまいです。ここまで長い記事にお付き合い下さった皆さん、本当にどうもありがとうございましたm(_ _ )m。奇しくも、前回の独偏記事にコメントを寄せて下さったドン・マックさんお気に入りの「さすらいの天使」と、GoreMETALさんが挙げて下さった「太陽は泣いている」&「ブルーライト ヨコハマ」が上位3曲を占めるという結果となりました~
 皆さんと波長がピッタリ合って、もとても嬉しいです。で、毎回書いているのですが、独偏順位は予め決めてから記事を書いており、コメントと上位順位が一致したのは全くの偶然です(でないと面白くありませんからネ…)。念のため

 次回の記事は 【独偏ベストテン Vol.47-3】 いしだあゆみのシングル(A面)作品 (資料編) と題して、独偏ベストテンを決めるベースとなったデータ資料を紹介しますので、引き続きお付き合い下さいね~。おしまいに、今回の結果を上位から順にまとめてご紹介しておきます。それでは、またお逢いしましょう~


【wishy-washyの独偏ベストテン いしだあゆみのシングル(A面)】
第1位 さすらいの天使 【オススメ度★★★★★】
第2位 太陽は泣いている 【オススメ度★★★★】
第3位 ブルーライト ヨコハマ 【オススメ度★★★★】
第4位 今日からあなたと 【オススメ度★★★★】
第5位 マイルド・ロマン・ロック 【オススメ度★★★】
第6位 愛の氷河 【オススメ度★★★】
第7位 あなたならどうする 【オススメ度★★★】
第8位 時には一人で 【オススメ度★★★】
第9位 恋は初恋 【オススメ度★★★】
第10位 赤いギヤマン 【オススメ度★★★】