【独偏ベストテン 41-1】 林哲司の作曲シングル作品 (6~10位) | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 さてさて。随分と間が空いてしまったのですが、今回は久々に独偏ベストテン(コンポーザー編)でいってみたいと思います。独偏としては2ヶ月ぶり、コンポーザー別の独偏としては何と3ヶ月ぶりなんですよね・・・。そんなこんなで、“独偏フリーク(←そんな人いるのか)”の皆さんお待たせいたしました~

 今回俎上に乗って下さるのは、’80年代の日本の歌謡界を大いに盛り上げてくれた“重鎮コンポーザー”の一人、林哲司センセです・・・と、もうこのネームを聴いただけで、想い出とともに数々のヒット曲が頭に浮かんでくる人が多いことでしょう


 林哲司センセは、1973年にシンガー・ソングライターとしてデビュー。自分以外のアーティストに初めて提供したシングル作品は1972年12月リリースの「それが恋の終りなら」(黒沢裕一)で、それ以降しばらくは大橋純子竹内まりや松原みきなど、ニューミュージック寄りのアーティストを中心にコンスタントに楽曲を提供していますが、’70年代はまだ“売れっ子コンポーザー”ではありませんでした。ところが’80年代に入ると、上田正樹杉山清貴&オメガトライブ杏里中森明菜などに提供したシングルが次々とオリコンベスト10入り。一躍、ヒットメーカーとしてその名前が知られるようになりました。現在40代以上の歌謡曲ファンであれば、もちろんご存知ですよね

 また、林哲司センセといえば、’80年代中盤から後半にかけて、女性アイドルを中心に、年間平均20曲というハイペースで質の高いシングルA面作品を提供した
ことも特筆すべき点でしょうね。実質的にはこの時期が、林哲司センセの“コンポーザーとしての最盛期”と言って差し支えないと思います

 では、林哲司センセの作風は・・・
と言えば、杉山清貴&オメガトライブや稲垣潤一のようなニューミュージック系アーティストに対してオシャレなシティポップス群を提供したかと思うと、かたや女性アイドルに対してはバラエティ豊かで良質な正統アイドル歌謡を大量に提供。立ち位置としては、いわゆる“職業作曲家”に限りなく近いイメージですね。総じて、’70年代の歌謡シーンでよく見られた“ねちっこい暗さ”とは無縁の明るくドライな作品が多いコンポーザー(隠し味にちょっぴり“切なさ”のエッセンスが仕込んであるのがミソなのであって、’80年代に流行った歌謡ポップスのイメージを象徴するような存在と言えるでしょう。

 ・・・おっと、また話が長くなる前に、さっさと独偏順位の発表に移りましょう
。ランキングは、林哲司センセが自分以外のアーティストに提供したシングルA面曲(私が把握できた224作品、オリコンに記録が残っている作品はすべて網羅)を対象に、私の独断と偏見に基づいて作成しました。いつもと同じく、1アーティストにつき1作品のみをエントリーするという制限を付けていますので、念のため・・・。さすがに林哲司センセともなるとやはりお気に入りの作品が多いワケで、ひとまず1~20位をセレクト。11~20位についてはこのあと簡単にご紹介するのみにとどめて、記事の方は、6~10位(今回)、1~5位、資料編の全3回にわたってお送りしたいと思いま~す

 それでは、まずは11~20位にランキングされた作品をさらっとご紹介しますね
。ど~ぞっ


第20位 ボーイフレンド (久松由実) 【オススメ度★★】
作詞:戸沢暢美、作曲:林哲司、編曲:船山基紀
[1987.2.25発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]

第19位 パズル・ナイト (中村雅俊) 【オススメ度★★】
作詞:売野雅勇、作曲:林哲司、編曲:林哲司
[1984.6.21発売; オリコン最高位52位; 売り上げ枚数3.6万枚]

第18位 応援してるからね (藤谷美紀) 【オススメ度★★】
作詞:売野雅勇、作曲:林哲司、編曲:瀬尾一三
[1988.7.6発売; オリコン最高位17位; 売り上げ枚数2.6万枚]

第17位 瞳の誓い (井森美幸) 【オススメ度★★★】
作詞:康珍化、作曲:林哲司、編曲:萩田光雄
[1985.4.21発売; オリコン最高位32位; 売り上げ枚数4.1万枚]

第16位 雪にかいた LOVE LETTER (菊池桃子) 【オススメ度★★★】
作詞:秋元康、作曲:林哲司、編曲:林哲司
[1984.11.1発売; オリコン最高位3位; 売り上げ枚数34.8万枚]

第15位 悲しい色やね ~OSAKA BAY BLUES~ (上田正樹) 【オススメ度★★★】
作詞:康珍化、作曲:林哲司、編曲:星勝
[1982.10.21発売; オリコン最高位5位; 売り上げ枚数34.8万枚]

第14位 水に落ちたヴァイオレット (中村由真) 【オススメ度★★★】
作詞:吉元由美、作曲:林哲司、編曲:瀬尾一三
[1987.11.21発売; オリコン最高位13位; 売り上げ枚数4.2万枚]

第13位 SEPTEMBER (竹内まりや) 【オススメ度★★★】
作詞:松本隆、作曲:林哲司、編曲:林哲司
[1979.8.21発売; オリコン最高位39位; 売り上げ枚数10.4万枚]

第12位 愛はどこに行ったの (岩崎良美) 【オススメ度★★★★】
作詞:康珍化、作曲:林哲司、編曲:大村雅朗
[1984.4.21発売; オリコン最高位86位; 売り上げ枚数0.8万枚]

第11位 どうしてますか (原田知世) 【オススメ度★★★★】
作詞:松本隆、作曲:林哲司、編曲:林哲司
[1986.3.5発売; オリコン最高位7位; 売り上げ枚数10.0万枚]



 さて、ここまでいかがでしたか・・・ ヒット曲もそれなりに混ざっていたので、ご存知の作品もありました・・・よネ(そうだと信じたい)。ちなみに、今回第12位に入った「愛はどこに行ったの」は、岩崎良美の独偏ベストテンで第3位に、第11位に入った「どうしてますか」は、原田知世の独偏ベストテンで第1位を獲得してます。つまり、今回の上位争いはかなり熾烈だったってことですね。なんたって、オススメ度★4つでも上位10曲から弾かれてしまったワケで

 それでは、独偏ベストテンの10位から6位まで、さっそく行ってみましょう・・・ドン


第10位 気分を着替えて (中島はるみ) 【オススメ度★★★★】
作詞:三浦徳子、作曲:林哲司、編曲:林哲司
[1982.3.21発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]

 第10位にランクインしたのは、1981年にデビューした中島はるみのセカンドシングル「気分を着替えて」でした~ 1981年と言えば、いったい何の因果か”中島はるみ”という同姓同名の女性アイドルが2人デビューしたという妙な年でしたね・・・。かたや大人っぽい女優さん、こちらはキリンレモンの6代目イメージガールでスラッとした(身長177cm可愛い子チャン(←死語)ってことで、雰囲気も年齢もかなり違っていてよくよく見なくとも全然別人だったのですが、2人とも歌手としては売れずにシングル2作ずつでリタイア・・・。どちらか一方がスマッシュヒットでも出してくれれば、区別するのも面倒じゃなかったんですけど。しかも、大人っぽい方の中島はるみの妹が、同じ年に似たような名前(中島めぐみ)で歌手デビューしちゃったもんだから、関係性の把握はますますぐちゃぐちゃに・・・(と書くと、とっくに消えちゃったように聞こえますが、なんと彼女は結婚引退後に芸能界に復帰。現在も“カリスマ主婦モデル”として活躍中なんですよね)。

 それはともかく、この曲がいいんですよ~
。歌詞の中にも名前が登場するカネボウのシャンプー「MY DATE」のCMソングということで、詞もサウンドも非常に透明感があって爽やか女性アイドル向けの“夏歌”としてかなり秀逸な出来だったと思いますし、タイアップもしっかりついてたのに、どうして売れなかったのかなぁ・・・。だけど、サビの部分(♪ MY DATE 明日の方が好きよ~)はCMでよく流れたので、きっと覚えている方も多いはず。ぜひYouTubeでご確認下さいね

  ♪ 夏の日の恋は シャボン玉みたい
    指先触れただけで こわれてしまいそう
    まだ誰のものでもない 小さなハート

 の最後の1フレーズが、デビューして間もないアイドルに似つかわしくてとっても素敵です。ホリプロ関係者がこのフレーズをパクって、その3年後にデビューする井森美幸のキャッチフレーズ「井森美幸16歳、まだ、誰のものでもありません…」をつけたに違いないッと密かに踏んでいるのは、恐らく私だけではないでしょう(←きっと妄想)。



第9位 シルバー・レイン (宮本典子) 【オススメ度★★★★】

作詞:荒木とよひさ、作曲:林哲司、編曲:林哲司
[1981.6.?発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]

 「シルバー・レイン」は、宮本典子の3作目のアルバム『Rush』よりシングルカットされた作品です。彼女には、作詞:安井かずみ、作曲:加藤和彦、編曲:清水信之による同名異曲シングルが存在するので、かなり紛らわしいのですが・・・。

 宮本典子と言えば、ソウルフルで伸びやかなヴォーカルが心地よいジャパニーズR&Bの元祖(ジャズシンガー)として知る人ぞ知る実力派ですが、筒美京平センセをはじめとする歌謡曲作家陣によるポップス作品も数多く歌うという、歌謡曲ファンにしてみれば「ようこそ~」といった感じのクロス・オーヴァー・アーティストでもありました。でも結局は、惜しくも日本でブレイクすることなく渡米してしまい、本場仕込みのR&B歌手へとすっかり変貌を遂げて現在も活躍中です。

 彼女の場合、本人に原因があったというよりも、単に当時の日本人が“受け入れ態勢になかった”だけという気がします。日本でデビューするのがもう2~30年遅かったら、かなり売れたに違いありません。彼女が「夜のヒットスタジオ」で披露した歌声はまごうことなく“本物”といった逸物で、当時中学生だった私は“鳥肌が立つ”というフレーズの意味を身を以て体験することになったくらいですから・・・。

 この「シルバー・レイン」は、いかにも林哲司センセらしいライトなソウル調のシティ・ポップス。彼女のおおらかなグルーヴに身を委ねれば、あなたもリラックスした気分に浸れること請け合いですよ



第8位 セプテンバー物語 (児島未散) 【オススメ度★★★★】
作詞:松本隆、作曲:林哲司、編曲:新川博
[1985.7.24発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]

 第8位に入ったのは、俳優、宝田明の実娘でもある児島未散の記念すべきデビュー曲「セプテンバー物語」でした~。ちなみにタイトルの読み方は、「セプテンバー・ストーリー」ですから、お間違いなきよう。ついでに余談ですが、EP盤ではいきなりイントロから始まるのに、ファーストアルバム『BEST FRIEND』やベスト盤CDに収録されているヴァージョンには、曲の冒頭部分にオルゴールに乗せた英語のつぶやきがかぶせてあるんですよね・・・これ、すごーく邪魔だと思ってるのは私だけかなぁ、ぶつぶつ。

 何となく頼りなげなヴォーカル、育ちの良いお嬢さん然としたルックスと立ち居振る舞い、デビュー時の年齢(18歳)などから想像した通り、いささかどっちつかず(アイドルなのそれともアーティストなの)のデビュー・コンセプトでしたね・・・(そしてまた通っている高校が“成城学園”という、ほとんどそのまんまのイメージだったので思わずニヤリとする私)。果たして、残念ながらヒットとはなりませんでした林哲司センセのメロディ(特に頭サビ)はノスタルジック感120%の極上の仕上がりでしたし、決して上手とは言えない歌唱も、独特の“雰囲気”と持ち前の“澄んだハイトーン”で十分にカバーしていたと思うのですが。

  ♪ セプテンバー物語 9月の海にあなたは来ない
    海の見えるカフェテリア
    セプテンバー物語 想い出してよ
    サーフサイドで出逢った日のときめきを
  ♪ 砂まじり濡れたスニーカー 乾かしたあの防波堤
    Tシャツに頬を寄せると 太陽の匂いがしたわ
    コーラの瓶に指輪を入れて 波に流せば綺麗なメモリー

 過ぎ去った夏の日の恋を回想しながら、「セプテンバー物語」の詞と曲を味わうと、ついつい涙腺がゆるんでしまうオヤヂがここに約一名・・・



第7位 信じかたを教えて (松本伊代) 【オススメ度★★★★】
作詞:川村真澄、作曲:林哲司、編曲:船山基紀
[1986.8.5発売; オリコン最高位17位; 売り上げ枚数4.9万枚]

 「花の82年組」の中でも、ほとんど奇跡的にシングル作品に“ハズレ”がなかった松本伊代。とりわけ、デビューから5年後にリリースされた19作目シングル「信じ方を教えて」から始まる林哲司三部作(残りは「サヨナラは私のために」と「思い出をきれいにしないで」)は、大人へと成長を遂げる彼女が歌うに相応しい見事なバラード群でした。当時の私は、82年組の他のメンバーのシングル作品がどんどんパワーダウンしてゆくのを見るにつけ、「伊代ちゃんって、スタッフに大事に思われてるんだなぁ」とつくづく感心したものです

 まず、歌詞が深い愛する人と理解し合いたいという気持ちとは裏腹な現実に葛藤する女性の心の叫びが実に切なく、こちらの心にずんずんと響いてきます(←歌っている松本伊代の表現力がまた素晴らしいんだよな、これが)。この歌詞に描かれた心象風景というのは、やはりそれなりの人生経験と恋愛経験を経た男女間に生じる関係性だと思うんですよね・・・。先に、”21歳になったばかりの彼女に相応しい作品”と書いた所以、なのです。

 林哲司センセによる曲も、ワザあり一本 といった感じ悲しみ”や“切なさ”をメロディで表現しようとする際に、マイナーコードばかり使うよりも、メジャーコードを上手に取り混ぜる方が、より深みのある“悲しみ”や“切なさ”が伝わる(もちろん後者には高度なテクニックが必要なワケですが・・・)というお手本のような作品じゃないかと思うんですよね、この曲って



第6位 涙のハリウッド (河合奈保子) 【オススメ度★★★★】
作詞:売野雅勇、作曲:林哲司、編曲:萩田光雄
[1986.4.1発売; オリコン最高位7位; 売り上げ枚数6.2万枚]

 熾烈な上位争いの中、第6位の座に輝いたのは、河合奈保子の24作目シングル「涙のハリウッド」でした~。わー、パチパチパチ 彼女はこの次のシングル「刹那の夏」からアダルト&アーティスト志向(=自作曲で勝負)へと舵を切り始めたので、この作品は、河合奈保子にとって最後の“アイドル歌謡”ということになります

   ♪ ピンクのダイナマイト スパークさせて
     落下傘(パラシュート)で 恋に落ちた
     黄金(きん)のParm Tree 青空(そら)に燃えてる
     ムービースターを 夢見てきた街角よ
   ♪ Dance Dance Dance 奇蹟かなえてあなた
     Cry Cry Cry 鏡に祈ってたわ
     愛されて輝きたい

 この曲の舞台は日本ではなくハリウッドということで、歌詞を聴いてもあまり現実味がありません。詞の中で繰り広げられている恋愛模様は空想の世界というか、それこそ映画のワンシーンを見ているかのよう。でも、それを彼女が歌っているというのが実に新鮮で私は好きなんだよなぁ~それまでの河合奈保子のシングルというのは、特に初期作品は(良い意味で)庶民的で、聴いていてホッとするような作品が多かっただけに、なおさらそんな風に感じてしまうのかも知れませんが

 そしてまた、林哲司センセによる曲が素晴らしいの一言に尽きますねぇ。特に、♪ Dance Dance Dance 奇蹟かなえてあなた~ Cry Cry Cry 鏡に祈ってたわ~ の辺りに“切なさエッセンス”をてんこ盛りに振りかけてくれてるのが嬉しいですし、1番と2番の歌詞の間に割り込んでくるピアノの奏でるメロディも、実に切なくて思わず泣けてくるんですよねぇっ(←ちょっと興奮気味) 本当に良くできた佳曲だとしみじみ・・・。皆さんも、林哲司センセご自慢の“隠し味”をYouTubeでぜひぜひご堪能下さいね~




 さて、今回の記事はここまでです久々の長~い記事に最後までお付き合い下さった読者の皆さん、本当にどうもありがとうございました~m(_ _ )m。次回の記事では、いよいよ上位5曲を発表しますので、アップまで少々お待ち下さいね それでは、ごきげんよう