【お薦めシングルレビュー 36】 絶妙なさじ加減の表現力が聞きどころの、軽快な8ビート歌謡! | 歌謡曲(J-POP)のススメ

歌謡曲(J-POP)のススメ

音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 やぁ、寒い寒いっ 今週の東京はずっと冷え込んで、私の周囲でも風邪が大流行していますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか 

 私はといえば、まだ正月が明けたばかりだというのに、どういうわけか仕事の〆切に追われまくりの一週間でありました
。こんな風に身も心も冷え切った時、私のようなオヤヂの頭ん中にはすぐに”鍋物+熱燗”の組み合わせが浮かんでくるのですが、ここはちょっと発想を転換して、極上の昭和歌謡を堪能して心身ともに温まるというのはいかがでしょうか。なかなか乙なものですよ~。ってなわけで、今回取り上げる曲はこれで~す()。


「四つのお願い」(ちあきなおみ)
作詞:白鳥朝詠、作曲:鈴木淳、編曲:小谷充
[1970.4.10発売; オリコン最高位4位; 売り上げ枚数37.6万枚]
[歌手メジャー度★★★★★; 作品メジャー度★★★★★; オススメ度★★★★]



 「四つのお願い」は、1969年に「雨に濡れた慕情」でデビューしたちあきなおみの4作目のシングルになります。この作品は、デビュー曲と2作目「朝がくるまえに」が共に10万枚越えの中ヒットを記録して“出だし好調”だった彼女にとって、企画物(=企業から持ちかけられたキャンペーンソング)の3作目「モア・モア・ラヴ」を挟んで、さらにステップアップできるかどうかの“事実上の勝負曲”だったわけですが、これで見事にブレイクを果たします

 この曲がヒットした頃といえば私はまだ5歳
。母親によると、彼女がこの曲をテレビで歌う姿を見て、私も全身で8ビートを刻みながら一緒に口ずさんでいたそうです。かぞえ歌みたいで覚えやすい歌詞と、明るく親しみやすいメロディが、ガキンちょだった私のハートをがっちり掴んだってことなんでしょうね、きっと

 ちなみに、作曲を担当した鈴木淳センセは、伊東ゆかり「小指の想い出」や、小川知子「初恋のひと」でスマッシュ・ヒットを飛ばしてすでに世に知られる存在でしたが、お兄さんから「お前の曲は難しい
と言われていたこともあって、「易しく、易しく・・・」と自分に言い聞かせながらこの曲を書き上げたそうです。その甲斐あって、ポップで優しく易しい(←ちなみに、覚え“易い”という意味です。歌うとなると難しいと思う・・・)逸品に仕上がってますよね

 ところで、歌唱力という観点から“歌手”をざっくりと分類してみると、①デビュー当時から歌の上手な人、②デビュー時はさほどではないけれど、リリースを重ねるに連れてどんどん上手になっていく人、③その他
・・・くらいになるでしょうか。勿論、ちあきなおみは①のタイプですが(ちなみに②の代表選手は柏原よしえなど)とりわけ彼女の“表現力”は目を瞠(みは)るものがありました。それもそのはず、彼女はデビューこそ22歳と“遅咲き”ですが、5歳の時にタップ・ダンサーとして日劇の舞台を踏み、13歳の時にはジャズ喫茶のステージに立っているのです。・・・そうかぁ、ちょっと“器用貧乏”なくらいあらゆるジャンルの曲を歌いこなせるのは、長い下積み時代に培われたのかも

 この「四つのお願い」でも、例えばAメロの ♪ 四つのお願いきいてほしいの~ の部分では、少し甘え口調で“おねだり”する感じの歌い方になってます
し、マイナー調のサビでは、ひとつ、ふたつ、・・・と歌詞の内容に応じた絶妙なさじ加減で、実にナチュラルに感情が“歌い分け”されているのが素晴らしいのです

 ♪ 例えば私が恋を 恋をするなら
   四つのお願いきいて きいてほしいの
   ひとつ 優しく愛して ふたつ わがまま言わせて
   みっつ 淋しくさせないで よっつ 誰にも秘密にしてね
   四つのお願いきいて きいてくれたら
   あなたに私は夢中 恋をしちゃうわ

 ♪ それからあなたが恋を 恋をするなら
   四つのお願いきいて きいてほしいの
   ひとつ 優しくキスして ふたつ こっそり教えて
   みっつ あなたの好きなこと よっつ そのあと私にしてね
   四つのお願いきいて きいてくれたら
   あなたに私は夢中 恋をしちゃうわ

 ♪ ひとつ 優しくいつでも ふたつ 二人は幸せ
   みっつ いつしか結ばれて よっつ あなたと私は一つ
   四つのお願いきいて きいてくれたら
   あなたに私は夢中 恋をしちゃうわ

 で、さらに彼女が“非凡”なのは、ナマ歌になるとその見事な表現力が更にパワーアップするところでしょう
。・・・いや、さすがに彼女が昭和52年の紅白歌合戦で披露した「夜へ急ぐ人」は、鬼気迫る歌唱があまりに怖すぎて、当時小学6年生だった私にはしばらくトラウマになりましたが・・・。(←もはや伝説と化している有名な“事件()”です。 ご存じない方はネット検索してみて下さい。うまくすると、当時放送された映像のYouTubeも見つかるかも

 閑話休題。私の場合、大抵の歌手ではナマ歌よりもレコード(CD)音源で聴く方が好きなのですが(だって生だと下手な歌手が多いんだも~ん
)、ちあきなおみに関しては数少ない例外と言えますね。1992年に旦那さんを亡くしたショックで歌手活動を完全にストップ(それ以降もシングルCDが何枚もリリースされているのですが、いずれも過去に発売されたアルバムからのカットor再販なのです)している彼女ですが、私は密かに復帰を心待ちにしているのです・・・とは言っても、彼女ももう60歳台後半のはず。さすがに復帰はもう難しいのかな。となると、彼女のコンサートに一度も足を運んだことがないことが、今となっては大いに悔やまれるんですよねぇ・・・

 ではこの辺で気を取り直して動画の方を
ご覧下さいやぁ、しみじみいいですよねぇ・・・




 さて。最後に“放禁”がらみでちょっとだけ。この作品は、B面「恋のめくら」があっさり放送禁止になったあおりで、「四つ」という表現が問題視されて危うく放送禁止になりかけました(おいおいっ
)。そりゃあね、四つ足の動物の皮を扱う仕事に従事している人達が「ヨツ」という隠語で呼ばれていたことは、私も唾棄すべき話だとは思います。でも、その隠語と「四つのお願い」の間には何ら関連性も“悪意”も存在しないわけで、たまたま結果として同じ言葉を使っているというだけ。これほどの名作が、つまらんイチャモンで封印されないでホントに良かったなぁって思うんですよね

 それでは、今回はこんなところでおしまい
。またお逢いしましょう~