【シングルよもやま話 39】 女泣かせの男への未練をまさに”はまり役”が歌い上げた超有名作品…! | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 私が大学&大学院時代(1985~1990年頃)に、“歌謡曲研究会”という因果なサークルに所属していたことは、これまで何度も触れてきましたよね。このサークル、“研究会”なんちゅういかにもな名前がついてはいますが、その実態はと言えば、小汚い大学の寮の片隅にせしめた部室(←これがホントにきちゃないんだ・・・。♂の部員しかいなかったのは必然と言えませう)に、各部員がディープな歌謡曲のカセット(←時代やねぇを持ち寄ってBGMにしちゃあマージャンに興じるというのが日常的な活動でしてね・・・(ぽりぽり)。3ヶ月に一度のペースでサークルの会報を発行するのと、年2回の学園祭に歌手を招いてミニコンサートを開催するのを除いたら、単なる“自堕落サークル”でした(留年者も結構いたしなぁ)。

 んで、そんなショーもないサークルに珍しく一人だけ、社会に出ても真っ当にやって行けそうな先輩(明朗快活で性格も温厚なイケメンですぞ
)がいらしたんですね。呼び方がないと話を転がしづらいので、仮に“M先輩”としておきましょうか。几帳面な性格でないと務まらない“サークル会報の編集長”だったM先輩の好きな歌手は松田聖子(←なんてヒネリのない・・・あっ、M先輩どうもすいませんm(u_u)m)。 そんなこんなで、変人&変態さん揃いの歌謡研の中にあって、M先輩は一手に人望を集めておられたのでした

 こんなむさ苦しい“野郎集団”も、学園祭の打ち上げや忘年会では、当然のごとく、赤ちょうちん系の一杯飲み屋に繰り出します
。歌謡曲に関してはさすがにみんな異様に詳しいですから、店内に“例の機械”があるのを見つけると、そのまま自然に“大カラオケ大会”に突入するのですが、当時は今ほど曲数が充実してなかったせいもあって、「歌いたい曲がカラオケにねーよっという悲惨な事態が起こりまくりました(いや、単にマイナーな曲ばっかり選びまくってたからという説も)。そんな中で、M先輩の“十八番(おはこ)”だけは、どこのお店に行っても必ずあるそのうちに、サークルの飲み会が佳境に入ってくると部員の誰かが必ず「最後はM先輩のアレを聞かないと僕ら帰れませんよ~」とか言い出すようになって(そういや私も何度か焚きつけたっけ。でもM先輩は実際うまかったし、顔もオリジナル歌手にそっくりだったんだよなぁ)、いつの間にやらM先輩の十八番で会をお開きにするという流れが定着するようになったのです

 ・・・さてさて、長い前置きはここまで
。 ところで、歌謡曲ファンの方であれば、“あるエピソードにちなんで忘れられない流行歌”というものが、一つや二つはきっとあると思うんです。ここまでの流れから皆さんお察しの通り、今回取り上げるのは、私にとっての“忘れられない流行歌”=“M先輩の十八番”です。 ミリオンセラーを記録した“超”有名な作品なので、皆さんも当然ご存知のことと思います。この曲で~す()。

 ・・・あ、
「大学生のクセに若さのカケラもない選曲やなぁという、あまりに的を射すぎた感想は、そっと心の奥底にしまっておくようにお願いしますよ~

「うそ」(中条きよし)
作詞:山口洋子、作曲:平尾昌晃、編曲:竜崎孝路
[1974.1.25発売; オリコン最高位1位; 売り上げ枚数154.1万枚]
[歌手メジャー度★★★★★; 作品メジャー度★★★★★; オススメ度★★★]




 やはり何と言ってもこの曲は、冒頭の歌詞 ♪ 折れた煙草の吸い殻で あなたの嘘が分かるのよ~ で、もう「勝負あった」という感じがしますね。この曲がヒットした当時といえば私はまだ小3だったのですが、私を含めて何人かのクラスメートが歌詞の意味も分からないクセに口ずさんでましたから・・・山口洋子センセによる冒頭のフレーズのインパクトが強烈なのはもちろんなのですが、平尾昌晃センセによる“子供でも覚えやすくて口ずさめるメロディ”が実に秀逸っ そういった意味で、「ヒット曲はかくあるべし」という“お手本”のような作品ではないかと思うのです

 ところで、件のフレーズ“折れた煙草の吸い殻で あなたの嘘が分かるのよ”の中で、煙草を吸っていたのは誰だと思いますか
 私は、最近までずっと「あなた(つまり男)」だと思ってましたきっとこの男は、ウソをつくと(例えば)煙草の火の消し方に独特のクセが出たりするのを女に見破られたんだろうな・・・なかなか“含み”のある話やなぁ、とね。ところが山口洋子センセによれば、どうもそうじゃないらしい。この話は山口センセ(=銀座のクラブのママ)の知人のホステスが体験した実話に基づくもので、煙草を吸っていたのは実は女性で、“折れた煙草の吸い殻”には別の女の口紅がついていた・・・ってことなんだそうです。むむむ、そうだったのか。それじゃウソも“丸わかり”なはずだよなぁ・・・と、私としては正直、いささか興ざめ気分ではありましたが、まぁ興味深いエピソードではありますよね

 それはともかく、
いかにもホスト(というよりジゴロ)然とした容貌の中条きよし(実際、歌手になる前は高級スナックのオーナーだったんですよね)に目を付けて表舞台に引っ張り出して、“嘘の上手な女泣かせの男への未練”をテーマにした作品を歌わせてしまうという心憎い仕掛けは、実にお見事の一言に尽きます。元女優、クラブのママ、そして直木賞作家である山口洋子センセという人を見ていると、 “天は人に二物も三物も与えることもあるんだなぁ・・・”とつくづく感じてしまうんですよね



 最後に、中条きよしと言えば私がつい思い出さずにはおられない”故・ナンシー関にまつわるエピソード”を一つ
。ナンシーは外国人タレントにあまり詳しくなかったため、「その外国人は日本人に喩えると誰なんだ・・・という問い(その問い自体も「ちょっとなんだかなぁ」ですが)を他人に投げかけるのがクセだったみたいです。で、ある時、フリオ・イグレシアスというお題に対して、「すごく売れてる中条きよし」という答えが返ってきて、「私は一瞬にしてフリオのすべてを理解した」と感じたとか。う~む、言葉じゃうまく説明できないんだけど、まさに“言い得て妙”じゃあーりませんか。あたしゃ目からウロコが100枚ほど落ちましたゼ。・・・いやはや、彼女くらい鋭い感性の持ち主は、おそらくもう二度と現れないでしょうねぇ(遠い目)。

 それでは、今回の記事はこの辺でおしまい
。またお逢いしましょう~