【お薦めシングルレビュー 16】 劇薬注意!?中毒性の高いロシアオリエンテッドな優れものポップス | 歌謡曲(J-POP)のススメ

歌謡曲(J-POP)のススメ

音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 前回の「独偏ベストテン 19」で、ロシア民謡のことを話題にしたので、今回はそれにちなんだ曲を一つ。現在我が国で使われている「ロシア民謡」の定義は、実を言うと極めて曖昧なものなのですが、ここではロシアで流行した大衆歌謡も含んだ“広義”の意味を採用して話を進めます

 我が国では’50~’60年代にかけて、ダーク・ダックスが好んでロシア民謡を取り上げたのをきっかけに、歌声喫茶に集まって大人数でロシア民謡を歌いまくるのが大流行
しました(ピークは1965年頃)。’70年代初め頃までは、ダーク・ダックス以外にもボニー・ジャックスヴォーチェ・アンジェリカ(こちらは女声)等のヴォーカルグループがリリースしたロシア民謡のアルバムが結構売れたものですが、その後、ブームは急速に凋んでいくことに・・・

 しかし、ロシア民謡が日本人の心に与えた影響は決して
小さくなかったようです。我が国では’70~’80年代にかけて、歌謡曲が隆盛を極めることになるわけですが、ロシア民謡のブームが去って40年以上も経とうかという現在に至っても、ロシア民謡に色濃く影響を受けた(としか思えない)歌謡曲が散見されるのです

 ・・・ということで、ようやく本題に入れます
。今回レビューするのは、ロシア民謡のテイスト満載の名曲としてお薦めするこの作品です()。

「バラライカ」(月島きらり starring 久住小春)
作詞:BULGE、作曲:迫茂樹、編曲:迫茂樹
[2006.10.25発売; オリコン最高位8位; 売り上げ枚数7.3万枚]


バラライカ初回盤  バラライカ通常盤
[左:初回盤、右:通常盤・・・だそうです。早く欲しくて慌てて買いに走ったせいか、ウチにあるのは初回盤だ・・・(爆)]


 タイトルの『バラライカ』とは、三角すいの形をしたロシアの代表的な弦楽器のこと。この作品がすごいのは、タイトルだけじゃなくてメロディーとアレンジにもロシア民謡をちゃんと援用して郷愁を誘(いざな)うことでオヤジファン層に巧みにアピールしつつ、「モーニング娘。」のエッセンスを振りかけて軽快な味付けにすることで、若い久住小春ファンの期待にもしっかり応えている(←多分に私の妄想が入っとりますのであしからず)。そして、そんな欲張りな企画意図を忍ばせた作品でありながら、メロディー(特にアレンジ)が「なんちゃってロシア民謡風」のそれではなく、気合いの入った本格的な仕上がりになっているのが高評価のポイント

 この曲、冒頭の「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!」という強烈なバックコーラスのリズムが印象的で、これはモーニング娘。の「恋のダンスサイト」(2000年)を彷彿とさせます・・・というか、これって明らかに「ジンギスカン」(1979年)のまんまパクリなわけですが・・・


 ちなみにこの曲を歌っている久住小春という女の子のことは、リリース当時から現在に至るまで、私はほとんどなーんにも知らない(唯一知ってるのは、いつの間にムチャクチャ綺麗
になってちょうど1年前に 「CanCam」のモデルに華麗に転身したことくらいかな・・・)わけですが、この6年間、私の部屋では結構な確率で「バラライカ」が無限ループで流れています(爆×100)。・・・ま、要するに「(おそらく)万人受けとまではいかないけれど、特定の歌謡曲ファンにとっては極めて中毒性の高い曲と言えるんじゃないか・・・」ってことが言いたいわけですね。ちなみにwishy-washyオススメ度は★3.5くらいで、「お薦めシングルレビュー」と「シングルよもやま話」のどちらで書こうか微妙なところでしたが、結局のところ四捨五入して★4つ扱いの「お薦めシングルレビュー」ということにしました~

 ・・・ところで、我が国で知名度の高い「ロシア民謡」というと、いったいどの曲になるんでしょうか 候補として思い浮かぶのは、昭和時代には音楽の授業でよく歌った「一週間」、「トロイカ」、「カチューシャ」、「ともしび」あたりですかねぇ ・・・でもこの状況、私は非常に不満に思っているのです。「ロシア民謡にはもっと奥の深い名曲が沢山あるのに、なんで有名なのがこんな平凡な・・・(以下自粛)」ってね。戦争が絶えなかった旧ソ連時代における「メジャー調の曲などけしからん!」という世相を色濃く反映してか、実は日本人に馴染みのあるロシア民謡は、マイナー調のメロディが比較的単調に続くタイプの曲が圧倒的に多いのです

 しかし、僭越ながら言わせて戴けるなら、いわゆる「ロシア民謡の真骨頂」とも言うべきメロディラインを持つ名作というのは、(これまで何度か触れたように)マイナーコードとメジャーコードを複雑かつ巧妙に絡み合わせることで「哀愁と美」を表現するもっとずっとハイブローなものです。具体例をいくつか挙げると、「すずらん」「リラの花」「ウラルのぐみの木」「モスクワ郊外の夕べ」「ミリタリー・ワルツ」あたりということになります(比較的入手しやすい音源は「モスクワ・・・」、次に「ウラル・・・」でしょうか
)。

 ・・・最後の方、歌謡曲のレビューなんだかロシア民謡の啓蒙なんだかよく分かんなくなってきちゃったので
、今回のレビューはひとまずこの辺で切り上げることにします。また別の機会に、ロシア民謡に関連した歌謡曲のレビュー(要するに続き)を書きたいと思っていま~す(またかよ)。

 今回のYouTubeは、「バラライカ」の他に、「すずらん」、「リラの花」、「ミリタリー・ワルツ」をupしておきますので、ご興味をお持ちのかたはぜひ聴いてみて下さい
。 それではまた~


「バラライカ」(久住小春)


「すずらん」(ロシア民謡、歌:ダーク・ダックス)
優しい乙女をすずらんにたとえて愛でる歌


「リラの花」(作詞:アナトーリ・サフローノフ、作曲:ユーリ・ミチューリン)
(広義のロシア民謡、演奏:明治大学マンドリン倶楽部)
リラの花を前に恋する女性に想いを馳せる青年の歌


「ミリタリー・ワルツ」(ドン・コサック合唱団、ロシア民謡)
戦火に燃える故郷のため、戦死を覚悟する男の歌