【シングルよもやま話 10】 感情移入しまくり!D級アイドルによるマニア好み(?)の一作 | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 4/13のブログ記事で、中村容子のデビュー曲「ティーンエイジ・ソルジャー」をレビューした際に、「続きはまた別の機会に~」と書いたのを、すっかり放ったらかしにしてました。きっと読者の皆さんも、「え、そんなことあったっけ・・・」状態だろうなと思いますが、そこはエエ加減なクセに小心者の私のこと、遅ればせながらその件を片付けておこうと思います

「ショッキング・ドール」(中村容子)
作詞:橋本淳、作曲:水谷竜緒、編曲:水谷竜緒

[1984.7.21発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]
[歌手メジャー度★; 作品メジャー度★; オススメ度★★]

ショッキング・ドール 
 う~む、せっかくジャケットにするのにもう少しカワイイ写真なかったのかなぁ(ぼそ)

 デビュー曲「ティーンエイジ・ソルジャー」で、彼女の事務所が狙っていたコンセプトは、実はオリビア・ニュートン=ジョンでした(出典:「だから女は大変だ」(オバタカズユキ著、1994年))。これは、「ティーンエイジ・・・」のB面「モダン・ガール」を聴いて戴ければ、曲のコンセプトとサウンドが「オリビアそのまんま」なので、「なーるほど」とヒザをポンと打ってもらえるんじゃないかなと思います(・・・けど、その“ブツ”が読者の皆さんのお手元にある可能性はほぼゼロ・・・ですよね

 2作目「ショッキング・ドール」のコンセプトは、デビュー曲
より「さらに積極的かつ大胆」に女のコが男のコにアプローチする(けど男のコの方は相変わらず気後れ気味・・・)というもの。まあ、デビュー曲ではブレーキとアクセルがバランス良く利いてたのが、この曲では女のコのブレーキがどっかいっちゃってますケド

 さて、この作品で特筆すべきなのは何と言っても、「中村容子が作品世界にどっぷり浸かって、作品の持つ意味と世界観を渾身のヴォーカルでほぼ完璧に表現している」という点ですね
。この「ショッキング・ドール」くらい、歌手が感情移入して弾けまくったアイドル歌謡はちょっと例がないんじゃないかなぁと思います。・・・いや、「弾け系アイドルポップス」というのは他にもあって、例えば「Do it BANG BANG」(榊原郁恵)なんかは結構イっちゃってます(←ほめてます)。だけど、「Do it・・・」の榊原郁恵は、どこかで抑制を利かせてるのがこちらでも分かる程度の弾け方ですが、「ショッキング・・・」の中村容子は、レコーディングスタジオで飛び跳ねながら音入れしたんじゃないか(もちろんそんなわきゃない)とつい考えてしまう・・・両者には弾け具合にしてそれほど差があるのです

 また、この「ショッキング・・・」は、サウンドの面から見ても、ギタリスト出身の水谷竜緒センセがスラップ奏法(日本では「チョッパー」と呼ばれることが多い)を存分に生かした重厚な響きとリズムが小気味よいgoodな作品に仕上がってます。・・・そんなこんなで、私みたいな「彼女の大ファン」にとっては、ヨダレを出して喜んじゃう(←きちゃないなー
)くらいの傑作ですけど、デビュー曲が売れなかったっつーのに、2作目でこんなマニアックな作品を世間に突きつけるなんてさすがに無理というもんでしょ(だからオススメ度は★2つ)。やっぱりねぇ、こういう“マニア好み”の曲は、もっと彼女がしっかりと固定ファンを獲得してから歌わせないといけなかったですよ。まぁ、彼女の所属事務所はニューミュージック系のアーティストばかりで、「アイドル」として売り出すノウハウも“その気”もなかったらしいので、指摘するだけ空しいんですけどね・・・

 ところで、「ショッキング・ドール」を聴いて、「あれ、サビのこの感じは以前どこかで耳にしたことがあるような・・・
」と思った方はかなり鋭いです。実は、サビのリズムと「ダンシング」のコンセプトが「青い靴」(芳本美代子とほとんどまったく一緒なんですねぇ。ちなみに、「青い靴」よりも「ショッキング・ドール」の方が2年ほど早くリリースされてます。両者を聞き比べてみると、「(実に意外なことに)みっちょんがいかに”お行儀よく”歌っているか」、そして、「中村容子がいかに弾けまくっているか」ってことが如実に分かって面白いですよ。んで、この辺に違いが出てしまったのは、「表現力の差(もちろん中村容子の方が上)」というのも大きいのですが、その背景には「そこそこに売れてるとやっぱ”冒険”しにくいもんねー」という件が微妙に関わって来ているような気もするんですけどねぇ・・・、果たして真相は如何に

 今回も参考として、みっちょんの「青い靴」のYouTubeも併せてupしておくので、聞き比べてみて下さいね





 最後に後日談を少々。中村容子本人は、デビュー当時の事務所の売り出し方針(オリビア路線ってヤツね)には乗り気ではなく、尾崎亜美あたりの世界を希望していたらしいです。そして何と、早くもシングル3作目にして待望の尾崎亜美作品を出せることになるのですが・・・(さすがソニーの力やねぇ)、この続きはまた別のレビューで触れたいと思います(←ひっぱるなぁ)。それではまた~