【お薦めシングルレビュー 8】 感情線 (黒木真由美) | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 今回のレビューは、いきなりクイズから始まります。では問題。さて、次の(   )に入る女性歌手は誰でしょう?

 南沙織-リンリン・ランラン-(   )-早見優-後藤久美子-川越美和-田中律子-森泉[・・・おっと最後のは歌手じゃなかった。これは失礼!]

 答えは黒木真由美でした。実は、私が代々ファンになった歌手の中から色黒でエキゾチックな雰囲気の女の子(ぴったり当てはまらない子も入ってるけど、要は「ほぼ同類」ってことでを時系列順に並べただけです。・・・というよりも、私の場合は困ったことに「色黒でエキゾチックな雰囲気の女の子→高い確率でハマると表現した方が正確なんですが(爆)。広義に解釈すれば、安永亜衣とか、先にレビューした中村容子あたりも、このライン上に乗っけてもいいかも・・・(ってどうでもいいですね)。いずれにせよ、マジメに考え込んじゃった方、どうもスイマセン

 とまぁ、随分とマヌケな「振り」になっちゃいましたが、要するに今日レビューするのは黒木真由美ってことです

「感情線」(黒木真由美)
作詞:阿久悠、作曲:都倉俊一
、編曲:都倉俊一
[1975.6.25発売; オリコン最高位84位; 売り上げ枚数0.5万枚]
[歌手メジャー度★★
; 作品メジャー度★; オススメ度★★★★]



 黒木真由美は、14歳のときに「スター誕生!」のテレビ予選で見事合格。決戦大会で審査員特別賞(有り体に言えば「準優勝」ってヤツですね)を受賞しました。スタ誕の決戦大会には、出場者を一人ずつ順番に「お立ち台」に登場させて、
「この新人ならウチで面倒見てもいい!」と思った候補者をレコード会社とプロダクションがプラカードをげて指名するという、ある意味シビアな「名物シーン」がありました(一社もプラカードが挙がんないと、テレビ見てる方もつらいんだこれが・・・)。黒木真由美はその決戦大会で、スタ誕史上4番目に多い18社から指名を受けて(黒木より多かったのは桜田淳子山口百恵新沼謙治の3人だけ!)、翌75年3月、見事に歌手デビューと相成ったわけです。

 今回ご紹介する「感情線」は、デビュー曲「好奇心」に続く2枚目のシングルです。詞と曲は、スタ誕の審査員として彼女を合格に導いた
阿久悠-都倉俊一のコンビによるもので、彼女のデビュー曲「好奇心」から3曲目の「神さまお願い」までのA/B面6曲を担当。まさに至れり尽くせり状態だったわけですね~。ちなみにこの黄金コンビは、その後一年足らずのうちに、ピンクレディーの一連のシングルを手がけて「大ブレイク」することになります。
 
 この「感情線」は、彼女がソロ時代にリリースした5曲のシングルの中で一番キャッチーで単純明快なメロディと印象的な歌詞を持っていて、売れるための要素(魅力)が満載の名作だったと思うんですが、残念ながら、
デビュー曲のオリコン最高位50位からこの曲では84位売り上げ枚数の方も3.3万枚から0.5万枚へと急転直下(なんで・・・?)新人アイドルにとってシングル2曲目というのはとっても大切な「勝負どころ」だったのに・・・

 結局、76年にソロとしての歌手活動を終えた彼女は、77年にGALという三人組のセクシーアイドルグループとして再デビューを果たします。密かに「かわいいなぁ」と思ってた女の子が、いつの間にかテレビで姿を見なくなったと思ったら、しばらくして突然キャバレースタイルで再登場して、挑発的なフレーズと激しい振り付けを披露する・・・(しかも、マイナー調の曲のせいかもしれないけど、歌ってる最中にあの魅力的な笑顔はほとんど見られず、むしろ表情がかなり怖かったんだよなぁ)・・・当時まだ小6だった私には、いかんせん刺激が強すぎましたと同時に、か~なりダメージを受けた記憶が鮮明に残っているので、やっぱり好きだったってことなんでしょうねぇ・・・(遠い目) 

 さて、この辺で、肝心の作品についてもう少し掘り下げてみましょうか。まず阿久悠センセの付けた詞が、
「恋に一直線なラテン系美少女(+ちょっとわがまま)」で、インディアンスタイルが印象的だった彼女のイメージにまさにピッタリなんですよね。

♪ 恋したなら たちまちもう 夢中になって 自分をおさえられないの
  そういう娘よ 油断はしないで
  もしも他のひと好きになったら ジェラシー感じて乱れてしまうわ
  私ひとりを 愛してね

♪ 逃げても駄目 追いかけるわ どこまでだって 情熱的が好きなのよ
  そういう娘よ やさしく愛して
  もしも意地悪なことをしたなら 涙の洪水 嵐になるかも
  気まぐれだけど 正直よ

   
 ♪ もしも意地悪なことをしたなら 涙の洪水 嵐になるかも の表現なんかは、んもうほとんどマンガの世界(よくよく考えると「プチ脅迫」みたいなもんですけどね)。だけど、カワイイ子からそんな風に言われちゃったら、思わず許しちゃおうという気になってしまいますね(←だから男ってバカ(爆))

 一方の曲の方は、冒頭のブラスとリズムのパターンやら三拍子のブレイクやら何から何までまさに「都倉節」炸裂!といった感じの出来になってます。まぁ悪く言えば「ワンパターン」ってことになりますが、好きな人にはタマラないはず。少なくとも、新人アイドルに与えられた作品としては、彼女は間違いなく恵まれた境遇にあったと思います。

 あと、頭サビの直後、♪ そういう娘よ 油断はしないで~ の部分は、カラオケでつい、「素敵なラブリーボーイ」(林寛子/小泉今日子)の ♪ 誘惑されるのが好きなのよ~ と歌ってしまいそうなのでご注意を(んなばかな

 黒木真由美の歌唱はといえば、特別に上手くはないけれど、ほんの少しだけ甘える感じの歌い方が「歌謡ポップス」にうまくフィットする歌い手さんという印象で、アルバムも含めて彼女の歌が繰り広げる世界を随分楽しませてもらいました。惜しくもラストシングルとなった「まわれ風車」では、デビューの頃よりも声質も発声法もちょっぴり大人っぽくなって、「その後」を期待させる成長の兆しがちょうど見えたところだったので、個人的にはソロ活動をもう少し長く続けて欲しかったですねぇ・・・。実はさっきは意識的に書かなかったんですが、黒木真由美と同じスタ誕決戦大会で「最優秀賞」(つまり優勝)を獲得したのは、あの岩崎宏美で、指名した会社は黒木の半分以下の8社だったそうです(それでも十分すごいのですが)。そんなエピソードを聞いてしまうと、「歌手として売れる」ということは、結果だけを見れば単純な事象だけれど、そこに至るプロセスでは、歌唱力・タレント性・事務所の力・運・時代背景・そのほか目に見えない様々な要素が複雑に絡み合っているんだなぁ・・・なーんて、いまさらながらに感じざるを得ませんね。



 最後に小ネタを一席
大阪在住の人は、
♪ みぃだれている  みぃだれている かんじょうせんがぁ~
の部分を聞いて、「おいおい、会社に遅れちゃうよ~」とか勘違いしたりしなかったんでしょうかね?(んなわけないか) それではまた~!