リクは成績はそれなりに上がってきた一方、
5月で部活がなくなってから、時々塾に行くのをしぶるようになっていました。
リクは週2回ほど塾へ行っていて、ちょうど私が仕事から帰宅する頃に出かけていきます。
それまでも、時々行きたくない日がありましたが、それは時々でした。
そして、前は行きたくない理由もはっきりしていました。
数学の先生が好きではなかったのです。
私は「塾の先生が好きじゃないなら、他の塾に変わるという選択肢もあるよ」と
言ったことはあるのですが、「数学の先生は好きじゃないけど、国語の先生は好きだから塾は変わらない」とリクは言っていました。
そのお気に入りの国語の先生も、嫌いな数学の先生も辞めたり移動になったりして、この頃にはもういませんでした。
リクの塾のある日は、私も憂鬱でした。
帰宅したときに、リクが塾に行っていればよいのですが、行っていない時が多くなっていました。
行こうとしている時に、ちょうど私が帰ってくると行く気がなくなってしまうようでした。
まだ、「今日は、塾休みたい」とはっきり言ってくれればよいのですが、
時間になっても出かけないので、
私が「塾へ行かないの?」と聞くと、何も言わずにベランダへ出てしまうのです。
家は、マンションで、飛び降りたらさすがにタダでは済まないほどの高さです。
まさか飛び降りるなんてことは、ないとは思うのですが、想像すると怖くなってしまい、
心配で、私もベランダへ出て、リクに話しかけました。
「何か、塾でいやなことあったの?」
「休みたいなら、休んでもいいよ」
何を話しかけても、返事はありません。
そのうちに、とっくに塾が始まる時間が過ぎてしまい、塾から電話がかかってきました。
仕方なく「すみません、今日はお休みします」と言って休むことになっていました。
塾を休みにしたことで、ホッとする反面、塾に行けなかったことで、リクは落ち込んでいるようでした。
