ビリー・ホリデイの最高傑作!即ちジャズ・ヴォーカルの最高傑作!というアルバムです。B.ホリデイのアルバムを紹介するにあたり、このアルバムが最高傑作であることに疑いを持つことはありませんでした。そしてビリーの残りも少なくなりその確信は間もなく(私の中では)事実に変わろうとしています。これまでのアルバムではビリーがお馴染みの得意曲を多用することがとても多かったですが、本アルバムでは「YOU’VE CHANGED」以外は初めて聴く曲ばかりです。声の衰えは如何ともし難いですが、表現力の素晴らしさがそれを補って余りあります。そしてレイ・エリスの編曲・指揮が素晴らしく、オーケストラがビリーを包み込み、オーケストラがオブリガードをレスター・ヤングやベン・ウェブスターに代わって立派に努めているという感じです。またトロンボーンを多用している処にこの人のセンスの良さを感じました。
BILLIE HOLIDAY(vo) MEL DAVIS(tp) BERNIE GLOW(tp) J.J.JOHNSON(tb) URBIE GREEN(tb) MAL WALDRON(p) HANK JONES(p) MILT HINTON(b) RAY ELLIS AND HIS ORCHESTRA
100点 side1-1 「I’M A FOOL TO WANT YOU」 1958/2/19~21
92点 side1-2 「FOR HEAVEN’S SAKE」 1958/2/19~21
98点 side1-3 「YOU DON’T KNOW WHAT LOVE IS」1958/2/19~21
92点 side1-4 「I GET ALONG WITHOUT YOU VERY WELL」1958/2/19~21
93点 side1-5 「FOR ALL WE KNOW」 1958/2/19~21
91点 side1-6 「VIOLETS FOR YOUR FURS」 1958/2/19~21
97点 side2-1 「YOU’VE CHANGED」 1958/2/19~21
92点 side2-2 「IT’S EAWY TO REMEMBER」 1958/2/19~21
90点 side2-3 「BUT BEAUFIFUL」 1958/2/19~21
90点 side2-4 「GLAD TO BE UNHAPPY」 1958/2/19~21
91点 side2-5 「I’LL BE AROUND」 1958/2/19~21
(以下はCDの追加曲です)
100点 CD1-2 「I’M A FOOL TO WANT YOU(MONOURAL)」1958/2/19~21
91点 CD1-13 「THE END OF A LOVE AFFAIR(MONOURAL)」1958/2/19~21
「アイム・ア・フール・トゥー・ウォント・ユー(1-1)」
J.ウォルフの曲です。ストリングスとハープがまず端緒を飾り、そしてB.ホリデイの登場です。ビリーは枯れた声で「私は馬鹿よ」と切なく歌いますが、地の底から湧いてくるようなこのビリーの表現力はどうでしょう!レイ・エリスはストリングスを強化して、しっかりとした場をビリーに提供しています。しっかりと美しいオーケストラと、ボロボロになったビリーの声が悲しい対比を見せ、聴くにつれてこちらもどんどんと切なさが増してきます。ビル・エヴァンスは最晩年病気で指がパンパンに腫れて満足に鍵盤を叩けなくなり「テクニックは半分以下になったよ」と言いながら『CONSECRATION THE LAST』という大傑作を最後に残しました。ビリーも最晩年に声も含めて身体は絶不調ではありながら、遺作ではないものの、亡くなる一年ちょっと前にこの大傑作アルバムと唯一の100点満点となった名演を残してくれました。ありがとう!なおトロンボーンのオブリガードはU.グリーンです。文句なく完璧で感動の極みの100点です。
「フォー・ヘヴンズ・セイク(1-2)」
D.メイヤーの曲です。女性コーラスも入りゆったりとした流れで、ビリーは「恋をしましょう」と優しく呼びかけます。時にハッとする一瞬がありますが、それは恋する女心が波立つ一瞬なのでしょうか。気品があり別格でいつまでも浸っていたい92点です。
「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ(1-3)」
G.デポールの曲です。前奏が「いいですねー」。ビリーは「あなたは恋がどんなものかご存じないわ」と諄々と説き、恋の先生の講義は心の奥深くへと染み込んでまいりました。トランペット・ソロはM.デイヴィスという説があったのでそれに従いましたが、聴いてみるとどうも違います。メル・デイヴィスが正解のようです。他人(ひと)に奨めたいほどで、感動の極みの八合目に達する98点です。
「アイ・ゲット・アロング・ウィザウト・ユー・ヴェリー・ウェル(1-4)」
H.カーマイケルの曲です。オーケストラが趣味の良いイントロを奏で、女性コーラスも効果的に使われます。レイ・エリスは伴奏がとても上手ですね。とても感心します。B.ホリデイが惚れ込んだだけあります。トロンボーンはここもJ.J.ジョンソンです。ビリーは恋を失くした女心を、わざと明るく時にはセンチに揺れ動き、老女のように擦れた声で薄い翳を曳いてサラリと表現します。気品があり別格でいつまでも浸っていたい92点です。
「フォー・オール・ウィー・ノウ(1-5)」
J.F.クーツの曲です。オーケストラが用意した舞台の真ん中でビリーが歌い始めます。オーケストラはビリーをゆったりと包み込み、ビリーは秘めた恋の行く末を告げます。“tomorrow”の処に特別な思いを込めて。気品があり別格でいつまでも浸っていたく、他人(ひと)に奨めようかなという気がよぎる93点です。
「ヴァイオレッツ・フォー・ユア・ファーズ(1-6)」
M.デニスの曲です。B.ホリデイはゆっくりとしたテンポで、すみれの花束への思い出をしみじみと歌い語ります。J.J.ジョンソン(tb)のソロも効果的です。トロンボーンのソロが多いですが、結果的にはレイ・エリスの趣味の良さを証明しています。気品があり別格でちょっと浸りたい91点です。
「ユーヴ・チェインジド(2-1)」
C.T.フィッシャーの曲です。短いイントロがあり、B.ホリデイは「貴方変わったのね」と歌い始めます。このフレーズに未練と諦観をこれだけ込められるのはB.ホリデイならではです。J.J.ジョンソンのトロンボーン、そしてオーボエとハープが良い仕事をします。他人(ひと)に奨めたいほどで、感動的な97点です。
「イッツ・イージー・トゥー・リメンバー(2-2)」
R.ロジャースの曲です。B.ホリデイはじっくりと歌い上げていますが、聴いている方は「スタンダード曲だけど違って聴こえるなあー」とか「恋の講師から教え諭されるようだ」とか、レポートがイマイチですね…。U.グリーン(tb)の使い方がここでも「いいですねー」気品があり別格でいつまでも浸っていたい92点です。
「バット・ビューティフル(2-3)」
J.V.ヒューゼンの曲です。美しい前奏から始まり、B.ホリデイは“ビューティフル”をキーワードとして歌います。全体がセピア色に染まり、安逸に流れそうな危うさもありますが、気品があり別格の90点です。トランペット・ソロはメル・デイヴィスです。
「グラッド・トゥー・ビー・アンハッピー(2-4)」
R.ロジャースの曲です。B.ホリデイはちょっと上から恋の講義をします。レイ・エリスが作る美しい雲に包まれて。トロンボーンはJ.J.ジョンソンです。気品があり別格の90点です。
「アイル・ビー・アラウンド(2-5)」
A.ワイルダーの曲です。美しいストリングスから始まり、ビリーは去って行く男に対する思いを綴ります。気品があり別格でちょっと浸りたい91点です。
「アイム・ア・フール・トゥー・ウォント・ユー(モノラル録音)(CD1-2)」
CDの追加曲で、モノラル・ヴァージョンということになっています。(1-1)との違いは単にモノラルかステレオかなのでしょうか。その辺のことはよく分かりませんが、私には同じに聴こえますので、文句なく完璧で感動の極みの100点です。
「ジ・エンド・オヴ・ア・ラヴ・アフェア(CD1-13)」
E.C.レディングの曲です。ビリーは声の調子が少しだけ良くないように聴こえますが、それでも、気品があり別格でちょっと浸りたい91点です。
100点 side1-1 「I’M A FOOL TO WANT YOU」 1958/2/19~21
92点 side1-2 「FOR HEAVEN’S SAKE」 1958/2/19~21
98点 side1-3 「YOU DON’T KNOW WHAT LOVE IS」1958/2/19~21
92点 side1-4 「I GET ALONG WITHOUT YOU VERY WELL」1958/2/19~21
93点 side1-5 「FOR ALL WE KNOW」 1958/2/19~21
91点 side1-6 「VIOLETS FOR YOUR FURS」 1958/2/19~21
97点 side2-1 「YOU’VE CHANGED」 1958/2/19~21
92点 side2-2 「IT’S EAWY TO REMEMBER」 1958/2/19~21
90点 side2-3 「BUT BEAUFIFUL」 1958/2/19~21
90点 side2-4 「GLAD TO BE UNHAPPY」 1958/2/19~21
91点 side2-5 「I’LL BE AROUND」 1958/2/19~21
100点 CD1-2 「I’M A FOOL TO WANT YOU(MONOURAL)」1958/2/19~21
91点 CD1-13 「THE END OF A LOVE AFFAIR(MONOURAL)」1958/2/19~21