わたしは

木偏に無と書く

(ぶな)という字が

好きだ

何の役にもたたぬという

字を持ちながら

世界遺産となり

多くの人に愛される

橅よ

わたしも役にもたたぬ

詩を書いて

九十五歳となった

詩国から遥々と

青森に飛び

世界遺産

白神山地の

橅に祈る

ああこの喜びよ

 

坂村真民全詩集 第八巻 大東出版社