第3位 89.8点

『THE CATS』

 

Cats Cats
1,034円
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1975年以降は数多くのリーダー・アルバムを世に出したトミー・フラナガンですが、それ以前は名バイ・プレイヤーとして数々の名盤に名を連ねるも、自身のリーダー・アルバムとなると、本当に数えるほどしかありません。本アルバムは正しくはプレスティッジのスタジオ・セッションなのですが、ジャケットのトップにトミー・フラナガンの名前がある為か、国内盤では彼のリーダー・アルバムとなっています。そして特筆すべきは最初の一曲目で、唯一のトリオ演奏となっており、それはもう正に絶品です!

 

TOMMY FLANAGAN(p) JOHN COLTRANE(ts) IDREES SULIEMAN(tp) KENNY BURREL(g) DOUG WATKINS(b) LOUIS HAYES(ds)

 

96点  side1-1  「HOW LONG HAS THIS BEEN GOING ON」  1957/4/18

88点  side1-2  「MINOR MISHAP」                               1957/4/18

88点  side1-3  「ECLYPSO」                                             1957/4/18

89点  side2-1  「SOLACIUM」                                           1957/4/18

88点  side2-2  「TOMMY’S TIME」                                    1957/4/18

 

「ハウ・ロング・ハズ・ジス・ビーン・ゴーイング・オン(1-1)」

トミフラが一人でテーマを弾き、やがてダグ・ワトキンスのベースがブーンという音で加わり、ルイ・ヘイズのドラム(ブラシ)が更にその後加わるという、最も盛り上がるパターンのピアノ・トリオ演奏です。しかもバラードときています。優雅で小粋なトミフラの魅力全開です。この曲以外はセクステットの演奏なので、トミフラをしっかり聴くなら断然この曲です。気品があり別格で人に薦めたく感動すら覚えさせる96点です。

「マイナー・ミスハップ(1-2)」

マイナーの印象的なテーマの後、最初にソロをとるのはJ.コルトレーンです。57年4月というとプレスティッジからリーダー・アルバムを出し始めた時期で、コルトレーンのテナー・サックス・ソロは既に聴き応えがあります。続くケニー・バレルのギター・ソロは26歳という若さながらバレルらしいブルージーさが随所に聴かれて嬉しくなります。アイドリース・シュリーマンの小粒なソロの後にトミフラの歯切れの良いピアノ・ソロが来ます。安心して聴けるジャム・セッションという趣きで、お洒落で格好良く僅かに気品すら感じさせる88点です。なお、他の曲も各人同様の出来栄えとなっており、88点が並びます。

「エクリプソ(1-3)」

ソロはトミフラが先発します。溌剌として歯切れの良いピアノを聴かせてくれます。上質なジャム・セッションという趣きですが、コルトレーンとK.バレルがこの曲の価値を高めています。お洒落で格好良く僅かながら気品すら感じさせる88点です。

「ソラシウム(2-1)」

これもマイナーな曲ですが、ソロを先発するトミフラはベサメ・ムーチョの一節を入れたり、ショパンを入れたりと小粋さをフルに発揮しています。トミフラは左様に素晴らしいのですが、他のソロもありますので、曲としてはお洒落で格好良く気品があり別格目前の89点です。

「トミーズ・タイム(2-2)」

ブルースです。トミフラはシングル・トーンを中心とした彼らしいピアノ・ソロを聴かせてくれます。ダグ・ワトキンスの太くて堅実なベースは、この曲だけではなくアルバム全体を支えています。ワトキンス最高!お洒落で格好良く僅かながら気品すら感じさせる88点です。

 

96点  side1-1  「HOW LONG HAS THIS BEEN GOING ON」  1957/4/18

 

89点  side2-1  「SOLACIUM」                                           1957/4/18

 

 

 

 

第2位 89.9点

『OVERSEAS』

 

 

1956年にデトロイトからニュー・ヨークへ出てきたトミー・フラナガンが一年後に一世一代の名盤を生み出しました。暫くの間日本では“幻の名盤”とされていたアルバムです。切れ良く上品に柔らかい鋭さで迫るトミフラのピアノを堪能するのに唯一無二のアルバムです。

 

TOMMY FLANAGAN(p) WILBUR LITLLE(b) ELVIN JONES(ds)

 

90点  side1-1  「RELAXIN’ AT CAMARILLO」  1957/8/15

89点  side1-2  「CHELSEA BRIDGE」              1957/8/15

89点  side1-3  「ECLYPSO」                          1957/8/15

90点  side1-4  「BEAT’S UP」                       1957/8/15

89点  side1-5  「SKAL BROTHERS」               1957/8/15

91点  side2-1  「LITTLE ROCK」                    1957/8/15

90点  side2-2  「VERDANDI」                        1957/8/15

91点  side2-3  「DALARNA」                         1957/8/15

90点  side2-4  「WILLOW WEEP FOR ME」      1957/8/15

 

「リラクシン・アット・カマリロ(1-1)」

最初からトミフラの歯切れの良い弾むピアノを満喫することができます。この美しさの中の緊張感はトミフラの真骨頂と言えましょう。気品があり別格の90点です。

「チェルシー・ブリッジ(1-2)」

ちょっと霧がかかったような曲をトミフラのピアノが突き破りますが、キレ味の鋭い刃物で優しく切るようでもあります。お洒落で格好良く気品があり別格一歩手前の89点です。

「エクリプソ(1-3)」

ラテン調のテーマから一転してフォー・ビートのジャズ・リズムになる処が人気の秘密でしょうか。分かっていても堪りません。お洒落で格好良く気品があり別格直前の89点です。

「ビーツ・アップ(1-4)」

トミフラらしくスウィンギーで歯切れの良い演奏で、三人ともよくバウンスしています。気品があり別格の90点です。

「スコール・ブラザーズ(1-5)」

心地良く粘ってくれるブルースです。ための効いたエルヴィンのブラシに乗って、トミフラの非凡なブルース・プレイが聴かれますが、短いのが残念です。お洒落で格好良く気品があり別格直前の89点です。

「リトル・ロック(2-1)」

ベース一本でスタートを切り、次いでピアノとドラムが加わるという、ジャズ・ファンには堪らない構成です。ブルースらしい粘っこさがトミフラのキレの良さと合わさり、ちょっと洗練されたブルースとなりました。ウィルバー・リトルの太いベースとエルヴィン・ジョーンズのブラシ・ワークもそれぞれ光を放ち、気品があり別格でちょっと浸りたい91点の演奏となりました。

「ヴェアダンディ(2-2)」

こちらは打って変わって軽快なトミフラのピアノが聴きものです。気品があり別格の90点です。

「ダラーナ(2-3)」

本アルバム唯一のバラードです。トミフラのバラードは優雅さの中に切れの良さを秘めているので、甘さに流されることはありません。途中から倍テンポになる辺りは正に“キレ”実感です。気品があり別格でちょっと浸りたい91点です。

「ウィロー・ウィープ・フォー・ミー(2-4)」

この曲のテーマ部では優雅な粘りとでも言えるトミフラのピアノの美しさを存分に味わえます。アドリブ・パートではテンポを上げて、一音一音の切り口が見えるようなトミフラのピアノです。気品があり別格の90点です。

 

 

 

 

 

第1位 92.7点

『THE TOMMY FLANAGAN TRIO』

 

 

トミー・フラナガンの最高傑作です。「MOOD’S VILLE」シリーズの第九弾で、恐らくこのシリーズの最高傑作でもあると思います。国内盤で『イン・ア・センチメンタル・ムード』というジャケ違い版もあります。

 

TOMMY FLANAGAN(p) TOMMY POTTER(b) ROY HAYNES(ds)

 

93点  side1-1  「IN THE BLUE OF THE EVENING」  1960/5/18

93点  side1-2  「YOU GO TO MY HEAD」               1960/5/18

92点  side1-3  「VELVET MOON」                         1960/5/18

89点  side1-4  「COME SUNDAY」                         1960/5/18

95点  side2-1  「BORN TO BE BLUE」                    1960/5/18  

88点  side2-2  「JES’ FINE」                                 1960/5/18

99点  side2-3  「IN A SENTIMENTAL MOOD」          1960/5/18     

 

「イン・ザ・ブルー・オヴ・ジ・イーヴニング(1-1)」

出だしのテーマ部から優雅そのものです。ソロ・パートに移ってもトミフラのピアノは優しくしかし歯切れ良くメロディーを綴ります。気品があり別格で人にも奨めようかという気がよぎる93点です。

「ユー・ゴー・トゥー・マイ・ヘッド(1-2)」

バラードで、トミフラの美しさ満開です。ここでもソロ・パートでは煌びやかで淀みのないピアノ・プレイを聴かせてくれます。これも気品があり別格で人にも奨めようかという気がよぎる93点です。

「ヴェルヴェット・ムーン(1-3)」

ちょっと甘くて一歩間違えるとカクテル・ピアノへ落ちて行く危険を感じさせる演奏です。しかし心配は要りません。甘く感じるのはピュアでセンスが良いからです。大吟醸酒が甘く感じられるのと少し似ています。日本酒度が高くても辛いとは感じませんものね。気品があり別格でいつまでも浸っていたい92点です。

「カム・サンデー(1-4)」

ソロ・ピアノです。テーマ部はノー・リズムですが、アドリブ・パートに入ると左手でリズムを打ち出します。ここもトミフラ特有の優雅な世界です。いいんですけど、トミフラはソロ・ピアノで聴かせるタイプではないので、やはりベースとドラム(ブラシ)が欲しかったです。お洒落で格好良く気品があり別格目前の89点です。

「ボーン・トゥー・ビー・ブルー(2-1)」

少し陰影を含んだ華麗さを持つテーマ部から始まりますが、トミフラのピアノは真珠がゆっくりと跳ねるようにブルーな気持ちをなぞって行きます。気品があり別格で貴方にもお薦めしたい95点です。

「ジェス・ファイン(2-2)」

トミフラのオリジナルです。これはスローではなくミディアム・テンポです。ドラムやベースとの小節交換もあります。右手一本で趣味良くブルースを語っています。お洒落で格好良く僅かに気品を感じさせる88点です。

「イン・ア・センチメンタル・ムード(2-3)」

トミフラの最高傑作ナンバーです。優しく優雅で気品に溢れるトミフラの魅力を存分に味わえる演奏です。繊細でありながら柔らかな鋭さを持つトミフラのピアノを満喫してください。人に薦めたい程で感動の極みに限りなく近い99点です。

 

99点  side2-3  「IN A SENTIMENTAL MOOD」          1960/5/18

 

 

95点  side2-1  「BORN TO BE BLUE」                    1960/5/18

 

93点  side1-1  「IN THE BLUE OF THE EVENING」  1960/5/18

 

93点  side1-2  「YOU GO TO MY HEAD」               1960/5/18

 

92点  side1-3  「VELVET MOON」                         1960/5/18