「Foooooooooooooooooooooooo!!」
誰もいない氷河の真ん中で奇声を上げる。青年の名はゲルマニクス。耳を手術して、人間に偽装したエルフである。
生まれた時から成績が悪く、純血のエルフでありながら奴隷として、ありとあらゆる汚れ仕事を請け負ってきた。雪崩を仕掛けて敵軍まるごと葬ったこともある。
エルフの国が滅亡してからは、奴隷として売られた先で仕事をこなし、着々と人間社会で地歩を固めてきた。欧州エルフ学術評議会からは存在を黙殺されているが、同じ乳母の乳を吸った仲間からは大切にされている。
事の起こりは半年前。
「なあヴェロニカ、俺達の弱点って何だと思う?」
「う~ん、思いつかないわ。プリシア姉さんなら何か言いそうだけど」
「…「老死」だと思ってな」
「老いない死なないバケモノなのに!?どうして?」
「老いない死なないからだよ。人間と違って、身内が年老いてきたとか、余命いくばくもないとか、…そういうときの覚悟ってやつさ」
ヴェロニカはうなった。今まさに、享楽的な姉との終わりなき青春を生きているからだ。
「だから「死」っていうものも受け入れられないと思う。俺はかつて何度も墓地に遺体を運んだが、…エルフの埋葬が「氷河に埋める」ってのはやっぱおかしいわけよ」
「行ったことないけど、何万年もの間のエルフの遺体が埋まっているっていう…」
「ご先祖様は仲間の「死」が受け入れられなかった。だから、あえて氷河に埋めて保存したんだ…いつかの復活に備えてね」
「俺は今でも、あの中にはまだ死んでないエルフが眠ってるんじゃないかって思ってる。特にヴァイキングの襲撃の時、多すぎる遺体を運ばされた中に…」
早速ヴェロニカは大学に手を回し、3日後には「遺跡調査員」の肩書と登山用具一式と共に、ゲルマニクスをユングフラウ山近郊アレッチ氷河に放り込んでくれた。
人間にとっては厳しい環境も、エルフにとっては故郷である。ゲルマニクスは下界の垢を落とし、氷河を走り回った。
と、半年振りにスマホが鳴る。
「もしもし…え?ヴェルシルばあが生きてた?アレン坊が探して…うん…そうか…なるほど、よくわかんねえけど、そのナントカ細胞ってのはすごいんだろ?…それこそ、前言ったご先祖様の復活とかさ。場所は特定できたからさ、アレン坊に研究してもらって、ヴェルシルばあのおかげだ、もう奴隷なんかじゃないってしようぜ」
ゲルマニクスは鼻息を鳴らした。明日、出撃だ。
この作品はくられ氏と『代理母のエルフ』には無関係です。
気になったら是非本編を見て下さい↓
https://ncode.syosetu.com/n3550mf/