審査請求人が営む不動産貸付けについて、同族会社1社への専属的な貸付けであり、本件貸付けの維持管理業務の程度が実質的には相当低いなどとして、不動産所得を生ずべき事業には当たらないとした事例
請求人(納税者)は、本件貸付けによる収入が年間700万円以上であること、また、9年間事業規模相当として申告してきたことなどを理由に本件貸付けは不動産所得を生ずべき事業に当たる旨主張する。
国税不服審判所は、事業性については、
[1]営利性・有償性の有無、
[2]継続性・反復性の有無、
[3]自己の危険と計算における事業遂行性の有無、
[4]取引に費やした精神的肉体的労力の程度、
[5]人的・物的設備の有無、
[6]取引の目的、
[7]事業を営む者の職歴・社会的地位・生活状況
などの諸点を総合勘案して判断されるべきところ、本件貸付けについては、不動産貸付けの目的、営利性、継続性などを部分部分としてみた場合においては、直ちに事業ではないということはできない要素も認められる。
しかしながら、本件貸付けは、請求人が代表取締役社長を務める同族会社F社への専属的な貸付けのみであり、
{1}事務所の修理等は専ら賃借人である同社が主導的に行い、
{2}賃借料の決定は同社の業績が優先的に考慮されていることから、
請求人における事業遂行上その企画性は乏しく、危険負担も少ないと認められる。また、事務所は、F社が利用しやすいようF社が所有する事務所の1階とワンフロアで一体的に利用できるよう改造されており、その構造からみて他に賃貸等が可能である等の汎用性がないなど、これらの点における請求人の自己の危険と計算における事業遂行性は希薄であると認められる。
さらに、請求人の配偶者Gが大半の時間を費やして行っている清掃などには、本来F社がその業務として行うべきものが含まれており、GがF社の取締役に就任していることに照らすと、本件貸付けにおいて貸主として本来行うべき維持管理業務の程度は、実質的には相当低いことが認められる。
これらの諸点を総合して勘案すると、本件貸付けは、社会通念上事業と称するに至る程度のものとは認められないと判断するのが相当である。
なお、請求人が本件貸付けを9年間事業規模相当として申告し、原処分庁がこれに対して是正しなかったとしても、そのことをもって本件貸付けの事業性が認められるものではない。
平成16年9月27日裁決
税理士ゆーちゃん より
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