今回は「業務を資産化する」というテーマでお話しさせていただき

ます。


この世の大部分の人は自分の時間と引き換えにお金を得ています。



正社員然り。アルバイト然り。自営業然り。公務員然り。


時間という資源がある限りは、これで良いのかもしれません。


しかし新たなことを始めたり、新しい価値を生み出すためには、時

間の余裕が必要です。


古代ギリシアで哲学が発展したのは、ギリシア人たちがまったく労

働をせず、奴隷に労働を任せていたからだといわれることがありま

す。


このことは時間的な余裕があってこそ、人間は新しい思想を見出し

たり、新しい局面を切り開けるということの一つの証拠と言えるで

しょう。


ところが、日々の仕事に追われていると、生活するのがせいいっぱ

いになってしまい、立ち止まって考えをめぐらしたり、物事を深く

掘り下げて考えたりということができなくなってしまいます。


その結果、仕事の上でも場当たり的な対応に終始してしまったり、

時間をかけられないがゆえのミスが頻発し、その対応にますます時

間を取られるという悪循環に入ってしまうこともあります。


しかし「業務の資産化」を意識して仕事することにより、このよう

な悪いサイクルから抜け出すことが可能です。


「業務の資産化」とは、過去に行った業務を将来の業務でも可能な

限り使いまわせるように作業を進めるということです。


たとえばどこの会社でもやっていますが、秘密保持契約書などでは

ひな形があり、いちいち全文を作成することはしません。


この「ひながた=テンプレート」を個人の作業にも応用することに

より、1回目の作業の数分の1の時間と手間で2回目以降の作業を

完了させることが「業務の資産化」なのです。


プログラマを作成するエンジニアを例にとって具体的にどのように

なるのかを見てみましょう。


プログラマであれば、以前作成したプログラムを似たような要件を

持つ別の案件に適用することができます。


それにより、数十万円のプログラムが半日でできてしまうこともあ

ります。


1回目の時に相当の時間をかけて作成したものですから、これは当

然のことです。


1回目と2回目で要件が異なる部分のみを修正すればよいのですか

ら、手間は比べ物になりません。


しかし2回目のお客様にも全体分の料金を請求するため、生産性は

極めて高くなります。


もちろん1回目の作業の時点で、後々汎用的に適用できるようにプ

ログラムを作っておくことが必要です。


会社によって異なる部分、たとえば納品先の会社のロゴが入る部分

を可変的に作るとか、顧客管理システムであれば、管理する情報の

項目を自由に取捨選択できるようにするなど、個別の案件で異なる

部分を「変数」とし、入れ替えができるようにしておくことが「業

務の資産化」のキモです。


これはスーツのパターンオーダーに似ています。


「業務の資産化」を意識しない一般的な仕事の進め方は、いわばフ

ルオーダーであるため、きめ細かくできるのですが、その分手間が

かかり、利益はあまり残りません。


また完全な既製品のような型にはまった仕事では、単純作業はでき

ても個別のお客様の要望を満足させることができません。

(マニュアルに従うだけの単純作業のアルバイトのほとんどがこれ

に当たります)


パターンオーダーはこういった仕事の進め方の、まさにいいとこ取

りをしたやり方なのです。


その代わり、どこをパターンにして可変的にしておく(=変数にす

る)のか、どこを固定値(=定数)にしておくのか、というところ

でセンスが問われます。


この見極めに失敗するとフルオーダー的手法以上に手間がかかって

しまうこともあるのです。


このあたりは、日々業務の資産化を繰り返していくうちにある程度

勘のようなものが自然と形成されていきます。


また知見を持ったベテランの人はそのような見極め知識を暗黙的に

持っているため、インタビューを行い引き出すこともできます。


「業務の資産化」を推し進めることにより、仕事の効率を向上させ、

自由な時間を作りだし、さらなる価値を生み出そうではありません

か。


最後までお読みいただきありがとうございます。