ー前回までのあらすじ
ダージリンに毒を盛った小野塚は、その血清と引き換えにシエナの命を渡せとヴァニアに密かに要求。
ヴァニアはそれに乗り、ラムと恵那を騙し、シエナを連れ去る。
ダージリンは意識不明のまま本部に救出されるが、自分を囮にして無人機に情報を運ばせる作戦を実行していた。
交渉の場に着いたヴァニアは、要求には乗らず、その場で小野塚を殴り飛ばした。
ヴァニア「ああああああああ!!」
ブォン!
小野塚「大振りだ。それじゃ当たらない。」
ズン!
ヴァニア「っ!」
ガシッ!
小野塚「!?」
ヴァニア「効かねぇなぁ!!」
バゴォン!
小野塚「うっ…ぐぉ!」
小野塚「これは…!想像以上にハザードレベルが上がってやがるな!もう4.8!」
ヴァニア「うおらあああ!!」
フォンッ…
ドパァン!
ヴァニア「っああああ!」
ダダダダダン!
ヴァニア「絶対に殺すッ!!」
ガガガガガガガガ!!
リーネ「こ、これって…もしかして…」
幸太郎「分かったか!?」
リーネ「うん、多分これ。」
幸太郎「これは…羽佐間さんのレポートか…!やっぱあの人が真実を知っていた!」
リーネ「伝えよう、早く!」
リーネ『分かったよラムちゃん!』
ラム「なに!?早く教えて!」
リーネ『まずヴァニアちゃんの居場所ね。町のカメラ映像を辿ってだいたいの予想地点が判明した。今端末に送ったから。』
ラム「ありがとう。小野塚の件は?」
リーネ「ダージリンちゃんのデータは、小野塚がタカオちゃんの生みの親である青木鋼三を殺害した事件のレポートだった。」
ラム『悪いけどそれならとっくに読んだわ。羽佐間武蔵が青木鋼三の殺害計画を察知して、止めに入るけど間に合わなかった。実験体だったタカオは混乱の中でどこかへ逃げおおせて…今に…至る。』
リーネ「それはオフィシャルに公開するために用意された情報。今見てるのは羽佐間さんがそれと別に書いたレポート。」
ラム『?』
ラム「つまり…あたしが見た公のレポートと、羽佐間さんが書いたレポートの内容が違うって事…?」
リーネ『うん、その違う点がねザザザザザザ!!
ラム「そんな、通信障害…!?こんな時に!」
恵那「どうしようラム!」
ラム「大丈夫、大丈夫よ…!オフィシャルなレポートなら覚えてる、それに大きな間違いがあるって事よね…!」
ラム「考えてラム!ダージリンはきっと何か大事なことを伝えたかったはずなのよ…!」
小野塚「危ない危ない、通信障害をまた発生させるのを忘れてたぜ。この場所がバレちゃかなわん。」
ヴァニア「うおおおおお!!」
小野塚「そして…!」
ブォン!
ガンッ!
小野塚「馬鹿みたい突っ込んで来るだけの攻撃が…!」
ブン!
小野塚「フィジカルの強化で脅威になりつつある…!」
ドドゥン!
ヴァニア「効くかよォォッ!」
小野塚「う…!」
メコッ…!
小野塚「俺が…!」
小野塚「恐怖しているというのかァァッ!!」
バゴォォン!!
ヴァニア「お前だけは殺す!!」
ヴァニア「殺してタカオの意志を継いでやるんだああああーーーーっ!!」
シエナ(なんて愚直な友情物語だ…君をそこまで突き動かす原動力は何なんだ?それが武装ロックを解除した原因なのか?)
シエナ(分からない…理にかなっていない、全て間違いだらけの幻のようだ…)
シエナ(私をこんな気持ちにさせるなんて…!)
ブン!
小野塚「読めてきた
ボシュッ!
小野塚「!?」
ベゴッ!!
小野塚「策を…!」
ヴァニア「うあああああ!!」
バゴン!!
ヴァニア「これで最後だあああああっ!!」
ボオオッ!
ヴァニア「爆炎
大双鐘!!」
ォォオオオッ…!!
小野塚「これで…いい…」
ラム「やめてぇぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」
ヴァニア「!?」
ヴァニア「ラム…?どうしてここが…」
小野塚「………」
ラム「この戦いは終わりよ。」
ラム「小野塚、あなたの事は全て分かった。」
小野塚「ほぅ…」
小野塚「俺の何が分かるってんだ?ラムお前…この戦いを止めたことを後悔するぞ。」
ラム「しないわ。」
ラム「小野塚は一年前に行方不明になるまでは、ピンポイントで兵器科学者を狙う以外の犯罪をしなかった。でも今は得体の知れない超人のハザードレベルをあらゆる手段を講じて上げる行動ばかりしている。」
小野塚「………」
ラム「科学者ですらないダージリンに毒を注入するのもおかしい。一年前との行動原理が違いすぎる。」
ラム「あたし達が最初にシエナと建物に退避した時、異常な早さで隠れ場所が見つかった。どれだけ勘が良くても最初から知っていなきゃそう辿り着ける場所じゃなかった。」
ヴァニア「なに…言ってんだラム…」
ラム「シエナはナノマテリアルが100%霧散してタカオが消滅したと言ったけど…あたしが聞いていたのはそうじゃない。」
ラム「第一の闘争の時、タカオは自分が『98%がナノマテリアルの超人』と言った。じゃあ残りの2%は何?」
ラム「恐らくそれはナノマテリアルを制御するコア。それが残らなかったのはおかしい。」
小野塚「………」
ラム「だからあたしは、タカオがまだどこかでコアだけで生きてるんじゃないかって希望を持った。」
ラム「でもダージリンがくれた羽佐間武蔵のレポートで疑いの向きが変わった。」
ラム「オフィシャルのレポートは『タカオが混乱の中どこかへ逃走』。だけど、もし本当は違っていたら?もし羽佐間さんのレポートが…」
ラム「『小野塚がタカオを連れ去った』だとしたら…?そしてその後も小野塚と共にいた期間があるとしたら…?」
ヴァニア「!!」
ラム「全て…あたしの疑念全てが一つの答えに辿り着いた…そして何より、小野塚はあたし達のことをよく知っていた…知っていて色んなことに利用された…」
ラム「まるで…」
ラム「いつも一緒にいたみたいにっ…!」
ヴァニア「!?」
ラム「小野塚…」
ラム「あなたはタカオね。」
ヴァニア「ラム…なにを…言って…」
小野塚「くっくっくっくっく…!」
ドガッ!
ヴァニア「ぐああ!」
小野塚「ラム…あなたのそういう鋭いところが気に入って、世界を救う手助けをしようと思った。」
小野塚「けど、その鋭さが厄介で…隠し通すのに色んな策を講じたけど、結局はこうなってしまった。」
ヴァニア「や、やめろよ…!小野塚の声で…あいつの真似すんじゃねぇよ!」
小野塚「ごめんね、ヴァニア…」
ポツ…ポツ…
タカオ「あたしが小野塚よ。」
ヴァニア「う…そだ…」
ヴァニア「嘘だ……」
《名前をください その1》へ続く
ちょうど800回でこの話に出来たのでなんか満足。
小野塚編は過去のお話へ…まだまだ続きます。