寒い朝だった。
テレビでは、あちこちの寒波の様子が伝えられていたが、
相変わらず、生駒には、寒いだけで雪は降らない。
これはおかしい。あまりに不公平・・・いや、不自然だ。
テレビが伝える様に、本当に雪は降ったのか?
またもや、マスコミの情報操作か、謀略か・・・.
これは真実を明らかにしなくてはならない。
となると、捜査に向かう先は、ここ奈良県よりもやや北側に位置する土地が適切であろう、
という客観的分析に基づき、京都に決定する。
そして、どこが散策に・・・いや、探索に適する地点なのか?
これは現地において、臨機応変に判断することとし、ともかく出発する。
京都に向かって北上する電車の窓から様子をうかがうも、雪は確認出来ない。
当初は、銀閣寺周辺を捜索しようかと考えていたが、これでは、職務が遂行できそうにない。
雪景色を・・・いや、真実を求め、京阪電車を出町柳駅で降り、
ローカル色の濃い叡山電車に乗り換え、さらに北に向かう。

叡山電車は、車両によっては、座席が外に向いており、
桜や紅葉のシーズンには、車窓が眺められ、大変人気があると言われている。
職務第一の私には関係のない話であるが、空いていたので、仕方なく座る。

はっ!あれは・・・!
線路の枕木に、雪の名残りを発見!
遅かったのか、昨日来るべきだったのか…。

いや、まだ希望は残されている。
むしろ事件解決の希望が見えてきたと理解すべきであろう。
そして探索地点は・・・岩倉実相院に決定する。
岩倉実相院・・・京都洛北・岩倉の地に建つ、天台宗寺門派の、門跡寺院。
いつか、「聖護院門跡」を紹介した時にも書いたが、
門跡寺院とは、皇族や上級貴族出身の僧侶が住職となる、格式の高い寺院のこと。
岩倉駅に着く。
私が学生時代を過ごした頃とはまるで様変わりしている。
時の流れは残酷だ。たった5、6年でここまで変わるとは・・・。
【*データの信憑性については、保証の限りではありません。】
目的の実相院は・・・
案内板によれば、駅より徒歩20分。問題はない。
京都市内とはいえ、ここまで来ると、観光客もそうそう訪れる場所ではない。
のんびりと・・・いや、しっかりと任務を遂行する事ができる。
到着。
辺りに人影はまばらで、絶好の状況だ。果たして雪は…。
証拠写真を押収すべく、スマホカメラを用意し、建物の中に入る。
雪を調べるのに、なぜ建物の中に入るのか?
それは、素人には分からない。私にも分からない・・・。

表向きのデータによれば、ここは、
「江戸時代に活躍した狩野派の勇壮な襖絵や杉戸絵、そして表情豊かな気品溢れる仏像が、
四季折々に美しい姿を見せる庭園とともに、荘厳な空間を構成しています」とある。
外部を知るには、まず内部から・・・。これは、捜査の鉄則である・・・。
また、内部の撮影はダメだが、縁側からなら庭園の写真撮影もできるとある!
そう、これはすべて、捜査のためのやむを得ない手段なのだ。




そして、おお、これが・・・。
噂には聞いていた「床もみじ」の間・・・。
秋、庭園を彩る紅葉が、手入れの行き届いた内部の床板に映り込み、
それを障子と欄間が切り取って鮮やかな対比をなし、
美しい額絵の中に入り込む様な、そんな極上の空間。
これが雪景色に変わったとしても、さぞや美しいだろうと妄想・・・いや、推理は膨らむ。
前述の通り、捜査への支障があるとまずいので撮影は許されていないが、
別途資料からそれを公開し、広く情報提供を呼びかけたい。

捜査は無事、終了した。
雪は確かに、この洛北・岩倉の地には残っていた。
めでたし、めでたし・・・。
しかし、これで油断する訳にはいかない。
それに、雪の量に関しては、明らかに不満・・・いや、疑問が残る。
時はまだ1月下旬。
2月に入って、いつまたこんな悪だくみが行われないとも限らない。
我ら特捜班(コードネーム「雪やこんこん」)は、いつ何時であろうとも、
真相究明のために立ち上がり、京都に向かう・・・。