7、バイト
朝になった。
辺り一面が明るくなってゆく。
あれからアリスは一睡も出来なかった。
アリスは無断外泊をしたことがない。
ママ、怒ってるかな…
遥、怪我よくなったかな…
そういえば、ママは友達と旅行だから帰らなくてもバレてないか。
アリスは思い出した。
ママは1週間ほど友達と旅行に行く、と言っていた。
ま、いいか
アリスは心の中で唱えた。
しばらくすると徳永が起きた。
「おはよう、アリス」
徳永はアリスの両頬に軽くキスをした。
「ご飯の準備をしてくるね。」
徳永はキッチンに向かって行った。
昨日の憎しみに満ちた表情は嘘のようだった。
むしろ前よりも優しくなっているように感じた
徳永はスープを持ってくるとスプーンでアリスに食べさせてやった。
「どう?」
徳永は尋ねた。
アリスは紙に
「おいしい」
と書いた。
「好きだよ愛してるよ」
徳永はアリスの頭をなでる。
アリスは徳永に抱きつく。
「俺、お袋が逮捕されたから働かなきゃいけなくなった。いいこでお留守番してるんだよ。」
徳永はアリスに首輪をつけ、押し入れまで運び、チェーンを繋いだ。
そして、アリスの好きな本、好きな曲のたくさん入ったiPod、お粥を目の前に置いて、押し入れを閉めた。
「好きだよ愛してるよ」
そういって。
「おはようございます。」徳永は事務所に着くなりそう言った。
「今日の相手はサナちゃん。ホテルにもう着いているよ。」
30そこそこの男はメモ書きを徳永に渡した。
「お前はスタイルもよく顔もよくサービスはいいから評判いいぞ。夜から働いた方が稼げるぞ。」
男は徳永の肩を叩いた。
「ありがとう、霧島さん。事情あって、夜は働けないんだ。」
徳永の新しいバイトは逆売春だった。
女と寝て金を稼ぐ、そんなバイトだった。
ホテルに着くと徳永はドアを叩いた。
「こんにちわ。サナちゃん。」
サナと呼ばれた女は15、6歳くらいで、ガリガリに痩せこけ、背も低かった。
しかし、着ていたドレスはかつて徳永がアリスにプレゼントしていたものと同じで、高級のものだった。
「遅いわよっ」
サナはわめいた。
「30分も遅刻よっ」
徳永は時計を見た。
約束より10分ほど早く着いていた。
「11時の約束でしたよ。」徳永は微笑みながら言った。
サナはドレスを脱いだ。
無いに等しい胸、くびれのないウエスト、細い体の割に出ている腹、ペッタンコな尻、サナの体型は最悪だった。
!?
徳永はサナの腹の上をみた。
「何よ?」
サナはぶっきらぼうに聞いた。
心臓の部分はポッカリ穴が開いていた。
「驚かないでよ。悪かったわね。この体で。」
徳永は不機嫌なサナを無視して胸を愛撫した。
「ベッド行こう。」
「…うん」
サナの機嫌は戻った。
そしてサナへのサービスが終わり、事務所へ戻った。
「あの娘は厄介だよ。くれぐれも仕事以外では関わるな。」
霧島が忠告した。