2025年8月 鑑賞映画ひとことレビュー

 

8月の鑑賞本数は31本。今月はリバイバルを堪能しました。

早朝エイリアン体験は楽しかったです。

 

□「入国審査

 アイデア勝利。移住のためアメリカへやって来たカップルの、入国審査での尋問の行方を緊迫感たっぷりに描いた、スペイン発の心理サスペンス。

 希望に胸を膨らませアメリカにやってきたカップルの第一関門入国審査。海外に行った事がある方なら誰しもが感じるあの不安感をサスペンス映画にしようとした目から鱗アイデアがまず素晴らしい。監督たちの実体験らしいけれど、入国審査そのものを理不尽なサスペンスに仕立て上げ、そのサスペンスにドキドキハラハラしつつ、実は隠された秘密が暴かれていくというその展開が驚き&なるほどで、ワンアイデアに収まらない、人間ドラマ的な物語として非常によくできているのがお見事。社会派なところもありつつ、エンタメとしてのサスペンスから逸脱しないバランス感覚も好感度大で、77分の上映時間も相まって小粒なのにピリリと辛い、上質なサスペンスでした。

【70】

 

□「アンティル・ドーン

 「ライト/オフ」や「アナベル」、「シャザム」などで、なかなかの腕前を見せていたデビッド・F・サンドバーグ作品だったので結構期待していたのですが、これは駄目。同タイトルのPCゲームの実写映画化なのですが、ゲームは未プレイ。なので設定くらいしか知識がなかったので、純粋にホラーとして楽しみにしていたのですが…

 兎にも角にもシナリオの出来が悪すぎ。本筋の惨劇ループに入るまでがとにかく長く、しかもありきたりな登場人物の退屈な紹介を延々見せられる始末。肝心の惨劇ループもなんだかよくわからない理屈で丸め込まそうという安直な魂胆が丸見えで。ありきたりな登場人物もこれまたありきたりにムカつく感じのキャラばかりで感情移入皆無なもんだから、全編にわたって退屈の嵐。グロ描写にちょっとだけ救いがあるものの、監督演出云々の問題じゃなく。とにかく構成含めシナリオにあまりに問題がありすぎ。ピーター・ストーメアの無駄つかいも含め、昨今稀に見るダメ映画。と思ったら「ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ」もあったなあと思ったら両方ともゲーム原作。うーん、鬼門かも…

【60】

 

■「ヘッド・オブ・ステイト

 80年代ならスタローンとシュワルツエネッガーで映画化したんだろうなあ的なノリが楽しいバカアクション映画。最近のジョン・シナのコメディセンスってほんと素晴らしいです。

【75】

 

□「ジョニーは戦場へ行った

 小さい頃に見ているはずなのですが、トラウマにならないように記憶を封印していたようで…久しぶりに映画館で鑑賞してしまったら記憶と共にトラウマが復活してしまいました。それほどに見る人の心を抉る生粋のトラウマ映画。でもドルトン・トランボ唯一の監督作は極私的な繊細な人間ドラマであり、救われない結末も含め、非常にセンシティブで感傷的な映画だった事がわかっただけでも意義がありました。

【再鑑賞のため採点なし】

 

□「テロリズムの夜 パティ・ハースト誘拐事件

 だいぶ昔読んだ本の中でこの映画を知ったのですが。その本は過去の猟奇的事件や煽情的な出来事を元にした映画の紹介本だったのですが、その中でも結構なページを割いて紹介されておりました。それからン十年、ようやく、しかも劇場での初鑑賞という最高な体験が出来たわけですが。映画は思いの他真面目でシンプルな映画でした。事件自体がかなり煽情的かつショッキングな事なので、もっとドラマチックかつ露悪的な描き方をするのかと思いきや、パティ・ハーストの人となり、事件の顛末を冷静かつ公平な目線で描いてたある意味良くも悪くも真っ当な映画です。なるほどのポール・シュレイダー、苦悩バカ一代、ぶれません。

【75】

 

■「ウォー・オブ・ザ・ワールド(2025)(amazonオリジナル映画)」

 ロッテン・トマトで史上最低点を叩き出した問題作。宇宙戦争をPOVでやり切ろうとするその強引さが、いろんな破綻とチープさ、そして後々カルトになるであろう妙な魅力を生み出してはいるのだけれど、忖度ありまくりのアマゾンが世界を救うのはさすがに失笑。ある意味コロナの時代を象徴する映画でした。

【60】

 

□「ジュラシック・ワールド 復活の大地

 なんだかんだで7作目。恐竜ロマンあふれる1~3作目から、恐竜とはあんまり関係の無い妙な方向に進んでしまい、世間の失笑をかった4~6作目から仕切り直しの第7作。広げまくった(の割にてんで盛り上がらなかった)大風呂敷を無かったかのようにぶった切り、原点回帰といえば聞こえはいいが、結局3作目の焼き直しでしかない安直な舞台の中、これまた安直なキャラと物語で、とりあえず作りました的なやっつけ感が半端ない、シリーズ最悪の映画となってしまいました。

 とにかく全てが雑。構成もクソも無いいきあたりばったりのシナリオに、身勝手過ぎて嫌悪感しか抱けない各キャラクター。猛獣の巣の中で大声で叫びまくる素人以下の兵隊たちと、それを注意もしない専門家。批評性もクソも無く、ガンガン恐竜を銃で殺しまくるその姿勢は過去作にあった恐竜に対するリスペクト皆無。もうそれだけでこの映画がジュラシック・パークを名乗る権利が無いのは明白なのですが、果ては俺の考えた最強怪獣(あくまで怪獣)をラスボスで登場させる始末。結局、4~6作目で駄目だった所を全部抜き取り、かつそれを発展させるという、ジュラシック・パークという古き良き伝統を持った屋敷を、めちゃくちゃにした上に全く違うビルを建て、しかもそれが味気の無いただの高層ビルだったという、まるで昨今の日本の開発計画のような映画になってしまいました。

 まあ製作期間がめちゃくちゃ短くて、かなり無理矢理な仕事だった事は同情の余地がありますが、それならそれで1作目のような、シンプルかつ王道ストーリーで勝負すれば良いものを、妙な自尊心を出すからこんなクソな映画が出来てしまうのです。もともとデビッド・コープの仕事にあまりいい印象はありませんでしたが、今回でダメ押し。もう一度言いますが、ジュラシックパークなのに主役が怪獣って時点で、もうこれはダメです。

【40】

 

■「悪魔がはらわたでいけにえで私

 いやまあ好きが溢れていていいんでは無いでしょうか。

【55】

 

■「ぼくらのふしだら

 このストーリーでPG12はあり得ないでしょうよ怒

【50】

 

□「サタンがおまえを待っている

 1980年代のアメリカで悪魔崇拝に関する儀式を被害者目線で記した書籍をきっかけに起きた、「サタニック・パニック」とも呼ばれる社会的な騒動の真相に切り込んだドキュメンタリー。

 1980年にミシェル・スミスとその精神科医ローレンス・パズダーの共著として出版された「ミシェル・リメンバーズ」。「エクソシスト」「オーメン」などのヒットでオカルトや悪魔が注目を集めるなか、ミシェルは退行催眠のようなセラピーにより、心の奥深くに封じ込めてきた禁断の記憶を思い出す。それは、彼女が5歳の頃に悪魔崇拝教団に引き渡され、儀式に捧げられたという衝撃的な記憶だった。残虐な儀式の様子を詳細に描写した同書の内容はテレビのバラエティ番組やワイドショーでも取り上げられ、大きく拡散される。さらに、自分も幼い頃に儀式に参加させられたという告発が続出し、カトリック教会やローマ教皇、FBIをも巻き込んだ大騒動へと発展していく…(映画.comより)

 というわけで、当時のパニックの様子と状況を紹介しながら、映画はその患者と精神科医の関係を周囲の人々の証言を絡ませながら紐解いていくわけですが、結局、二人の関係を暴くというか、それをメインにしていたのがなんとも消化不良というか、こっちの勝手な期待とは違う方向に進んでいった印象。まあそこも踏まえてのサタニック・パニックな訳かもですが、大騒動の顛末がSNS全盛の現代をあまり変わらないのがなんとも切ないというか哀しいというか。当時の状況が丁寧に描かれますので色々勉強にもなりますが、結末がなんだか生々しいのがなんとも。精神科医の家族のインタビューがなんだがすごく切なかったです…

【60】

 

■「タイタンフォール 巨神降臨

 こういうCG会社のCM映画って楽しいですよね。

【55】

 

■「寄生体XXX」

 寄生体目線って結構あるようでなかったので、なんだか変な魅力があるヘンテコ映画。

【60】

 

■「デイ・アフター・トゥモロー・ウォー」

 なかなか珍しい南米グアテマラ産の(一応)SF映画。お話は本当にありきたりですが、独特の雰囲気が悪くないです。

【60】

 

■「フィラデルフィア・エクスペリメント(2025)」

 みんな大好き「フィラデルフィア・エクスペリメント」の全く作る必要の無いくそリメイク。パレ様はいますが。

【50】

 

■「ダブルフェイス 潜入者

 王九ことフィリップ・ンさん主演のザ・香港ノワールアクション。キレキレのアクションはかっこいいのですが。こういうお話の香港映画って一体何本くらいあるんでしょうね(苦笑)。いや嫌いじゃあ無いんですが。

【55】

 

□「近畿地方のある場所について

 原作未読。原作含め、色々と話題になっているのは知っていたのですが、この手の都市伝説ホラーは正直食傷気味でもあったので、映画化と聞いてもあんまりそそられはしなかったのですが、監督が白石晃士と聞いて態度豹変。期待に胸を膨らませて観に行かせていただきました。

 映画は結構オーソドックスな怪談もの。数々の怪異がおどろおどろしく語られながら、やがて一つの謎に集約されていく構成は王道とはいえやっぱりワクワクするものがあります。流石コワすぎの白石監督だけあってこの手の大嘘のつき方はお手のもの。どんどん現実から不遜な方向に進んでいくそのグルーブ感はさすがの一言です。

 そして驚愕(苦笑)のラスト。いやこれ白石監督ファンにはたまらないすっ飛び方だろけれど、普通のJホラーとして観に来た大多数の方々は目が点になる事必至。最後の最後で一般の観客を突き放すその無邪気さというか悪意というか邪気に、個人的には大爆笑。そりゃ評価も2分するってなもんです。ラストまで結構オーソドックスだっただけに、いやほんと個人的には良くやったと大拍手を送りたくなりましたし、ここでカルト映画への道がひらけた事も含め、監督の意地悪な計算の勝利でした。菅野美穂、怖すぎますし(爆笑)

【75】

 

■「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章

 この原作のアニメ化としては満点な完成度。数多のセカイ系現代世紀末ディストピア青春ドラマ(なんだか矛盾しまくりですが苦笑)の集大成の前編としては素晴らしくよく出来てると思います。好みは人それぞれですが。

【70】

 

■「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章

だからこそこの普通すぎる結末がなんとも勿体無いなあと。

【65】

 

□「ランド・オブ・バッド

 戦場で孤立した若手軍曹と、彼を後方から支援する無人戦闘機のベテラン操縦官の闘いを描いた戦争サバイバルアクション。

 イスラム過激派の温床となっているスールー海の緑豊かな島で、米軍特殊部隊デルタフォースが、拉致されたCIAエージェントを救出するという極秘任務に乗り出した。精鋭ぞろいの部隊の中で、JTAC(統合末端攻撃統制官)のキニー軍曹は航空支援の連絡役として、実戦経験がほとんどないまま任務に参加することになる。しかし目的地に着いた直後、部隊は反政府ゲリラに遭遇し、激しい銃撃戦の末に壊滅寸前に陥る。戦場で孤立したキニーは、はるか上空から支援する無人戦闘機MQ-9リーパーのベテラン操縦官だけを頼りに、決死の脱出に挑むが…(映画.comより)

 一昔前に「エネミーライン」という映画がありまして、おおまかなお話だけならパクリと言ってもいいくらい似通ったお話なのですが。それがまあ現代を舞台にするとこうもテーマが変わるものかと、なんだか妙に殺伐とした気分になりました。ドローン戦闘における非人間性やゲーム的仮想現戦闘の功罪は昨今いろいろな映画が語り始めていますが、スーパーで買い物をしながら遥か彼方で人を殺すという、血を浴びない戦闘行為の気持ち悪さを結構しっかり描いているのはこの映画の良きところ。映画自体はあくまでB級戦争サバイバルアクションの枠から離れない節度を持っていて、そこは物凄く好感度大なのですが、そんな中でしっかりと語るところは語りますな姿勢はなかなか骨太で良し。スローモーション多用のカッコつけシーン(この監督ほんとにスローモーション大好きなのが微笑ましい)もいい感じだし、発射された弾丸が(CGでもね)きちっと描かれてるのも含め、プロがプロとして仕事を全うしようとするその姿勢をリアルに描こうとしているのも個人的には良。巨体化が激しすぎるけど、腐ってもラッセル・クロウな妙演も含め、なかなかに楽しめる良作でした。

【75】

 

□「バレリーナ:The World of John Wick

 まさかここまで続編が製作され、スピンオフまで製作されることになろうとは。1作目のザ・B級映画からここまでののし上がりはもうアメリカンドリーム。広がりまくる世界観とスケールは、もうNHK大河ドラマもかくやの超絶アクションバカ一代記と化して参りました。とはいえキアヌももう61歳。さすがに無理が効く年齢でも無くなってきましたので(まだまだ出来そうな感もありますが)、新たなスターを作る事も必要と言う事でのスピンオフ。そんな映画でアナ・デ・アルマスに目を付けたところがさすがと言えばさすが。

 伝説の殺し屋ジョン・ウィックを生み出した組織「ルスカ・ロマ」で殺しのテクニックを磨き、暗殺者として認められたイヴは、ある殺しの仕事の中で、亡き父親に関する手がかりをつかむ。父親を殺した暗殺教団の手首にあった傷が、倒した敵にもあったのだ。コンチネンタルホテルの支配人・ウィンストンとその忠実なコンシェルジュのシャロンを頼り、父親の復讐に立ち上がるイヴだったが、教団とルスカ・ロマは、はるか以前から相互不干渉の休戦協定を結んでいた。復讐心に燃えるイヴは立ち止まることなく、教団の拠点にたどり着くが、裏社会の掟を破った彼女の前に、あの伝説の殺し屋が現れる…(映画.comより)

 という訳で映画は3の続き。よくよく考えるといまいち意味不明な、やたら豪華で貴賓(というか中世ヨーロッパ的な)のある秘密結社達の殺し屋ワールド(毎回思うのですがここまで作りこまれ、かつ結構大暴れしている組織が世に知られていないのが不思議でしょうがない苦笑)の中で、展開される復讐劇は壮絶かつ残酷。ジョン・ウィックワールドの代名詞な超絶アクションは今回も健在で、しかも今回のイヴさん、まだまだひよっこなので、ジョン・ウィックさんとは違い殴られ撃たれ蹴られるので結構危なっかしいのなんとも上手というか、そういうアクションで個性を見せる演出はさすがの87イレブン。

 まあストーリー的には相変わらずのはったり感満載なザ・コミックなので普通っていやあ普通なのですが、ラスボスのガブリエル・バーンの存在感がさすがなので感情移入のマッチ度はかなり高めです。あとはジョン・ウィックさんが顔見世程度と思いきやかなり物語に絡んでるので、そういう意味でも制作陣のエンタメへの真摯な姿勢はシリーズ全体を通して一貫しているのがうれしいやら楽しいやら。

 監督が代わってもアクション一辺倒で抑揚ゼロなドラマ超軽視傾向は変わらずなので正直飽きたりもしちゃいますが、そこはご愛敬。客が求めてるものを最高の形で提供するという意味ではまさにプロのお仕事です。

【75】

 

■「東方三侠 ワンダー・ガールズ」

 香港のキワモノお色気アクションアイドル映画なんですが、女優さんたちのアクションレベルと、トーさん演出のせいで妙にちゃんとした映画になっているのがなんだか面白くて。

【65】

 

■「東方三侠 ワンダー・ガールズ2」

 こちらもかなりキワモノなんですが、おんなじように妙にちゃんとしてるのがいい。

【65】

 

■「ベスト・キッド(2010)

 観ていなかったのですが、レジェンズのために鑑賞。このジャッキーの枯れ具合は素晴らしいんだけれど、主人公が生意気すぎるクソガキ&ガリガリすぎてちょっと耐えられなかったです…

【70】

 

■「ストリーマー:恐怖のライブ配信」

 とりあえず嘘でもいいからやる気は見せましょう。

【50】

 

■「インサイド

 ウィレム・デフォー迫真の一人芝居はさすがなのですが(相変わらずの濃厚っぷり)、お話的にはツッコミどころ満載で入り込めず。まあ主眼が脱出サスペンスじゃあないからそれはそれでいいのでしょうが。アートについてのファンタジーとしてはなるほどな深みと考察だなあとは感じました(ちょっと偏ってますが)。

【60】

 

■「リベンジ・ガール

 ツッコミどころ満載な中国産アイドル映画。その割に主人公が今ひとつ魅力的じゃ無いのは失敗かと。

【50】

 

■「必殺!主水死す

 安心・安定の必殺。藤田まこと、やっぱりカッコよすぎです。この味はやっぱり至芸。

【60】

 

□「ベスト・キッド:レジェンズ

 我々世代の一部には青春のバイブルとして心に刻み込まれている「カラテ・キッド」シリーズ(学校の窓拭き清掃の時に真似した同志は一杯いるはず。ほらそこ目をそらさない)。シリーズが4作で終焉し、2010年のリメイクはカンフーキッドなので別次元。スピンオフ「コブラ会」を経て(負け犬の復活を描いた傑作です)、ついにすべての世界が1本の映画に集約される!ハリウッドスタジオ製作、ブロックバスターシリーズの集大成、ジャッキーとラルフ・マッチオという、ワールドのレジェンド達の共演。こんな超大作の条件が揃っていながら、上映時間94分‼

 もうこれだけで個人的には傑作認定です。

 映画はもう超王道。心に傷を持つ少年が、友情のため、愛のため、そして自身のトラウマに立ち向かうため、人生の師匠たちの協力を得ながら戦いに挑む。いやあもう胸アツ。努力・友情・勝利な往年のジャンプ魂がここまで恥ずかしげもなくストレートに描かれる映画は昨今そうはないでしょう。裏を返せばありきたりすぎて退屈なんて不埒な意見も出そうですが、それ以上ベストキッドに何を求めるのかと声を大にして言いたいところ。94分なので展開は超ハイスピ―ド。主人公の苦悩や葛藤、また家族や友人達や彼女との関係性などのドラマ部分はかなり端折りめ、というかサクサク進んでいくのですが、それがあまり嫌な感じがしないのは全体を包む80年代テイストのおかげ。重くなり過ぎず、かといって軽薄でも無く。そのバランスと取捨選択のセンスがザ・80年代かつバツグンだからこそのクライマックスの興奮なのです。それを一番表してるのがジャッキー扮するハン師父。2010年版では心に傷持つ結構暗めのキャラだったのが、今回はジョークやギャグを交えたお茶目なキャラに変化(好き嫌いはあるにせよ)。程よく枯れた大人のダニエルさんとの軽妙な掛け合いなどはさすがベテランの味。そういうシーンはしっかり残しつつ、重いテーマをしっかりと滲ませるそのバランス感覚だからこその94分。ラストのサプライズも含め、サービス精神旺盛なあの80年代がよみがえる見事な映画でした。

 【80】

 

□「愛はステロイド

 A24製作のなんとも風変りなジェンダーレスサスペンススリラー。
1989年。トレーニングジムで働くルーは、自分の夢をかなえるためラスベガスへ向かう野心家のボディビルダー、ジャッキーと運命的な出会いを果たし恋に落ちる。しかしルーは、街の裏社会を仕切り凶悪な犯罪を繰り返す父親や、夫からDVを受けている姉など、家族にさまざまな問題を抱えていた。そんなルーをかばおうとするジャッキーは、思いもよらない犯罪網へと引きずりこまれていく…(映画.comより)

 主人公二人は女性。片づける女・ルーと散らかす女ジャッキーの純愛は、その愛の深さ故に壮絶かつ思いもよらない狂気の世界に引っ張られて行きます。現在の基準で見れば二人の関係はその純真さんも含めてちょっと滑稽かつ普通の恋愛なのですが、マッチョイズム全盛の80年代という時代、そして周囲の環境故に破滅的な愛に変化していきます。肉体にしか自身を見いだせない散らかす女と、心の闇を持てあます女の純愛はそのかけらを埋める様に発展していきますが、その行き着く先が地獄なのは観ていてつらく、特にジャッキーは恋する乙女そのもの。肉体という表面でかろうじて保っていた自分が崩壊していく様はなんとも悲しく、その後の行動についても切なさMAX。そんな中で二人が共に助け合い、協力し(かなり酷い事してますが)成長していく様は王道の青春映画のようでもあり、ラストのあっと驚く展開(個人的にはありだけどここで冷める人がいるのも理解できます)は現実をファンタジーが超えた瞬間として非常に映画的でありました。

 色々な見方が出来るなるほどA24な映画ですが、とりあえず純愛映画として観るのが一番見やすいかなあと思います。あとまんま「ヒストリー・オブ・バイオレンス」なエド・ハリス、落ち武者ヘアーも含め、ラスボスとしての存在感が半端なくってめちゃ怖いです(こういう映画の成功の秘訣です)。

【75】

 

■「インビジブル・シングズ 未知なる能力」

 ドイツ製のジュブナイルSF。ザ・B級の香漂う楽しい映画。

【60】

 

■「冷戦

 題名からの想像とちょっと違った東映任侠ものの香漂う香港任侠ギャング映画。安定の展開と泣き。ラム・シューさん、いいですねえ。

【60】