2023年7月鑑賞映画ひとことレビュー
7月の鑑賞本数は23本。少なめです。
■「劇場版 おいしい給食 卒業」
TVシリーズから、なぜか甘利田先生の虜になってしまっております。映画としてもツボを押さえたほっこり具合がいい感じです。
【70】
■「ニッポン無責任時代」
植木等のクレイジーシリーズや日本一シリーズはほぼほぼ観ているのに、何故かこの第1作だけ観ていませんでした(不覚)。今の基準じゃあ結構な犯罪者な無責任男を、ここまで憎めない、愛すべき男に昇華させた植木等、尊敬しかありません。
【75】
□「リバー、流れないでよ」
この手の”すこしふしぎ”なタイムループものが好物ってのもあるのですが、こういう複雑なお話をきっちりと構築し、組み立て、完成させる能力ってホントに素直に感心します。まあそれだけなら感心だけで終わるのですが、そんなピースがきっちりはまっている快感と共に登場人物たちがそれぞれ成長していく過程に感動できるのがこの映画の良いところ。実際はちゃめちゃで荒唐無稽なお話(よく考えると辻褄あってない所も多数)なんだけれど、ヒロインのけなげな可愛さと共に、それぞれのキャラが(大げさすぎるほどの)わかりやすい変化をしていく過程がなんとも心地よく楽しかったりします。
劇団主催の映画なだけに、ところどころ独特な鼻につくシーンや演技もあるし、2分間のタイムリープっていう設定をもっと掘り下げていってもよかったような気もするけれど(もちろんそれが本筋じゃあない事も理解しておりますが)、突拍子の無い世界観の中でもそれぞれの人間たちの機微が適度にリアルなのは、舞台となった貴船温泉の微妙な非日常感の貢献が大きいのでしょう。
あんまり斜めに構えないで素直に楽しむのが良い佳作でした。
【80】
□「Pearl パール」
あのオシャレ系変態ホラーの怪作「X エックス」の前日譚にして最高齢の殺人鬼パールの若かりし頃を描いたエクトリーム・ホラー…っていう事よりも、主演ミア・ゴスを心ゆくまで堪能するある意味超王道なアイドル映画でした。
物語自体はある意味50年代の王道ミュージカル。田舎暮らしの素朴な少女があるきっかけで憧れの煌びやかな世界へ旅立とうと奮闘努力するという流れ。なのに主人公を含め、周りがみんな狂っているとこうもまあ変態で血生臭い世界になるのかと。そんな極彩色の狂気の世界の中でのパール=ミア・ゴスのまあ輝いてる事!薄い眉毛の下の攻撃力MAXな目力があまりに強烈な個性的すぎる風貌から繰り出される渾身のパフォーマンスは圧巻の一言。”ここではない何処か”に強く憧れ、取り憑かれている少女が自らの狂気に飲み込まれていく様を、もはや本人そのままとしか思えないリアリティとクオリティで突っ走る様は女性版ニコラス・ケイジか(お互いに失礼か苦笑)。この手の映画なので賞レースには参加出来ないのだけれど、ここ最近観た中では圧倒的なパフォーマンスでした(「TAR」のケイト様と双璧ではと)。
とはいえ相当に癖のある映画なので、観客を選ぶ映画ではあるし、その独特な外連味がちょっとオーバーなきらいもあって個人的には胸焼けした感もあるし、50年代の映画に対するオマージュ的な箇所がいい加減な感(ちょっと小馬鹿にしているような気がするのは難癖かも)もあって厳しいけれど、そんな些細なことをぶっ飛ばすミア・ゴスの生命力。素晴らしいです。
【75】
■「デモンズ2」
1作目にもましてぐだぐだ感が半端ないのがなんだか微笑ましい。
【65】
■「異動辞令は音楽隊!」
阿部ちゃんのパワハラ刑事っぷりがリアルすぎて全体に重くなってしまったのがなんとも面白い。
【70】
■「ドロステのはてで僕らは」
「リバー」が良かったのでこちらも。この手の劇団映画ってあんまり得意では無いけれど、割り切って観れば楽しい映画でした。
【75】
□「君たちはどう生きるか」
はてさて今年一番の話題作にして超問題作。宮崎駿御大の集大成にして遺作と言わんばかりの立ち位置の本作ですが、いやはや本当に御大が好き勝手自由気ままにやり切った、極私的なプライベートフィルムでありました。
実際製作委員会があるわけでもない、スタジオジブリ単独の製作で、そういう意味でも忖度0のやりたい放題な映画なわけですが、だからこそ御大の真の思想や思考、趣味、嗜好がストレートに表現されているので、そういう点でもかなり好き嫌いが分かれる映画なんでしょう。感情移入しやすい可愛げあるキャラもいない、ストーリーを明確にするようなドラマとしてのわかりやすさなど、エンタメとして客に対する思考よりも自分を優先した結果のこの映画。一般のファンタジー映画っていうよりも御大の妄想(ファンタジー)を全開にしたある意味王道ファンタジーでした笑。
なのでもうこれまでの御大の映画の集大成的になるのは当たり前。少年の通過儀礼・成長儀式を本筋に、死への考察や世界平和への思いや希望など自分の言いたいことをストレートに織り交ぜつつ、やっぱり母、オトナのお姉さん、同級生の元気少女をしっかりと登場させてしまうその助平心(いかにもなメタファー盛りだくさんなのもいやあお元気な証拠で)がなんとも御大。空を飛ぶことや戦争への憧憬と怒りが入り混じった複雑な感情など、今まで御大が表現したきたことの全てが混在しつつ、明らかに確信犯は破綻ぶり(あるいは開き直り)がある意味心地よいというか、齢80にしてようやくここまでの地位を得たんだなあという意味で感慨深いものがありました(相変わらず父親への希薄さが面白かったりもします。あと青ザギのキャラの切れ味がなくなっていたのがなんだか切なかったりもします)。
まあ個人的に主人公の感情を動かす重要なものが他人が書いた本っていうところに物凄い違和感を感じたりしたわけですが、日本アニメ界のアベンジャーズが、総力を結集して爺さんの欲望に塗れた妄想を超絶技巧で映像化したっていう事実だけで、なんだかほっこりというか感動したりもしてしまいました。
【85】
■「大河への道」
何がしたいのかよくわからない映画でした。
【65】
□「ヴァチカンのエクソシスト」
なんだかプロデューサーがSNSでバズったこともあって注目度が高くなった実話系ホラーですが、これがなんともいえない好感度大な愛すべき映画でありました。
基本的にはエクソシストの傍流で間違えないのだけれど、やっぱりそのベスパに乗る巨大な神父様のインパクトは強烈。それがかのラッセル・クロウっていうもんだからそれは面白く無いはずがないでしょう。しかもこの神父さん実在した本物のエクソシスト。というかまあ精神科医さんていうのが正確なんでしょう。そんな森のクマさんみたいな愛嬌たっぷりな神父さんと凶悪な悪魔(これがまた心理戦に長けた嫌〜なやつっていうのもまた王道で良い)の対決が見どころなわけだけれど、この神父さん、余裕があるようで結構トラウマ持ち。結構はピンチに陥ったりもするのですが、それを助けるのがまだ若い経験不足な神父さんていう、バディムービー的なところもまた良し。ド派手でやたらスケールがでかいクライマックスも含め、こう娯楽映画の王道を行く感じが非常に楽しい映画でした。
とはいえやっぱりこの映画は神父さんのキャラが全て。ラストのご本人登場の写真も含め、このかたの愛嬌と愛情に溢れた巨体を愛さずにはいられませんでした(ベスパも含め)。さすがの怪優ラッセル・クロウ、お見事です。
日本でやたら愛されてるこの映画、続編はいくらでも作れそうですが、クロウさんのやる気次第なところもあるので、とりあえず頑張って欲しいです。
【75】
■「宇宙大怪獣ドゴラ」
この時代のこういう映画って本当にアイデアが素晴らしい。面白いものを作ろうとする知恵の出し方がなんだか愛らしいです。
【65】
□「マッド・ハイジ」
本当に好きなものを力いっぱいやり遂げた成果を観るのはどんなものでも楽しいものです。スイスという、おおよそ血しぶきが似合わなそうな国で、ホラー!グラインドハウス!スプラッタ―!これぞB級というものを目いっぱい詰め込んで作り上げたその情熱には本当に頭が下がります。やたら肉肉しいハイジさんやらはずしまくったスイスギャグなんてもうほんとにザ・自主B級映画なんだけど、なまじっかそれなりに完成度がある(あくまでそれなり)ので、却ってパワーが弱いという愛すべき弱点だらけなんだけれど(というか映画としてはそれなりに退屈しないレベルかと。それはそれですごいことなんですが)、とりあえずここはこんな企画(思い付き)を数々の妨害にもめげす(想像)、一生懸命に作り上げた中心メンバーであろう監督以下オタク(であろう)スタッフの心意気に拍手を送りたいです。
映画のパワー的な感じからは、サム・ライミやピーター・ジャクソンのようなオタク界のスーパースターにはもちろんなれないし、これ1作で消えそうな気配濃厚だけれど、それでもその情熱が東の果ての日本まで届くってのは、この手の映画製作者の一番の幸せだと思います。
【60】
□「DASHCAM ダッシュカム」
人生でなんやかやで結構な本数の映画を観てきたと思うのですが、自分史上最低最悪のムカつく主人公がここに登場してしまいました。
とにかく下品。そして自分勝手でわがままで不細工。周りの人間をすべて不幸の泥沼に引きずり込み、いけしゃあしゃあと開き直る、まさにクズの極み。そんなクズを主人公にした映画なんてそれこそ星の数ほどあるけれど、この主人公の場合、ただ単にムカつくのです。コロナでロックダウンの最中、アメリカからロンドンに知り合いの家を尋ねて行くのですが、その過程でもまあとにかく他人を確信犯で不快にさせるその様子がもう本当にムカつくし気持ち悪い。下品な言葉ばかりを並べたラップもどき気色悪いし、何より本当にセルフィッシュ過ぎて観るのも嫌になるレベルでした。とにかくなぜにこんな迷惑系ユーチューバーの映画を撮ろうとしたのかが本当に意味不明で、こいつへのマジムカつきに加え、この災害女の犠牲者になってしまう男性友達の不幸すぎる運命と、暗くて揺れすぎて汚い(生理的に汚いという)よくわからんないPOVの映像も含めストレスだけが溜まっていくという逆ヒーリング映画となってしまってました。この主人公がリアルのこんなやつなのかどうかは知りませんが、とにかく意味なく不快になりたい、怒りたい、ムカつきたいっていう時には最高の映画です。
【30】
■「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」
ドラマを観たことがなかったのでなんもですが、こをシャーロック・ホームズっていうはかなり無理があるかと。
【60】
■「劇場版 お前はまだグンマを知らない」
こちらも他の媒体で観たことが無かったのですが、勿体ないというか雑というか。
【55】
□「ミッション:インポッシブル/デッド・レコグニング PART ONE」
トムさんのマゾ的ライフワークたる、もはや命を張ったアクション披露会的な立ち位置となってきたシリーズ第7段。今回と次作で大団円を迎えそうなので、今回はその前編という体裁。
もうとにかくアクション!アクション!アクション!ガトリング砲なみの高速射撃で展開されるそのアクション全てがもう体を張ったっていうレベル以上のクオリティで、バスター・キートンからジャッキー・チェン、その他様々なアクション映画に敬意を表しつつ、トムさんが嬉々として危険に身を突っ込んでいる様がもうある意味お約束的な感動を与えてくれます。かわいすぎるカリオストロ的なミニチェイスやバイクでの飛び降り、列車を使ったスケールデカすぎ破壊シーンなど存分にカタルシスを与えてくれてもうアドレナリンでお腹いっぱい(語彙力ゼロ)。還暦を迎え一層若返るトムさんの全力疾走に歌舞伎の声がけのごとく「よっトム屋」なんて言ってしまいそうのなります。
てなわけでアクションについては大満足な本作なのですが、やっぱりかのメインキャストの扱いには疑問符、というか怒りがあります。結構持て余し気味になのはわかりますが、それでこの扱いはやっぱりどうかと。「ローグ・ネイション」以降あんなに大事に育ててきたキャラなのに、これについてはちょっと見当違いなきがしましたし、以降のイーサンの感情の流れがどうにも不自然(なんともあっさりな感が否めない)のも結構気になりました。またニューヒロインが魅力的な悪女に見えないのは明らかなミスキャストだし(結構誠実そうな個性かと)、敵役についても小物感がどうしても拭えないなど、全体にシナリオの練り込み不足が顕著だったような気がします。前作までは物語で必要なアクションという立ち位置をかろうじて保っていましたが、今回はアクションに必要な物語という感じになってしまっていたかなと。そんなこんなでちょっぴり残念な出来ではありました。
そうは言ってもあくまで高レベルでのお話。次作はどうやらこのシリーズの見納めとなる気配濃厚なので、きっちり美しい決着を見せてくれるのを今から本当に楽し観にしております。
【80】
■「アンホーリー NETFLIXオリジナル映画」
最近流行のお手軽オカルトかと思いきや、思いの外硬派で重厚な怪談もの。
【65】
■「ヴォイジャー(2021)」
この結末はダメでしょうオブ・ザ・イヤー・この物語でこの展開でこのラストはあまりに卑怯ですわ。
【65】
□「エレメント・オブ・クライム」
稀代の変態監督トリアーのデビュー作。はるか昔に VHSで鑑賞して以来の実に40年ぶりの再鑑賞。
正直やたら茶色くてジメジメ暗かったっていう印象しかなかったのですが、改めて見直してもやっぱりやたら茶色くてジメジメ暗かったです笑。
まあデビュー作にはその監督の全てがあると言いますので、以降お騒がせ変態として名声を得ていくトリアーさんの資質は全て内包されておりますが、さすがに技術が稚拙というか言ってしまえば退屈で、役者さんのミスキャスト感も含め、総じて荒削で見るに耐えないところも結構あるのだけれど。それでもそんな中で抜群のセンスを見せるところもちらほらあるのが流石。物語自体は良くも悪くもよくあるスリラーなので、他のトリアー映画に比べるととっつきやすさはあるので、入門書としてはいいのかもです。
しかしこの映画40数年前は「北欧のブレードランナー」的な宣伝をされていた記憶があるのですが、改めて見るとそんな要素はゼロですね。過去の自分まんまと騙されてます。
【75】
■「ウィッチサマー」
よくあるおなけ屋敷系かと思いきや結構ダークさきつめなのが予想外。
【60】
□「イノセンツ」
大友克洋の傑作漫画「童夢」の北欧版実写映画化。って言ってもいいくらいにまんま「童夢」なSF映画。いやもちろん細かいところは違いますが、雰囲気やら展開やらがほんと「童夢」で、観てるこっちが戸惑うくらいのパクリ度。それでもインスピレーションを得たと言えてしまうところに北欧人のプライドを感じたりしてしまいます。というかなぜに日本ではこれの実写化が今までされて来なかったのか、そちらの方が不思議なんですがね(企画自体はいっぱいあったと思うのですが)。
って悪口的に言ってますが、映画自体はかなりの良い出来。ノルウェー郊外の団地に住む四人の子供達が密かに隠れた力に目覚めていくっていうのは今ではまあよくある設定。でもこちらはきちんと恐るべき子供達として描いているのが良くて、子供ならではの純粋な暴力の残酷さがきっちり描かれているのが良い感じでした。DVやヤングケアラー(そこまでは行かないにしても)のような社会問題をスパイス程度に絡めつつ、あくまで天使じゃない子供同士の、稚拙だけどストレートに残酷な欲望を交えた関係があからさまかつ真面目に描かれているところが個人的にグッときました。
ラストのまんま「童夢」なシーンなんて、だからこそかなりの完成度と興奮。子供達の自然体の演技とお見事なキャスティングもあり、丁寧かつ高潔な作りがなんとも心地いい佳作です。
【75】
■「劇場版 Gのレコンギスタ Ⅳ 激闘に叫ぶ愛」
富野節全開なレコンギスタ、クライマックス前の盛り上がり回。これはもうガンダム好きか否かでしか評価が出来ないので。ちなみに私はガノタ。
【70】
■「劇場版 Gのレコンギスタ Ⅴ 死線を越えて」
そしてクライマックス。相変わらずお若い富野御大、さすがのこだわり、さすがの腕前。
【70】
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