2021年8月鑑賞映画ひとことレビュー
8月の鑑賞本数は32本。今回も劇場鑑賞をメインに。
「ジャングル・クルーズ」
ディズニーアトラクション映画化第3弾。今作はもろ「パイレーツ・オブ・カリビアン」ジャングル編。実際作風というか手触りはそのまんま。ストーリー展開もそのまんま。ある意味安心安定のディズニー印映画です。昨今のトレンドというかブームを貪欲というか臆面もなく取り入れるのもまさにザ・ハリウッド。女性の地位が低い時代に、勝気で自立心の強い女性を主人公にあて、仲良くケンカしながら徐々に絆を深めていくマッチョなヒーローを添えるそのスタイルは昨今のトレンドっていうより昔ながらのハリウッド伝統スタイルか。なのでこの手の映画の場合、その2人がいかに化学反応を起こすかが分かれ道なのだけれど、そこはロック様とエミリー・ブラント。芸達者な2人がソツなくこなしています。正直ロック様のリズムがちょっと悪いかなあと思うところはありましたがそこはご愛敬。エミリー・ブラントの勝気すぎてイラッとするところもあるのもご愛敬。そこを上手に手綱を取れる監督なんて現代ではそうはいないと思いますので、そんな中ではこの映画頑張ってる方だと思います(偉そう)。ストーリーは色々ひねりがあって観てる間は退屈しないしアクションは派手、キャラはそれなりに立っているし、敵は強大。まるでお手本のようなハリウッド映画でした。このご時世、そういう意味でも非常に嬉しい映画でした。【70】
「返校 言葉が消えた日」
台湾発の学園ホラー?っていうかなかなかに独特な雰囲気を持ったダーク・ファンタジーっていう感じの映画。台湾にある翠華高校。放課後の教室で眠ってしまった女子高生のファン・レイシン(ワン・ジン)が目を覚ますと、校内に人の気配は無く、いつもと違った異様な雰囲気に満ちていた。自分が参加している読書会のメンバーでひそかに思いを寄せる男子学生ウェイ・ジョンティン(ツォン・ジンファ)を見つけた彼女は、外へ出ることのできない校舎から抜け出そうとするが、廊下の先の扉の向こうに広がる悪夢のような光景を目にする…(Yahoo映画より)1962年、独裁政権化の台湾が舞台。相互監視と密告が強制されている世界で展開されるストーリーは非常に暗く陰惨。暴力により支配され抑圧された世界での若者達の苦しみが胸に迫ります。映画はそんな世界でもがき希望を見出そうとする学生達を襲う暗く切なく恐ろしい事件お顛末を描いているのですが、暴かれた秘密があまりに悲しく切なく繊細なのは台湾映画っていう感じか。主人公を演じるワン・ジンの薄幸っぷりがその悲しみを大きくしていてお見事なキャスティング。まあゲーム原作という事で(ゲームは知りません)、そのゲームに引き摺られたシーンの違和感は結構あるし、時折出現する怪物も違和感ありありなのが玉に瑕(というか映画的にはそれがメインなのかもしれないけれど)だけれど、独特な雰囲気を持つダーク・ファンタジーとして見る価値のある映画だと思います。【70】
「すべてが変わった日」
今年ベスト級の素晴らしい佳作。ケビン・コスナー、ダイアン・レインという80年代を代表する2人の名優が年月を重ねた夫婦を渋い魅力満載で演じたサスペンス。1963年、元保安官のジョージ(ケヴィン・コスナー)とマーガレット(ダイアン・レイン)夫妻は、モンタナ州の牧場での落馬事故で息子ジェームズを亡くす。3年後、夫婦の義理の娘・ローナが、乱暴者のドニーと再婚する。マーガレットはドニーがローナと孫のジミーを連れてノースダコタ州の実家に引っ越したと知り、二人を連れ戻そうとする…(Yahoo映画より)。基本的にというか骨子は西部劇。実際、雰囲気は完全に往年の西部劇の作りで、老年に達した、心に大きな傷を持つ夫婦の機微を丹念に描きつつ、事件に巻き込まれた今は亡き息子の子供を守るために戦う2人の信念ある行動を、リリカルに、かつサスペンスたっぷりに描くその手法はまさに西部劇。信念を持ち強くたくましいけれど、どこか危うい女性を、のびのびとかつ繊細に演じ切ったダイアン・レインと、寡黙だけれど強い意志と愛を持った男を、最近再ブレイクを果たして油が乗っているケビン・コスナーが演じてます。実際この映画のケビン・コスナー、心にお大きな傷を抱えながら、妻を、孫を大きな愛と責任で包み込む不器用だけれどたくましい、そんな男の人生をしっかりと感じさせてくれるその演技は彼のベストアクトだと思います。ダイアン・レインも大らかに朗らかにだけれど、時たま見せる影が心に深い傷を持つ女性としての複雑さを見事に演じ切っており、そんな2人の掛け合いを堪能するだけでも満足できる作品となっております。かたや敵となる田舎の気狂い家族も一筋縄ではなく、決して悪とまで言い切れない、愛情の種類が違うだけで、それが本当に悪かどうかは決して測れない、そんな風に設定されているのもまた西部劇的。原題の本当の意味がわかる切なすぎるラストも含め、非常に丁寧に作られた人間ドラマの佳作です。
【80】
「ワイルド・スピード ジェット・ブレイク」
全世界のDQNの憧れ、ワイスピシリーズ最新作にしていよいよラストスパートのシリーズ第10作。チンケな車泥棒から幾星霜、思えば遠くに来たもんだ…てな感じで、もはや何がどうなってるのかさっぱりわからないような状況ですが、とりあえず繋がり云々考えず頭を空っぽにするのがワイスピ作法。実際前作の内容なんて全く覚えてませんが特に問題はありませんでした笑。とはいえ今回は前作までのド派手バカアクションからちょっと落ち着いた感じ。正直かなりインフレ気味だった感もあるので、この修正は英断。いやアクション自体は今回もバカでド派手ではあるけれど、前作までの非現実路線からは一歩引いた印象(あくまでもワイスピ的な印象で。通常比はバカ度200%ですが笑)。なので、ちょっと物足りない感もあります。インフレの行き着く先は打ち切りなのは相場で決まっているし、ヴィン・ディーゼル他(ちょっとした)の劣化も目立ってきたし、やっぱりあと2作で完結ってのは悪くない決断なのでしょう。今回はラストスパートへの助走的な立ち位置なので色々物足りない箇所(全体にやっぱり地味っていう印象が拭えません)がありますし、世界を広げすぎてかなりおかしな事になっているのはご愛敬で、今回初参加のジョン・シナをはじめとしてステイサムからフェリオサ、果てはヘレン・ミレンまで出しちゃっているのだからこの壮大すぎるふろしきをいかに綺麗に畳むのかは興味がありますが、全世界の少年チャピオン的不良ワールドの頂点に達するシリーズとしてこのまま突き進んでいって欲しいものだと思います。
【70】
「ザ・スーサイド・スクワッド 極悪党、集結」
期待してました。本当に。B級悪趣味映画の巨匠(っていうのも変な話だけれど)ジェームズ・ガンが初めて(多分)全権委任されて好き勝手作った映画って言われちゃ期待するなっていうのが無理ってもんで。予告編や前評判でも相当出来がいい感じだったので余計に期待値が上がってしまってましたし。そこからの鑑賞。正直言って期待しすぎた感じでした。実際、映画としては非常に楽しく、ガンの悪趣味全開なやりすぎエログロは最高に楽しい、キャラ立ちすぎの悪党どもは全員最高に魅力的。気を衒っただけじゃあないおもしろ構成や、逸れもの達に対する暖かいというか憧れというか普通じゃないものに対する愛情を隠さず、気後れせず開放しつつ、感情移入させるキャラまでに昇華し描き出せるガンのバランス感覚とサービス精神は流石の才能。なので決してつまらない訳ではないのですが、それでも色々腑に落ちない点をとりあえず。「 DC版の特攻大作戦」を目指したっていうのを聞いていたから余計な想像が入ったのかもだけれど、大ボスのスターロくん。「宇宙人東京に現る」のアップデート版な外見はスンバラしいし、キャラ立ちまくりな侵略者はB級テイスト全開で楽しいのだけれど、今回のこの映画の敵としては個人的にハテナ。今回の映画のテイストの場合、敵はリアルな敵であるべきだったのでは。スターロくんが大暴れし出してから、映画のテイストがガラリと変わるのはいかがなものかと。それまでのリアル(とは決していえないけれど笑)路線がガラリとザ・B級に変わるのはどうにも違和感がありました。最初の案にあったらしいスーパーマンがラスボスだった方が映画としてのバランスが良かったように思うのは無い物ねだりかもだけれど、どうしても気になってしまいました。それとハーレクインをはじめとする前作からの引き継ぎキャラ。それぞれはみんなめちゃ魅力的で楽しいのだけれど、ここまでテイストを変えた今回の映画の中では浮いている感が顕著。他の新キャラは結構丁寧にドラマを描いているだけに、旧kキャラ達の薄っぺらさが妙に引っかかるのは悪影響。出したい気持ちは十二分にわかるけれど、今回は出すべきではなかったかなあとは感じました(とはいえ見せ場を尽くかっさらうR指定のハーレクインは最高でしたが)。あと、弱者への優しい目線といいながら、ストーリーの流れよりも一瞬の驚きや笑いのために平気にキャラを犠牲にするのはいかがなものかと(ポルカドットマンがかわいそすぎる)。結論として、「面白いけれど、色々ひっかかるところが多すぎる底意地の悪い悪趣味映画」。あ、それこそガン映画ですね。
【75】
「ドント・ブリーズ2」
前作からの流れから続編?想像だにしなかった驚愕のストーリーが展開する第2弾。盲目の老人の家に盗みに入った若者たちが返り討ちに遭った惨劇から8年。老人(スティーヴン・ラング)はある少女の面倒を見ており、二人だけでひっそりと暮らしていた。ある日、家に謎の武装集団が押し入り、少女を連れ去ろうとする。危機が迫った彼女をめぐって、老人は自らの超人的な戦闘能力を駆使して敵と死闘を繰り広げる…(Yahoo映画より)。前作のサイコホラーとはうってかわって、今回は盲目殺戮変態ジジいが”父親”として武装ギャング相手に撃つわ殴るわの大活劇。まさかこの変態老人に泣かされる日が来ようとは、つゆにも思いませんでした。映画の主人公は親父の世話になっている少女。なのである意味ホームドラマ。少女を守ろうと全身全霊戦う親父の姿をドロドロとした濃密すぎる空気感で描いています。今回のテーマは贖罪。前作での変態極悪非道な行いに加え、人生全てを悔い改めようと必死に戦う親父の末路はやっぱりこうなるのだろうけれど、そんな親父に感情移入させてしまう全身全霊を込めた熱演のスティーブ・ラングの心意気。そんな超強力変態親父に対抗するのは、変態鬼畜度では勝るとも劣らない超極悪夫婦。そんな人間しか周りにいない少女の不幸ぶりがあまりに不便なのはご愛敬として、ここまでな鬼畜設定を作っておいてのまさかの泣かせ。正直下手くそな映画ではあるけれど、それを超える妙なパワーのある映画ではありました。
【70】
「フリー・ガイ」
延期延期で予告編を腐る程見せられ正直お腹いっぱいな今作でしたがようやく公開。いかにもなお手軽ハリウッド映画と思いきや、どうしてどうして非常に良く出来た1級エンタメ映画でした。銀行の窓口係ガイ(ライアン・レイノルズ)は、平凡で退屈な毎日だと感じる一方で、連日強盗に襲われていた。疑問を抱いた彼は、襲ってきた銀行強盗に反撃を試みると撃退でき、さらに強盗から奪った眼鏡を掛けると、街の至るところにこれまで見たことのなかったアイテムやミッション、謎めいた数値があった。やがてガイは、自分がいる世界はビデオゲームの中で自身がモブキャラであることを知り、愛する女性と街の平和を守ろうと正義のヒーローを目指す…(Yahoo映画より)。あらすじだけ読むとまるディズニー/ピクサーのアニメ映画。実際そんなテイストの映画ではあります。誰もがオンリーワン。非常にわかりやすいテーマとメッセージ。だからこそこの映画は面白い。映画が全てそのテーマに向かっていくベクトルで構成されているか迷いが無く、1本芯が通っているからこそ色々遊べるという好循環。成長物語の王道を踏まえつつのサービス満点な細部のディティールや細やかな伏線、派手なアクションや微笑ましいラブシーン、愛すべき登場人物と憎々しい敵キャラ。これぞハリウッドエンタメ!と言わんばかりのプライドとサービス精神に溢れたスカッと爽やかな快作でした。実際この映画、製作・主演のライアン・レイノルズの人となりそのまんまという感じで、とにかく人を楽しませようというレイノルズの陽キャラがそのまま映画になったよう。”いい人”すぎる主人公にちょっとイラっとするのはご愛敬。というかそれなりにクセがある人なのでそれが合わない人(特に日本人にはこの天井知らずの明るさは結構シビアかも)には耐えられない映画でもあるけれど、それを踏まえてもシナリオ、演出、演技の方向性がぴったりとハマるとこういう映画ができるのですというある意味教科書のようないい映画でした。何か色々デジタル的な事に難癖つける事もできるんだろうけれど、それは野暮ってもんです。
【80】
「オールド」
最近復活したシャマラン先生の個人的には最高傑作。何故か時間の流れが速すぎる浜辺に閉じ込められた人々の運命を描いたある種のサスペンスファンタジーというかジャンル分けが難しい映画です。全てのストーリーの根源というか基本中の基本は人という生き物を描く事は人間が創造する以上当たり前の事だと思うのですが、それをここまでストレートかつわかりやすい設定で描いてしまうシャマラン先生の力技というか臆面の無さが(今回は特に)非常に良い方向に働いたのがこの映画。ストレートすぎるテーマを描くための舞台装置がもろそのままっていうその潔さと、それに自己満足せず、エンタメとして楽しませようとするサービス精神の幸せな融合。今までシャマラン先生がひたすら追って来た二兎のうさぎがついに両方とも捕まえられた記念碑的な映画でした。実際相変わらずの真面目すぎるが故の稚拙さや、エンタメにしようとするが故の凡庸さと強引さはあるのだけれど、今回はそれが感動とカタルシスに繋がるという奇跡。ストーリーを多く語るのは野暮なので語ることはしないけれど、加速度的に進んでしまう肉体の成長(と老い)に従って精神が追いついていこうとするその流れは非常に哲学的かつ思弁的。そこまでの意図はなかったにせよ、そういう深淵までの考察を可能にしてしまうこの映画、ただのスリラーでは無い、非常に奥深い映画であると申せましょう。若い頃はその強引さと自信過剰さ(シックス・センスの弊害ですな)からセルフィッシュな面が出過ぎてバランスが崩れすぎ、独りよがりな映画で辛酸をなめたシャマラン先生(でも「ハプニング」は嫌いじゃなかったりします)。「エアベンダー」あたりの迷走を経てからの反省作「ヴィジット」、「スプリット」を経てからの快作「ミスター・ガラス」からのこれ。しかも今回は原作あり。そのせいかどうかはわからいけれど、(シャマラン先生にしては)素直な感動を生むラストになっているのはシャマラン先生の余裕のなせる技。苦難を経て大人になったシャマラン先生。復活したこれから、またもや増長していくのか、それともこのまま子供のままに大人になるのか、これからがまた楽しみなシャマラン先生の傑作でした。
【80】
その他の感想映画
「映画 謎解きはディナーのあとで」櫻井くん執事に全く見えないのですが。【50】
「トウキョウ・リビング・デッド・アイドル」自主映画。【55】
「孤狼の血」ようやく観ました。いや久々の邦画のギラギラギトギト感。楽しい。【75】
「楽園(2019)」綾野剛って成長したんだんあ…【60】
「ブラッド・レッド・スカイ(NETFLIXオリジナル映画)」色々もったいない。【60】
「サイレント・トーキョー」あまりに色々雑すぎて…【65】
「ぼくらの7日間戦争(2019)」そもそも今これを作る意味って…【60】
「水曜日が消えた」惜しい。設定は面白いんだけど。【65】
「すばらしき映画音楽たち」いやほんと素直に尊敬。フランスとかアメリカ以外で続編をぜひ。【75】
「恐怖人形」まさかの着ぐるみ。【50】
「日本で一番悪い奴ら」綾野剛、良いですねえ。やっぱり邦画はこうじゃないと。【75】
「AI崩壊」突っ込みどころ満載なのは良いけれど、とりあえず大沢たかお鍛えましょうよ笑【65】
「フォルトゥナの瞳」神木くんに真面目な映画は今ひとつ。あとあまりに安っぽい。【65】
「3D彼女 リアルガール」オタクがザ・オタクで良かったです。【65】
「センセイ君主」浜辺美波恐るべし。【65】
「死霊院 世界で最も呪われた事件」とりあえず世界で最も呪われてはいません。【50】
「WILD CARD ワイルドカード」まさかのアクション映画じゃあなかった。【65】
「パスト&フューチャー 未来への警告」それなりに楽しめる捻りのきいたストーリーはなかなか【55】
「砕け散るところを見せてあげる」快作。予想外の展開が怖くも悲しい切ない映画。主役2人がお見事【75】
「スペース・プレイヤーズ」予告のウォーボーイズに騙されました…いやほんともったいない。ワーナー版「レディ・プレイヤー・ワン」が出来たのに【50】
「スペシャルID 特殊身分」さすがの俺様ドニーさん。【60】
「SNS 少女たちの10日間」非常に見応えのあるリアリティ・ショー。だんだんと病んでいく女優と男どものあまりの変態ぶりが本当にリアルで気持ち悪い凄まじいホラー。【75】
「クリーン、シェーブン」大昔に見たことがあるのだけどすっかり忘れてました。胸糞悪すぎる電波系スリラー。荒い画面と荒んだ雰囲気がたまらないさすがのカルト。【65】
「百頭山大噴火」合う合わないは置いておいて、ここまでやりすぎる韓国映画のパワーに感服。これを作っても採算が取れる韓国映画界の力量が羨ましい。【70】
ここでお得なポッドキャストをご紹介!台東区の銭湯「有馬湯」をキーステーションにお送りする映画やその他社会のもろもろについて私の友人であるアラフィフ男どもが熱く激しく語りまくるポッドキャスト「セントウタイセイ.com」。かなりマニアックなものから有名どこの邦画を独特すぎる視点で時に厳しく、時に毒々しく、だけど基本は面白おかしく語りつくしておりますので、是非聞いてやってくださいませ。
よろしくお願いします!