2021年7月鑑賞映画ひとことレビュー
7月の鑑賞本数は35本。今月はなぜか邦画強化月間でした。
では。今回も劇場鑑賞作品をメインに。
「ゴジラvsコング」
延期延期で期待値MAXだった今作。いやオープニングでコングがお尻掻いた瞬間に傑作と断定しましたね。怪獣vs怪獣。世紀の対決。それ以上何を望むというのでしょうか。モンスターヴァース4作目の頂上決戦はそんなオトナの男の子たちの夢と希望をきっちり満足させてくれる壮大なバカ映画でした。とにかく対決させるため盛り込みすぎた舞台設定・ストーリーがあまりに壮大かつチャイルディッシュなのが素晴らしい。箸休めにもならないひどすぎる人間ドラマ(まあ実際両巨頭が写ってないシーンの退屈っぷりは半端なかったですが)、変更しまくって辻褄が全く合ってないご都合主義ここに極まれりな展開も頭を抱えるレベルですが、そんなダメダメなところを愛せてしまうのは一重に全てが両巨頭の対決へベクトルが一直線だから。ゴジラの真打登場感、コングのベビーフェイスっぷり、そんな2人のスケールデカすぎ破壊しまくりの怪獣プロレスに興奮しない男の子はいません(断言)。かてて加えてのまさかの〇〇登場に興奮MAX。よくやったな若造的なゴジラ師匠の男っぷりに惚れ惚れしつつ、うっすありがとうございますパイセン的なコングくんの戦いに感動を禁じ得ないまさかの成長物語。小栗君があまりに不憫なのはしょうがないとして、とにかく往年の怪獣プロレスを伝統に敬意を払いつつここまで進化させたハリウッドのオタクたちのパワーと熱意をひしひしと感じられる、そんなオタクの夢の結晶のような珠玉の1品でありました。野暮な事は言いっこなし。頭を空っぽにして童心に帰って楽しむのがこの映画の正しい鑑賞方法です。
【75】
「ブラック・ウィドウ(2021)」
本当久しぶりのマーベル。これも延期延期で、しかも劇場公開はかなりの限定公開。もともとディズニーにはいい印象が無いのだけれど、ワーナーといい今回の配信がらみのゴタゴタにいい気がしないのは、劇場を軽んじてる映画会社の”映画商売”に嫌悪感を持っているからなのだけれど(いやもちろん商売ですから頭では理解は出来るんですが)、そんな劇場至上主義自体がもはや時代遅れの遺物なのかはとりあえず置いておいて。ブラック・ウィドウです。延期の関係でフェイズがごっちゃになってしまってこれがどの位置なのか今一つ把握仕切れていないけれど、時系列的にはシビルウォー後。アヴェンジャーズの中核メンバーで「エンドゲーム」で泣ける決断をしたナターシャのルーツを描いた本作はスカーレット・ヨハンソン念願の企画だけあって気合入りまくり。自身を生み出したあるソ連極悪秘密機関との対決を軸に、疑似家族との繋がりや過去のケジメをつけるべく戦うブラック・ウィドウ最後の勇姿を堪能出来る1本となっております。さすがのマーベル作品だけあってアクションのスケール、完成度はさすが。ヒーロー着地もバッチリなブラック・ウィドウのクールなカッコよさは本作でも健在。今回は彼女の内面を描くのがメインということもあり、今までとは別の彼女の弱い面やトラウマなどもしっかりと描かれており、ますますキャラへの好感度が高まります。それに加えて今回は社会における”女性”への問題定義がサブテーマ(というかほぼメイン)なので、虐げられた女性たちへの応援歌としての側面が強調。実際この映画に出てくる野郎どものどうしようも無さというかキャラの弱さが切ないというかわかりやすくテーマを語ってくれます(女衒の長である長官の憎々しさ、卑怯さがもう本当わかりやすい)。シナリオもそのテーマを非常に上手く巧みにわかりやすく構築しており、本当マーベルの巧みさというかレベルの高さがわかります。今回はスカーレット・ヨハンソンからフローレンス・ピュー(しかしこの子は本当に上手。こういうリアルなすっぱな女の子をやらせたらこの子に対抗できる子はいないです。しかも華があり、体も切れる。逸材ですな)への代替わり的な要素もあるのでそういう意味でもエレーナが魅力的なのもさすが。疑似家族たちもさすがのキャラたちだし。タスクマスターをはじめとするレッドルームチームもこれからの活躍を期待出来るような展開だし、これからのユニバースの始まりを感じさせるのもさすが。まあだからこそ個性が大分殺されたザ・マーベル映画っていう括りから外れることが出来なかった切なさもありますが、1本の映画としても十分に楽しめるスケールとストーリーはさすがのマーベル映画ていう見本のような映画でした。
【75】
「竜とそばかすの姫」
細田守。なんだか過大評価されている監督の一人だなあと常々思っていたのですが、今回ので改めて確信。なんともいいようのない出来の映画でした。ストーリーの流れ自体は悪くないし、超巨大インターネット仮想空間〈U〉の中で愛する人々本当の自分をさらけ出す=見つけ出す勇気をストレートに描いたその姿勢自体は普通に感動できるものではありました。ただ、いかんせんあまりに映画が下手。シナリオは辻褄があわなくてはちゃめちゃ、見せるべきところをみせず見せる必要のないものを見せてる焦点のぼやけ方、演出の下手さが目立って全体に分かりづらい映画となってしまってます。主人公の葛藤や竜と呼ばれる悲しき野獣の内面(というかキャラ)の表現方法があまりに稚拙というかぎこちないというか違和感がすごく、素直に感動することが出来ませんでした。これはもう一重に監督の力量不足というか実力不足。この人、矛盾してますが演出家としては素晴らしく優秀だと思います。ただし枠の中で。しっかりとしたシナリオと手綱を取る人がいれば。実際奥寺佐和子がいた「時をかける少女」「サマーウォーズ」の2本はこれ以上ないほど的確な演出ができていたわけで、やっぱりそういうきちんとした設計図を与えてあげないといい仕事が出来ないのはその後の作品でもう分かりきってる事。所々では本当に素晴らしい描写やらシーンやらがたくさんあるのにその設計図がダメだから本当にもったいないなと。今回は得意分野だから今度こそ…とは思っていたのですが、やっぱり今回も…な残念な映画でした。
【65】
「プロミシング・ヤング・ウーマン」
アカデミーオリジナル脚本賞受賞作。明るい未来が約束されていると思われていたものの、理解しがたい事件によってその道を絶たれてしまったキャシー(キャリー・マリガン)。以来、平凡な生活を送っているように思えた彼女だったが、夜になるといつもどこかへと出かけていた。彼女の謎めいた行動の裏側には、外見からは想像のできない別の顔が見え隠れしていた…(Yahoo映画より)色々なあらすじだけ読むとまたぞろジェンダーの女性至上主義的な啓蒙映画化と思いきやさにあらず。非常によく出来た一級ミステリ映画でした。いや実際、この映画に登場する男は全てゲスでバカでマッチョでどうしようもない男ばかりだし、そんな男達への復讐ものと言えばその通りなのだけれど、それだけにあらず。出てくる人間主人公も含めみんなどこなおかしい、狂っているとしか言いようのない捻れた物ばかりというのがこの映画のミソ。”約束された前途有望な未来を約束された”女性の末路が壊されるその理由さえもジェンダーな垣根を取っ払ったところにおいている事から見ても、様々なところにそういう罠というか”世間の常識”のどこか外れたものを組み込んでいるその異様さが心地悪くも心地よい。そんな練りに練られたシナリオを、稚拙な箇所もあるものの誠実に演出した監督と、狂った主人公を全身全霊で演じきったキャリー・マリガンの憑依演技もさすがの一言。「またぞろジェンダー押し付け…」と拒絶反応を起こして観ないのは勿体無い、よく出来たサイコミステリーでした。
【75】
「最後にして最初の人類」
先頃急逝した音楽家ヨハン・ヨハンソンが唯一残した監督作。著名なSF小説を原作に、映像と音楽を組み合わせながら、20億年先の未来から語りかける人類への壮大な叙事詩。旧ユーゴスラビアに点在する戦争記念碑スポメニックを16mmフィルムで写した映像に、ヨハン・ヨハンソンが奏でる音楽を載せて、ティルダ・スィントンのナレーションが重なる構成。スポメニックについては以前ネットなどで目にしたことがあるけれど、ここまで魅力的な建築物だとは思いもしませんでした。ヨハンソンの神秘的で、勇壮で、壮大だけれどどこな刹那的な音楽が、そんな戦争記念碑の持つ深すぎる意味合いをさらに深化させ、相乗効果が2倍にも3倍にも増大。非常に心に染みる映画でした。ナレーションの内容が結構なザ・SFだったのがまた絶妙なバランスで、そういう意味でもそんな世界にじっくりどっぷり浸れる至福の70分。ただそういう雰囲気に乗れない、入れない人に取っては強力な睡魔と戦う、厳しい70分である事も確かです笑。
【70】
「ライトハウス」
「ウィッチ」の毒々しくも美しい映像美と悪魔的なストーリーがなかなかに美しかったロバート・エガース監督のスリラー。1890年代、アメリカ・ニューイングランドの孤島に灯台守としてベテランのトーマス・ウェイク(ウィレム・デフォー)と経験のない若者イーフレイム・ウィンズロー(ロバート・パティンソン)がやって来る。彼らは4週間にわたって灯台と島の管理を任されていたが、相性が悪く初日からぶつかり合っていた。険悪な空気が漂う中、嵐がやってきて二人は島から出ることができなくなってしまう。外部から隔絶された状況で過ごすうちに、二人は狂気と幻覚にとらわれていく…(Yahoo映画より)ウィレム・デフォーとロバート・パティントン、ほぼ2人だけで進んでいくこの映画、その2人の演技合戦が見所だとは思うのですが、実際この2人、凄まじく気合の入った演技を見せてます。ウィレム・デフォーの老獪というか意固地で頑固で意地悪などうしようもない糞爺っぷりとパティンソンの大人しげで従順そうだけど一癖も二癖もある悪人っぷり。その憑依しすぎの2人が最初から最後までひたすら罵り合い、ぶつかり合い、いがみ合う。その様子を究極のモノクロ・スタンダードな映像美で映し出すというそのアンバランスさがこの映画のひねくれた魅力か。映画は終始灯台から離れず、ひたすら狂って憎しみあう2人を延々と描いているのだけれど、その狂いっぷりというかストーリーの流れがどうにもはちゃめちゃ。いやまあ狂っていってるっていうのなら整合性やら理路整然やらは関係ないのだけれど、一応劇映画なので、そこのところはある程度しっかりやって欲しかったのが正直な感想。宝探しやらイカロスやら色々神秘的なギミックなども散りばめられていて色々期待を抱かせるものの、それらが一切上手く機能していないのは確信犯とはいえどうにも勿体無い。結局作家性という自己満足に埋もれてしまったという印象が強い映画でありました。勿体無い…
【65】
「イン・ザ・ハイツ」
やたら前評判が高かったミュージカル映画。なんだけど、個人的な趣味なのかもしれないけれど、どうしても乗れなかった1本。ニューヨークの片隅にある取り残された街。ワシントンハイツを舞台に、相違祖国から離れて暮らす移民達の苦悩と苦しみ、そしてそれを乗り越えようとする若者達の動き出す運命をダンスと歌で賑やかに描き出す。実際、賑やかです。明るいです。ド派手です。とりあえず踊っとけ、歌っとけ的な陽気さに満ちているので幸福感というか高揚感はめちゃめちゃあります。元々が傑作ブロードウェイミュージカルなので歌とダンスはさすがのトニー賞4冠。だからこそ映画化した意味というのを考えてしまいます。監督はそのあたりかなり考えていて、映画ならではの表現方法を(稚拙だけれど)随所に盛り込んでいてそのあたりはすごく頑張ってるなあとは思うし、一部は成功しているのですが、何故か今ひとつ乗れませんでした。なぜだろうとずっと考えていたのですが、これはもう完全に個人的な趣味の問題で、映画の中での彼らの苦悩と苦しみが全く伝わってこないから。辛い苦しい故郷に帰りたいって声高に歌って踊られても、それがダンスや歌から今ひとつ伝わってこない。だってめちゃ楽しそうなんだもの。それでも生きていく的な空元気っていうかそれがこのミュージカルの良いところなんだろうけれど、光が強すぎて影がほとんど見えないというのはいかがなものかと。セクシーすぎる女性陣ややたらガタイが良い陽キャラの野郎どもをみて辛いやらクスいいやら叫ばれても正直だからどうしたと思うだけでした。それこそ個人の趣味の問題だけど、それでもそんな感情を抱かせるような作り自体は映画としての深みが足りないということだとは思うのです。そう、日本のヒップホップを聴いているような気恥ずかしさ。そんな映画でした。
【60】
その他の鑑賞映画
「道士下山」どうしても主人公ワン・パオチャンの笑い声に嫌悪感が…【60】
「センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島」ロック様が初々しくて良いです。【65】
「ムーラン(2020)」ドニー様の無駄使い。っていうか下手な映画でした。【65】
「トゥモローウォー(Amazonプライムオリジナル映画)」設定がなかなかに面白いけれど、それを生かしきれなかった印象。それでもこのバカSF
の大作感、久々で楽しいです。【70】
「エイリアン:ダーク・プロジェクト」設定は面白いけれど、ザ・C級な切なさ。【65】
「ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ」ワンアイデアで押し通したB
級映画の拾い物。清々しいまでのB級感が素晴らしい。【70】
「見えない目撃者(2019)」吉岡里帆熱演です。頑張りました。【70】
「鍵泥棒のメソッド」抑えた香川照之と堺雅人の初々しさが逆に新鮮でした笑。捻りは今ひとつ【75】
「アフタースクール」こちらも捻りは今ひとつ。それでも鍵泥棒とともに十分楽しめるエンタメでした。【75】
「ザ・エクスペリメンター」たまにはこういうC級も観ないと楽しくないので。【50】
「ちはやふる 結び」広瀬すず、やっぱり底意地の悪さが見え隠れするのは気のせいでしょうか。【65】
「ゴッド・ウォーズ」ザ・ C級。【50】
「地獄(1979)」原田美枝子が美しすぎ。【50】
「ゴーストスクワッド」こういう映画が邦画を壊しているのだと思う。【10】
「ライヴ」同じく。確信犯のC級は本当に悪だと思う。【10】
「パズル(2014)」こっちは志が高いホラーでした。【65】
「カイジ 人生逆転ゲーム」【60】
「カイジ2 人生奪回ゲーム」【60】
「カイジ ファイナルゲーム」【60】
藤原竜也ワンマンショー3部作。カイジってバカですよね。そしてもはやギャンブルではないですよね笑
「四月は君の嘘」広く浅い青春映画。【60】
「ファイナル・プラン」リーアム・ニーソン師匠のアクション薄めな復讐劇。鉄板のワンパターン。【65】
「太陽な動かない」意気込みはわかるし頑張っているけれど、だからこそアラが目立ちまくる切ない邦画。竹内涼真鍛えましょう。【60】
「SUNNY 強い気持ち・強い愛」超ヘタッピ映画。見るに耐えない…【50】
「劇場版 おいしい給食 Final Battle」市原隼人のハジっけっぷりが楽しい。それだけ。【70】
「コヤニスカッティ」壮大な映像叙事詩。大画面で感じるべき映画。【70】
「ルクス・エテルナ 永遠の光」相変わらずのギャスパー・ノエ節。こんな映画を完成させる力ってすごいなあと思います。(経済的な面も含めて)【60】
「17歳の瞳に映る世界」傑作。派手なドラマがなくても、過度な演出をしなくても心の奥まで突き刺さるような映画が作れることを証明する、繊細で丁寧で真摯な青春悲劇。主人公2人のリリカルすぎる演技に圧倒されます。【75】
「TEKKEN 鉄拳」ゲームまんまなのは素晴らしい。【50】
「君の膵臓をたべたい(2017)」実写版。こんな予定調和を良しとするかは正直どうかと思うし、色々言いたいことはあるけれど、浜辺美波、素晴らしすぎ。小栗旬、邪魔笑【70】
ここでお得なポッドキャストをご紹介!台東区の銭湯「有馬湯」をキーステーションにお送りする映画やその他社会のもろもろについて私の友人であるアラフィフ男どもが熱く激しく語りまくるポッドキャスト「セントウタイセイ.com」。かなりマニアックなものから有名どこの邦画を独特すぎる視点で時に厳しく、時に毒々しく、だけど基本は面白おかしく語りつくしておりますので、是非聞いてやってくださいませ。
よろしくお願いします!