2018年6月観賞映画ひとことレビュー
6月はW杯やらお仕事やらで何かと忙しく、総観賞本数が18本とかなり少なめ。このままでは年間300本はかなり怪しいので7月からは頑張ります。
ではでは。今回も劇場観賞をメインに。
「ファントム・スレッド」
多分現役の映画監督の中で一番の「天才」といえばやっぱりこの人P・T・アンダーソンの最新作。なぜこの年でここまで人間というものがわかっているのか本当不思議でしょうがない程、濃密で濃厚でアクが強すぎるのにリアルな人間ドラマを描くこの監督。好き嫌いはあるだろうけれど、そのフィルモグラフィーをみればやはり現代最高の映画作家の一人である事に異議は無いと思います(個人的には「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」とか「マグノリア」のような大作より「パンチ・ドランク・ラブ」が好きですが)。そんなP・T・Aの最新作がこれ。1950年代のロンドン。仕立屋のレイノルズ・ウッドコック(ダニエル・デイ=ルイス)は、英国ファッション界で名の知れた存在だった。ある日、ウエイトレスのアルマ(ヴィッキー・クリープス)と出会った彼は、彼女をミューズとしてファッションの世界に引き入れる。しかし、アルマの存在が規則正しかったレイノルズの日常を変えていく…(Yahoo映画より)とまああらすじをみればエレガントでオシャレで優雅な格調高い恋愛ドラマそのままなんですが、いやーこう言ったらあれですが、ただの変態カップルの変態的なノロケ観賞映画でした笑。とにかくヒロインであるアルマと主人公のレイノルズのキャラが強烈(というかリアル)。完璧主義で見栄っ張り、やたらと神経質な気分屋さんで自分勝手な天才デザイナーという、もう身近にいたら決して近づきたくないというかぶっ飛ばしたくなる主人公をダニエル・デイ=ルイスが完璧に演じてしまってるもんだからもううざいったらありゃしないし、ヒロインも最初は黙って三歩後ろをついていきます的な田舎のちょっとダサめでネクラちっくな女の子だったのが、ちょっと都会で揉まれ出したら自己主張しまくりのエセセレブ勘違い女に早変わり。またそんな嫌味というかある意味ものすごくリアルなキャラをこれまた完璧な演出と演技で見せてしまうもんだからもう本当にイヤーな気分になる事必至…やたらと完璧で美しすぎる映像美と優雅すぎる美術の中で、こんな下世話でリアルでイヤミス的な苦すぎる人間ドラマを圧倒的な演出力と演技力で作ってしまうのだから、そりゃもう面白くない訳がないってもんです。とはいえどうにも頭(というか計算)で作っている感が強すぎるのも否めなく、そこがやたらと鼻につくのもP・T・Aの特徴で、今回もそれは残念ながら感じまくり。それならそれでそっち方面で突っ走ればいいものを、そこまでいけない勇気の無さというか人間味がある意味この監督の個性なのかもしれません。ともあれ格調高いイメージに敬遠しがちなB級映画好きな方にぜひ観て欲しい、変態映画です。
★★★
「デッド・プール2」
日本でもまさかの大ヒット。こんなマニアックでエログロ映画に老若男女(と言っても15歳以上ですが)が大挙してるのを見ると、映画の立ち位置の変化をマジマジと感じてしまうのですが、ともあれ我らがデップーがここまで愛されるなんてと感慨ひとしおだたりします。まあそこまでデップーの事を知っている訳じゃあなのいのでエラソーな事は言えないのですが、こと映画に関してはデップーというより「中の人」ライアン・レイノルズに尽きると思います。「第4の壁」破壊は前作よりもはるかにパワーアップ。もはやデップーかレイノルズかわからない位、レイノルズもキャラ化してます。それがもう最高に楽しい(特にオチ)。ここまでハリウッドスターが自虐的になれるなんてホント時代の変化を痛感します。兎にも角にもこの映画はプロデューサーも兼ねてるレイノルズのワンマン映画なので、何気にデップーは結構真面目だったり、情に厚かったり、ストーリー自体が結構オーソドックスなのはレイノルズの理性というか、本来の真面目なところなんでしょう。そう、この映画、実はかなりオーソドックスというか王道な映画。本筋が何気にしっかりしてるからどんなけバカをやってても戻るところがあるのがこの映画のいいところ。そういう意味では結構頭のいい映画なのかもしれません。出てくるキャラがどれだけ破茶滅茶でもおバカでもディティールやアクションがどれだけグロくてエロくてもしっかり元に戻ってくるその安心感はある意味ハリウッド映画の王道。だからここまでヒットするんでしょう。そんなこんなでバカ映画だけど何気に知能指数が高いというまさにデップーのキャラそのまんまという考え抜かれた知的映画。ヒットするのも頷ける完成度の高い(とはいえ演出やら構成やらは結構ヘタクソですが笑)万人が楽しめるエンタメ映画です。ただ、これをベスト1にするのは違うかなとは感じます。結局、サブカルというか王道の少し脇を行くところが楽しいので、それをそのまま素直に認めてしまうのは”映画”としてどうかという疑問がどうしても出てしまうのです。オッさんの愚痴といえばその通りなんですが、やっぱりこの手の映画は”カルト”になってナンボっていう映画界であって欲しいです。
★★★★
「レディ・バード」
昨年やたらと評価の高かった女の子の青春成長物語。まあそんな事より個人的にファンなシアーシャ・ローナン嬢の主演作って事で観たのですが笑。レディ・バードと名乗り、周囲にもそう呼ばせているクリスティン(シアーシャ・ローナン)。高校生最後の年に看護師の母マリオン(ローリー・メトカーフ)と進学先を決めるために大学見学に行くが、帰りの車中で地元のカリフォルニア州サクラメントから離れて都市部の大学に進みたいと言ったことから大げんかになる。それ以来、母と衝突を重ねる一方、親友のジュリー(ビーニー・フェルドスタイン)とも疎遠になってしまう…(Yahoo映画より)。とまあお話し的にはよくある青春ものなのだけれど、この手の映画で結構大事なのはその描き方とリアリティ。リアリティていうのは別に現実に即したディティールとかじゃあなくて感情・行動のリアリティ。この映画そこのところが素晴らしい。もちろん自分はオッさんなので少女の感情のリアルなんてわかるはずもないのだけれど、それでもその感情とかを納得させてくれる説得力がこの映画にはあります。それは目線とか背伸びの仕方とかいちいち動き出す時の走り方とか笑顔の自然さとかあざとさとか、そういう少女特有の悪どさとか素直さとかが一切妥協なく公正に描けているから(嬢の容姿をそこまで完璧にしていない所もそういう意味でしょう)。実際エキセントリックや古風な女性を得意とするローナン嬢がここまで普通の少女を演じきる事ができるのはもちろん嬢の才能もあるけれど、実際有名女優である監督の繊細かつ、役者に対しての”わかってらっしゃる”指導の賜物。中二病のレディバードのいちいち痛いけれど納得してしまう行動がそこまでやり過ぎではないところもまたバランス良し。「スウィート17モンスター」のあまりに中二病過ぎてイライラしまくったヒロインとは違う、そういうギリギリのところで抑えているのもまた上手いところ(まあ舞台を一昔に設定してるのが逃げといやあ逃げなんですが笑)。あと、特筆すべきは母親をはじめとする大人との関係。この手の映画によくあるなんでもわかってる大人のエゴ的ないい母親じゃあなく子供第一に全てをしている素晴らしい親なんだけれど、それがことごとく裏目に出てしまって世を拗ねてしまっている母親の存在をきっちり描いた事により、青春ものに止まらない、女性映画としてもレベルの高い映画となりました。まあ実際結構甘ったるい青春映画的なシーンも多々あり、そこまで新鮮味がある映画ではありませんが、それでもクスリと笑ってホロリと泣ける佳作です。
★★★
「30年後の同窓会」
インディーズとハリウッドを飄々と渡り歩く、実は現代のアメリカ映画界で一番成功してるんじゃないかと個人的には思ってるリンクレイターの最新作。で、今回はオッさん3人のロードムービーという、いってみればかなり地味すぎる映画なんだけど、こんな映画を撮れてしまう事自体が結構ハードル高かったりもするので、そんなとこにもリンクレイターの世渡り上手感が出てて面白いなあなんて思います。そんなリンクレイターの職人気質とインディーズ的な個性のせめぎ合いがこの映画のツボ。「さらば冬のかもめ」の精神的続編という触れ込みのこの映画ですが、確かに色々なところがリンク。まあそんなところは気づかなくても何の問題も無いので前作を未見の方もご安心を。わけありの過去を捨てて牧師になったミューラー(ローレンス・フィッシュバーン)と酒ばかり飲んでいるバーの店主サル(ブライアン・クランストン)の前に、音信が途絶えて約30年になる旧友のドク(スティーヴ・カレル)が姿を現す。ドクは、突然の再会に驚く彼らに、1年前に妻に先立たれ、2日前に息子が戦死したことを話し、息子の亡きがらを故郷に連れ帰る旅に同行してほしいと頼む。こうして三人は、ノーフォークからポーツマスへと旅立つが…(Yahoo映画より)。訳ありの過去によって決別した3人が道中の様々な事件や出来事を通して友情や絆を取り戻して行くという、王道ストーリーなので、安心して観られます。かなり静謐で淡々とした映画ではありますが、とにかく3人の役者陣が秀逸。突然の不幸に見舞われる常識人であり家族思いな普通の人なのにどこか狂気を醸し出すスティーブ・カレル。ひたすら減らず口を叩き、暴走する向こう見ずなキャラなのにふと見せる寂しげな表情が秀逸なブライアン・クランストン(ひと昔前ならトミー・リーがやったんだろうなあ…)、逃げルための宗教と一般的な平穏から逆に逃げ出せなくなっているローレンス・フィッシュバーン(老けましたなあ…)。この3人のリアリティと言うか存在感が兎にも角にも凄過ぎ。特にスティーブ・カレルの深すぎる悲しみを抑えた静かな狂気はアカデミーものの名演。コメディ畑の実力をまざまざと見せつけてくれます。3人のおバカな珍道中にクスクス笑いながらも根底に流れる静かな反戦のメッセージも声高に言わない分、またそのギャップで余計胸にしみます。実際派手な見せ場も大きな事件も無いかなり地味な映画ですではあるのですが、だからこそメッセージやテーマが余計胸に迫る、職人リンクレイターの成熟した腕を堪能出来る”いい映画”なんですが、やっぱり地味過ぎです笑。
★★★
「ニンジャ・バットマン」
ジョジョラーの自分がTVアニメ版ジョジョで一番興奮したのが3部のオープニング。その映像を制作した会社製作ってだけで観てしまったトンデモ映画にして、どうにも手詰まり感があったDV映画に光明を見出した(かもしれない)”良く出来た”映画見にでした。もちろんバットマンが戦国時代にタイムスリップ、その世界ではヴィラン達がそれぞれ戦国武将として覇権を争っていたなんてお話し自体がクールジャパンをある意味バカにしまくった(というか皮肉ったというか)展開に終始しつつ、大元のDCにリスペクトしまくった作りになっており、何気に良く出来ているのがミソ。とはいえこんなおバカなストーリーを大真面目に作れる訳も無く、確信犯で好き勝手やりまくり。しかもそれが異常なレベルのこだわりと技術力とギガカロリー満載の映像で突っ走るものだから観ているこっちがもう疲れまくり。それぞれのシーンの完成度は凄まじくて、映像的興奮は圧倒的なのだけれど、なんというか3食ステーキを1週間も食べてたら飽きるどころか異常な胸焼けで身体壊します。そんな感じ。心のぬきどころが一切ないものだから正直飽きます。なので観終わった後興奮云々よりも疲れたっていう感想が出て来るのがもう映画としてどうなのって感じでした。多分家とかでノンビリ一時停止出来る環境なら大丈夫なのだろうけれど、ここまでのハイテンションでの90分間連続眼の酷使はもうオッさんには無理でした。なのでU-35の方にはオススメのバカアニメでかなりのハイレベルエンタメなのですが、高齢化社会には優しくない、その癖ストーリーが40代のオッさん向けというアンバランスで変な映画です。あと声優さんたち。これはもう個人的意見なのですが、その暑苦しすぎるザ・演技、どうにかならないものでしょうか。以前からずっといってますが宮崎駿が声優を使わない理由を改めて確認しました。というか昨今のアニメ見るたびに実感してしまうのは自分がオッさんだからっていう理由だけではないと思うのですが。
★★
「スパイナル・タップ」
昨今大流行りのモキュメンタリーの元祖にして音楽カルト映画の最高峰にしておバカ映画の見本のような大傑作。大昔にビデオ笑で鑑賞して以来、実に20ン年ぶりの再鑑賞だったのですが、いやーほんとに面白い。「面白い」という言葉がここまで似合う映画ってほんと最近無いなあと改めて思いました。初鑑賞時は中学生だったのでこの映画の価値というか本当に面白さがわかってなかったのだけれど、架空のヘビメタバンドの凋落(って言ったらカッコ良過ぎだけど要するに落ち目)をいろんな実在バンドの実話を織り交ぜつつ面白おかしく構成しまくったその知性がまずカッコいい。有名どこから一発屋まで、様々なバンドのエピソードを徹底的に調べ上げそれを再構成するという方法(ほんとにこの映画が初めてだったのかは知りませんが)をコメディにした事がまず慧眼。写ってる本人達はいたってシリアスであって、それがシリアスであればある程笑えるという知能指数が高い笑い。それがもう最高にクールで楽し過ぎ。ヘビメタの深淵なようでバカすぎる歌詞やエログロなどをスパイスにしつつ、バンドマン達の人間関係も(ステレオタイプとはいえ、いやこれは確信犯ですね)ちゃんと描いているところなんかも素敵。いやもうそんな理屈は置いておいて、とにかく愛すべきバカ達の、バカすぎるけど結構真面目で一生懸命な生き様が妙に心に響きまくる、ダサいけれどカッコいい、センスと知性に満ち満ちた、元気が出る人生の応援歌的な傑作です。
★★★★
「オンリー・ザ・ブレイブ」
昨今流行りの、というか結構飽き気味の実話もの。今作はアリゾナ州の森林消防士達の活躍と悲劇を一人の新人隊員のめを通して描いたヒューマンドラマだなのだけれど、鑑賞後の正直な感想は「予告編ザギ」でした。予告編だけみると、超大規模森林火災に立ち向かう消防士達のスリルとサスペンスに満ちた緊迫のパニックアクションに思えるのだけれどさに非ず。どちらかというと一人の自堕落な青年の成長物語でした。それはそれで全く問題なく、そちらの方が見応えがあったりもするし、そいうい目で観れば良く出来た映画です。この手の映画の場合、その主人公が属するチームをいかに描くかがキモなんだけれど、この映画に関してはそこはクリア。厳しいけれど愛情あふれる隊長。最初は気に入らずいじめたりもするけれど、何かのきっかけで最高の仲間になる同僚、そんな彼らを見守る家族達。そういうお約束に関してはきちんとクリア。とはいえ違いを見せようと(というか実話だからかもだけれど)そこここにちょっとしたリアルを見せる事が果たして良いのかどうかはどうにも判断に迷うところ。主人公の性格がそれほどひねくれていないというかギリギリ好感を持てるところで留めているのも結構上手。堕落からの成長を素直に応援できるのも高ポイントではあります。そういう意味では隊長の描き方にリアリティを求めた故の違和感もありますが、総じて納得というか、”古き良き時代””居心地の良い空間”演出はできているかと思われます(この手の映画は実はここかなり大事)。なのでどうしても後半の展開に疑問が。精鋭の部隊がどうしてこのような最後を辿ったのか、そこのところがどうにも説明不足というかお粗末で、彼らが無能に感じてしまったこのラストは実話とはいえもう少しやりようがあったのではと痛切に思います。自然の猛威といえばそれまでだし、ヒューマンエラーがあった事も原因の一部でしょう。でもそれがあんまり上手く表現出来ていないから彼らが無能にしか見えないというのは明らかに作劇ミス。正直それまでのドラマが全て茶番に見えてしまう程、クライマックスからの展開が勿体無く感じた、どうにも消化不良な映画です。
★★
「告白小説、その結末」
鬼才ロマン・ポランスキー待望のミステリー。過去の名作達はもちろん、「フランティック」が妙に好きな自分にとって、ポランスキーのミステリーと言ったらもう観るしかないわけで、昨今の「ゴーストライター」でもそのうますぎる卓越しまくった演出力・構成力を存分に発揮していたポランスキーの事、いやいや今回も流石の出来でした。とはいえ今作はミステリーというよりはサイコサスペンスといった趣。自分の家族の事を書いた小説がヒットした女流小説家が、ふとした事で知り合いになった熱狂的な女性ファンに徐々に心を狂わされていく…といったストーリー自体は結構平凡。とはいえさすがのポランスキー、過去の名作「テナント」や「反撥」などこのての心理サスペンスはお手の物で繊細な演出や手の込んだカメラワークで主人公の不安やゆらぎを適切に見せてくれます。下手なドッキリやトリックに陥る事なく淡々と誠実に見せる様は昨今のこの手の映画のようなハデさが無い分、余計に役者と演出のレベルの高さがわかります。正直主人公のエマニュエル・セニエはとうが立ち過ぎてる感もありますが、そこは演技力でカバー。エキセントリックでは無く普通の人物を適度に抑えた静かな演技で演じます。また熱狂的ファンを演じるエヴァ・グリーンの美しいことと言ったら…この方も結構エキセントリックというか人外を演じる事が多いのですが、今回はこちらも抑えめ。”普通だけどどこかおかしい”というキャラを静かだけれど滲み出るような狂気を嬉々として演じています。なので全体としてはかなり地味。心理サスペンスの性質上、どうしても派手な映画にはなりにくいのはあるけれど、それにしても地味すぎるかなという印象ではありますが、主人公が病気になるあたりから一転、エヴァ・グリーンの狂気が前面に出始めると映画は禍々しい雰囲気を放出させます。やってる事は地味なのにそのサスペンス感は半端なく、じわじわと漂うヌメッとした空気が見えるような濃縮な危うさは流石のポランスキー。演技だけでこの雰囲気を出せる演出家はさすがとしか良いようがありません。もちろんオチは結構わかりやすいし、全体としてストーリー自体はそれほど目新しくもないし平凡なのだけれど、それでもここまで見せてしまう監督・役者の力量を素直に堪能する、そんな歌舞伎のような映画です。
★★
「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」
鳴り物入りで公開したものの本国で思った程売れず、スピンオフプロジェクト自体が頓挫してしまう可能性までも出てしまうというきっかけを作ってしまった問題作。というか個人的にはそもそも「スター・ウォーズ」というコンテンツへの売り手の期待値が高すぎる気もします(あのEP2とEP3の時の落ちぶれっぷりをもうみなさん忘れたのでしょうかねえ)。EP7だってある意味EP1〜EP3への反動からの期待値であった訳で、やたらと酷評されてるEP8だって実際EP1〜EP3に比べれば全然よかったと思うのですが(いやまあSWっていったら…ていう気持ちもわかりますが)。とはいえ「ローグ・ワン」がSWスピンオフとしてある意味完璧だったのがどうにも問題。”SWはこうあるべき”的なものが「ローグ・ワン」で構築されてしまった感があるのが「ハン・ソロ」の不幸だったのかも知れません。いくら人気があるとはいえその将来というか最後を知っているキャラのスピンオフをどう捉えるかという事から考えなければなんですが、ハン・ソロというキャラに関してはもうまさに西部劇な訳です。いわゆるアウトロー。なので、彼の過去とか生き様を見たいかと言われれば…という気持ちになるのも個人的には納得。だって「夕陽のガンマン」の名無しの若い頃なんて知りたくもないし。だからもしソロのスピンオフをやるなら過去の人生とかじゃあなく、西部劇にするべきだったと思います。ヤンチャな出自とかじゃあなく、ふらりと現れふらりと去る、そんなマカロニ的な活躍を見せるソロ。相棒チューバッカとある町の事件を解決して背中で語る風来坊。そんなソロがEP4で自分の居場所を見つける…ていう流れだと大いに盛り上がると思うのですが。そういう意味で今回のこの映画、アプローチからしてちょっと方向性が間違っているかと。こんなストーリー展開なら前述したようにあくまでソロは部外者の方が映画としてはしっくりくるし、ヤンチャなソロを主人公にするならもっと方向性を変えた、例えばドンチャン騒ぎのコメディタッチの青春活劇映画にすべきかと。どうやら監督交代前まではそういう方向性だったらしく、映画のそこここにそういう青春ドタバタ活劇的な部分が残っていたりするのが逆にアンバランス。いやロン・ハワードは流石の職人ぶりで、過去との整合性を取りつつドライかつ熱い西部劇タッチのSF活劇として一定の満足できる作品に仕上げているけれど(全体のダークかつ生真面目な世界観は全然嫌いじゃあないです)、それ以上でもそれ以下でもないのがハワードのハワードたる所以。主人公のオーラの無さと、変にファンへの目くばせ(サービス?)を欲張ったせいか良くもなく悪くもない中途半端な映画という一番タチの悪い出来となってしまいました。実際観た直後感じたのは一体何がしたかったの?という純粋な疑問。MCUがあれだけ色々な事にチャレンジして成果をあげているのと比較するとあまりにも製作陣がS Wという呪縛にとらわれ過ぎているような気がしてなりません(その癖EP8みたいなのを作っちゃうもんだから余計おかしくなってるんですが)。せっかく傑作「LEGOムービー」の監督コンビでSWの枠をぶっ壊す可能性があったのに(観たかった…)それを放棄した結果がこれじゃあSWの未来は結構暗め。この結果を踏まえた製作陣のシフトチェンジとそれを実行する勇気に期待です。
★★
ここでお得な映画番組情報‼︎台東区の銭湯「有馬湯」をキーステーションにお送りする毎回1本の映画について僕の友人である40代男達が語るポッドキャスト「セントウタイセイ.com」。かなりマニアックなものから有名どこの邦画を独特すぎる視点で時に厳しく時に毒々しくだけど基本は面白おかしく語っておりますので、是非聞いてやってくださいませ。
よろしくお願いします‼︎