2018年2月観賞映画ひとことレビュー
2月の総鑑賞本数は20本。目標300本だとちょっとペース的に足りない感じ…頑張ります。
ではでは、今回も劇場鑑賞を中心に。
「マンハント」
なぜに今「君よ憤怒の河を渉れ」のリメイクなのか、しかもなぜにジョン・ウーなのかという素朴な疑問はさておいて(というかその理由はインタビュー等で知りましたけど、あえて問いたい笑)、いやー久々ジョン・ウー節全開の爽快スチャラカおバカ映画でした。いや別にバカにしているわけじゃあなくて、ウー校長(C映画秘宝)じゃなきゃ絶対に撮れない映画であり、そういう意味では作家主義全開の芸術作品と言えるかもしれません。まあお話はあって無いようなものなので、辻褄がやら伏線やらそういうレベルの事を言うのは野暮ってもので、これはもうウー校長の伝統芸というかセルフパロディ(では無くて至芸か)を堪能するためだけの映画であるので、主人公がどうみても有能な弁護士に見えない中国人(というかごめんなさいチンピラにしか見えないっす)なのにやたら日本に精通しまくっていたり(というか大阪であの一軒家、金持ちなんですねえ笑)、福山雅治のハードボイルドもどきな演技がやたら気恥ずかしい(というか本人が恥ずかしがってるのがわかるのはどうだろう)とか、桜庭ななみの萌え演技がもう萌アニメそのまんまなのが恐ろしいとか、大会社の襲名パーティでまさかのパラパラ(恥ずっ笑)とか、その会社の陰謀がやたらハリウッドテイストで飛躍しまくりとか、意味なく銃をぶっ放す女殺し屋たちの超現実っぷりっとかそういうツッコミどころ満載なのは、笑ってスルーするのが礼儀。なので、「鳩がー!」とか「スローモーション!」とか「二丁拳銃!」とか「やっぱ階段は背中で滑って撃ちまくりよねー」とかそういうレベルで楽しめば良いのです。というかそのレベルだとこれ以上ないくらいウーイズム全開の最高の映画です。そういう意味では香港発ハリウッド経由放浪中のウー校長の今の立ち位置がわかりやすすぎる形で出まくったまさにザ・ジョン・ウー映画です。ただ!正直これを面白いとオススメする勇気は僕には無いです…笑
★★
「グレイテスト・ショーマン」
いやもうカッコよすぎて歌が上手くてダンスも出来て、性格も最高にいい(いや本当のトコは知らないですが)、本当に欠点の無いナイスガイ・ヒュー・ジャックマン主演のなんだかやたら評価が高いミュージカル。うん、確かにこれ、気持ちいいです。歌は最高、ダンスはお見事。最高にノレるリズムとテンポ。それなりに苦しみはあるけれど誰もが最後にはハッピーになれるストーリー。いやーヒットするのもわかります。そりゃここまでお見事でキレキレ超絶アクロバティックダンスをここまでの計算され尽くした演出とカメラワークと編集で見せられた日にはそりゃもう興奮MAXなのもわかります。でも本当それだけ。いやもうここまで薄っぺっらい映画も久しぶりでした。とにかく何もかもが薄っぺらい。というかこれ、P・T・バーナムの成長譚という本筋はまあ置いておいて、サイドストーリーはものすごく重くて辛いストーリなはずなんです。外見がフリークスというだけで虐げられて来た人々が己を肯定し、生きる意味を見つけていくというサイドストーリーがこんなに簡単にサクサク進んでいくというかその扱いの雑さといったら、正直逆に差別的な違和感を持ってしまうほど。「これが私!」なんて高らかなに歌い上げられても、それまでの彼らの苦しみ(こんな簡単な事では無いはずだ)から抜け出そうと決意する時の葛藤(これもこんな簡単な事では無いはずだ)があまりにも浅いというか陳腐すぎて興醒めしてしまいました。ものすごくサクサク進みすぎるその構成が、この映画をただ単に歌とダンスを繋げただけのショーにしてしまっているのが狙いなのはきっとそうだろうし、この映画の中で小難しいというかかなり厳しい現実を描く
事に意味があるのかと言えば微妙なところかとは思うけれど、それにしてもここまで薄っぺらいのは余りに無礼では無いかと思ってしいました。まあこの映画自体がヒュー・ジャックマンの自伝かと思えばそれはそれで納得できるし(きっと彼らはミュータントですね)、歌とダンスが最高に興奮できるのは認めるけれど、それを差し引いてもここまで無礼で軽薄な映画を手放しで褒めるわけにはいかないというのが正直な気持ちです。
★★
「ゆれる人魚」
で、そんなミュージカル大作と同じ日に観てしまった制作費何百分の一であろうポーランド産のヘンテコホラー(?)ミュージカル。肉食系(文字通りの意味で)の人魚二人の地上での珍道中を描いたというか、ポーランドというあまりよく知らない国(失礼)のよくわからない現実を知ることができるある意味貴重な映画です。冒頭から妙にトウがたったご婦人の妙に耳の残る80年代っぽいポップスが流れ、その妙な雰囲気のまま映画が進んで行きます。時々妙すぎるポップスと下手すぎるミュージカルシーンを挟みながら映画は怒涛のホラー展開に進んでいくのですが、その展開というか設定も妙にヘンテコ。兎にも角にも余りに変すぎるというか独特すぎて観てるこっちが置いてけぼりになるというある意味トンがった快作(怪作)…ていうか全編余りに下手すぎて人様に観せられるレベルに達していないという、自主映画に毛の生えたダメ映画でした。テンポは悪いわ演出は的外れだわ音楽は陳腐だわヒロインは素人だわ演技ははちゃめちゃだわで正直お金をもらえるようなレベルでは無いのですが、それでもなぜか妙に心に残るというか、その素人臭さがツボにハマるというか、そういう不思議な映画ではありました。決して勧めませんが、ちょっと違う世界と覗いてみたいという好奇心旺盛な方は怖いもの見たさでどうぞ。
★★★
「悪女 AKUJO」
韓国映画に関しては余り知識が無いというか、語れる程観ている訳では無いので一概には言えないのだけれど、こと暴力映画に関しては今世界で一番面白いものを作っているのでは無いかと思います(新感染の遠慮の無さも気持ち良かったです)。そんな訳でやはりこの映画も昨今のアクション映画の中では最高峰の出来栄えでした。基本ストーリーは「ニキータ」+「レオン」というか、まあ取り立てて目新しいものでは無いのだけれど、とにかくアクションのキレ具合が半端なく凄すぎ。冒頭の「ハードコア・ヘンリー」シーン(しかもワンカット笑)から、もうやり過ぎアクションのオンパレード。必要以上に飛び散る血飛沫とリアル過ぎる刃物の突き刺さり感が途中から快感に変わるその高揚感は久しく忘れていた映画的興奮を味あわせてくれます。久しぶりに”やり過ぎの美学”を堪能出来ただけでお腹いっぱいなのに、ストーリーも余りに極悪。余りに遠慮しがちな昨今の邦画(もちろんそうでは無いのもあるけれど)と違い、韓国映画は振り幅が半端ない。救いの無さ過ぎる展開からの絶望感しかないラストまで、全編負の要素で突っ走るその怨念じみたパワーと情念を描く事に一切の妥協をしない、したくないという怨念にも似た美学に韓国映画の底力を見せつけられました。しかしほんと韓国映画の極端さというかこの遠慮しないパワーって凄まじいなあと改めて感心しつつ恐ろしいものを感じました。
★★★★
「ビガイルド 欲望の目覚め」
まああの変態映画「白い肌の異常な夜」を、ポップでガーリー(笑)を売りとする監督がリメイクしたらまあこうなるわなあという想像通りの凡作。結局、それ以上でもそれ以下でも無いところにソフィア・コッポラの限界を感じてしまいます。というか、全体としてほんと真面目というか、こういう展開ならこういう演出でこういうセリフでこういうカメラワークでこういう構図だよなというオーソドックスさを一歩も踏み越えていないのは昨今の映画としてはどうなの”という感じで、このストーリーのキモである女性特有の”美しさの中の猛毒”が余りにファンタジーに寄り切った甘さによって希釈されまくりなのはある意味卑怯というか逃げな気も。全体にそういう”女性である”という甘えが見えまくるのが正直堪らなく不快でした。とは言ってもそれは自分が男だから感じる部分でもあるとは思うので一概にそれが欠点とは言えないのですが、前作のイーストウッドが登場人物から見れば”怪物”でありながらも観客からはかわいそうな男であり得たのに、今回のコリン・ファレルが薄っぺらい”男”としか見えなかったのはある意味女性と男性の違いを如実に示している感もして、そういう意味では心理学的な比較対象としては面白いのかもしれません。豪華な割にそこが浅いありきたりな演技していない(させてもらっていない)女優陣と、幻想的と言えばスモークだ的なあからさまにセンスの無い映像センスと共に前作の表面だけを薄っぺらく再現しただけの駄作です。
★★
「ザ・シークレットマン」
傑作「大統領の陰謀」の裏側を描いたポリティカルサスペンス。というか昨今流行りの実話もの。大統領選挙の133日前、ワシントンD.C.にある民主党本部に、男たちが勝手に入り込んだとして逮捕される。捜査を担当するFBI副長官のマーク・フェルト(リーアム・ニーソン)に、FBI長官代理のパトリック・グレイ(マートン・ソーカス)が干渉し、48時間以内に捜査を済ませるように指示する。フェルトは「TIME」と「The Washington Post」の記者に捜査内容をリークし…(Yahoo映画より)。とまあアメリカ史上最強のインサイダーを描いた映画という事で、これはもうスリルとサスペンスに溢れた一大エンタテインメントが観れると思いきや…いやーいたって地味ーな映画でした。物語的には色々凄まじい事件も起きるし、エスピオナージュ的なスリルもあるし、自分の信念と国家の危機を秤に掛けるという個人と社会という絶対的に面白い葛藤もあるし、やろうと思えばいくらでも脚色というかドラマティックに描けるものを、この映画の場合ひたすら地味ーにクソ真面目にクソ丁寧に描いて行きます。なので敢えて言わせていただければ非常に退屈。全ての出来事を全て同じ様に等しく描くものだから、盛り上がりも何もなく本当に淡々と進んで行くし、リーアム・ニーソンもそんな淡々さを、抑揚の全く無い押さえまくったジメジメした演技で表現。よくよく考えればけっこう強烈なキャラなのだけれど、必要以上に枯れた味わいのため、飄々とした雰囲気さえ漂ってきてしまっています。だからなのかキモである感情移入が一切出来ないという悪循環にも陥っていて、映画です全体の地味さにいっそう拍車がかかったりしています。前作「コンカッション」ではその真摯な目線が妙にハマって心地いほどの正義感が溢れた傑作に仕上げたランズデマン監督ですが、今回はそれが裏目。結局その真面目過ぎるその姿勢が、今回のディプスロートの様に一概に善悪で測れない様な事件では裏目に出てしまうという事なのでしょう。まあ色々言ってきましたが、決して悪い映画では無く、アメリカの闇を真面目に真摯に語ろうとするその姿勢には素直に敬意を表したいし、かなり複雑な人物を淡々としつつも詳細な演技とディティールで、リアルな人物に見せようとしたニーソンはじめ役者陣の取組姿勢も素直に拍手。エンタテインメントとして見ればかなり物足りないものの、信念に生きた不器用な男たちの戦いの記録として見ればよく出来た映画だと思います。まあ全体にもっと色気があったらマイケル・マンになれたなあとは思いますが笑
★★★
ここでお得な映画番組情報‼︎台東区の銭湯「有馬湯」をキーステーションにお送りする毎回1本の映画について僕の友人である40代男達が語るポッドキャスト「セントウタイセイ.com」。かなりマニアックなものから有名どこの邦画を独特すぎる視点で時に厳しく時に毒々しくだけど基本は面白おかしく語っておりますので、是非聞いてやってくださいませ。
よろしくお願いします‼︎