2017年7月鑑賞映画ひとことレビュー
今年も折り返しの7月。色々あって鑑賞本数は17本と少なめ。しかも劇場で見逃した映画が多数(「ディストピア」「バイバイマン」「パワーレンジャー」…)あって、少し残念な感じですが、とりあえず今回も数少ないながらも劇場鑑賞をメインに。
では。
「パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊」
前作があまりの出来だったので、色々リスタートした第5弾。にして多分ラスト作。前作の反省を踏まえ、ジャック・スパロウを完全な脇役にし、主人公を若い二人にし、物語を1〜3作目の流れにしたのはナイスな判断。もともとジャックは主役というタイプじゃあなく物語を引っ掻き回すジョーカーにしないといけないキャラなので、今回のストーリーは至極真っ当かつ妥当な判断の元作られた続編としてはある意味完全な王道で、そこはさすがのハリウッドだなあとは思うのですが、それにしては全体にあまりに魅力が無さすぎ。新キャラの二人も設定自体はなかなかに面白いのにスター性というか迫力というか覇気というかそういう輝くものがあまりに無さすぎるし、他のキャラにしても何故か全員に元気が無いというか、目が死んでるというか、そういう雰囲気が映画全体に漂っていて全く盛り上がらない。お話自体も王道故の冒険が無いというか破綻が無い分パワーも無く、総じてただただ流れて行くような平板な印象。なのでどうにも盛り上がりのない一言で言えばつまらない映画となってしまいました。これはもう一重に監督の力量不足で、ただストーリーを破綻なく描く事に一杯一杯で、どう伝えれば効果的だとかそういう所(いやそれが演出なんですが)まで手が回らなかったのが明白。まあ現場が相当混乱してたってのは同情しますが、それでもこういう大作を切り盛りするにはあまりに経験不足&力量不足だったのではと思います。その証拠がジャック・スパロウに全く魅力がない事。やる気のないジョニデをそのまま好き勝手やらせてるからどこを取っても間違いだらけ(というかジョニデのやる気の無さがそのまま画面に出てきてる時点で映画としては失敗かと)。もはや飽きとマンネリの境地に達してしまったシリーズを象徴してしまった残念な映画となってしまいました(というか1作目以外はそれほどできのいい映画でもなかったんですがね)。本国でもコケたらしいし、ブラッカイマーもやる気ないみたいだし、これでシリーズ打ち止めになるでしょう。まあそんな残念でもないですが。
★★
「ジョン・ウィック・チャプター2」
小粒だけどピリッと辛いジョン・ウィック待望の続編。前作のヒットを受けて予算も増え、やりたい放題やりきった感がちょっと気持ちいいバカな映画愛に溢れた愛すべきバカ映画でした。前作から内容はググッとバカ路線へ。殺し屋コミュニティからの脱出劇という、いろんなアクションシークエンスをやりたいがためのストーリーはいっそ清々しいほど中身なし。だからこそアクションが最重要になるのだけれど、そこはスタント出身監督。あの手この手で新しいアクションを見せてくれます。それに応えるキアヌも前作のぬぼっとしつつもキレ味あるアクションからパワーアップ。今回は柔術も含めた格闘アクションも充実。ノンストップの殺し合いを堪能できます。ここまで雑魚がバッタバッタと殺されまくる映画も久しぶりで、昨今のご時世的に大丈夫なのかしらとちょっと心配になったのは自分が年をとったせいなのかなあ少しと遠い目をしてしまいましたが、そんな事よりもスカッと爽やか爽快殺し合いをここまで堪能できたのは本当に久しぶりでそういう意味でも懐かしくも楽しい映画ではありました。とは言えどんな美味しいものでもそればっかりじゃあ飽きるってなもんで、ここまでひたすらアクションばかりだと、どうしてもだれてしまうのも事実。そこはもう少し大人になっても良かったのではとは感じました。正直長いし。100分ぐらいにギュギュッと凝縮して、アクションを二つ三つ削ってドラマ(稚拙でも何でもいいんです、ジョン・ウィックと誰かの絡みをもう少し見たかった)を入れたら傑作になったのになあとは思いますが、それは野暮ってものかも。兎にも角にもやりたい放題、好き勝手やった作り手たちの喜びが充満した愛すべき映画です。
★★★
「ライフ」
エイリアン的なSFホラーっていうかそのまんまなんですが、出ているキャストが結構A級。というか彼らがどうしてこの映画に出たのかは正直意味不明ではありますが、まあそれはそれ。予告編を見る限りかなりの本格的な感じもしてたので、久方ぶりの本格SFホラーが観られるかと結構期待してた本作。確かに本格的ではありました。違う意味で。そもそもこの映画、ちょっと未来のISSが舞台なだけあって宇宙空間での描写をかなりリアルに描いてます。言うなれば「ゼロ・グラビティ」+「エイリアン」。まあそれがコンセプトなんでしょうが、いかんせんそれが裏目。リアルな分だけ動きに制限があってスピード感がゼロ。全体にすごくリズムが悪く、それにつられてか物語もスローモー。どうにもサスペンス感が緩い、言ってしまえば退屈な映画となってしまいました。加えてリアルという制約を儲けたために全体が妙に地味に。派手な場面を作れず、全体にこじんまりとした映画となってしまいました。アンサンブルキャストの妙はそれなりに生きてるものの、シナリオもリアルの制約のせいかどうにも中途半端。モンスター映画に振り切ってしまえばそれなりに面白い題材だっただけに、製作者達の妙な中二思考が仇になった勿体無い映画でした。しかし今回だけじゃあなくハリウッド製のこの手の映画のモンスターデザインってどうしてこうもありきたりなんでしょうか。もっと冒険したものが観てみたいです(そういう意味で「メッセージ」は頑張ってました)。
★★
「メアリと魔女の花」
宮崎駿の偉大さを痛感した反面教師的な駄作…は言い過ぎだけど、センスの有無がいかに大事かを再認識した映画でした。とにもかくにも全てにおいてどこかで観たようなシーンばかり。加えてストーリーもどこかで読んだ、観たようなものばかり。そもそもなぜこれを映画化しようと思ったのか、これが映画に値するような物語だったのか、そこから大いに疑問。だってほんと取り立てて面白い、光るものがある、新しい、とは全く思えない物語で、それをそのままストレートに映画化するそのセンスの無さにまず唖然。しかもその演出もありきたりというかどこかで観たようなイメージばかり(というかジブリ映画で観たものばかりって事っすね)。いや別にこの監督がジブリの後継者を自認してそれを突き詰めるのはいいのだけれど、なぜに宮崎・高畑映画が評価が高いのか(突き詰めれば両巨人の映画には冒険心があったのだと思う。守りに入らない攻撃的な映画作り。それが驚きと興奮を生むのだ。例えそれが失敗だったとしても)、それをほんともう一度考えて欲しいし、表面だけを擬えたところで、どうしようもない事を今一度真剣に考えて欲しいと思います。昨今のディズニー製CGアニメばかりのハリウッドとオタク向けの内輪的なアニメばかりじゃあほんとアニメ界は廃れる一方だと思うので、こういうオリジナルなアニメにはほんと頑張って欲しいと思うのだけれど、その期待の星がただジブリの表面だけを真似た守りに入りまくりの映画だったりすると本当に悲しいし怖くなる。なぜ去年「この世界の片隅に」があれほどまでに評価され、ヒットしたのか(「君の名は。」はある意味でジャパニメーションの限界を感じた映画でした)、この監督はそこのところをもう一度徹底的に考え分析してこんなジブリの消しゴムカスみたいなものじゃあなく、自分の個性を発見して欲しいものだと思います(とはいえこのジブリモノマネが個性と言われてしまえばもう何にも言い洋画ないんですがね笑)。
★★
「ウィッチ」
昨年からある方面でやたら評価の高かったゴシックホラー。
1630年のアメリカ・ニューイングランド。信仰心のあついキリスト教徒の一家が村外れの森の近くに移り住んでくる。ある日、生後間もない赤ん坊が突如姿を消す。一家に不穏な空気が流れる中、父ウィリアム(ラルフ・アイネソン)は、まな娘のトマシン(アニヤ・テイラー=ジョイ)が魔女ではないかと疑い…(yahoo映画より)
荒々しく寒々とした原野、鬱蒼として不気味な森…舞台設定は完璧。ひたすら暗く、色合いの薄い世界で描かれる狂信的な家族に起こる悲劇の連鎖…まあここまでストレートなゴシックホラーはほんと久しぶり。舞台設定などは全く異なるけれど、「赤い影」とか「白い家の少女」とかの雰囲気が一番近いか。徹底して作り出された厳粛かつ不気味かつ美しい画面は物語の持つ濃密な妖しさを一層引き立て、映画全体として一貫した雰囲気を出すことに成功。また言語や風習に到るまで徹底して時代を再現したことにより、その時代の持つリアルとファンタジーの境界の近さを表現することにも成功。そういう所にも監督のセンスの良さが光ります。またストーリー自体もかなりの怪しさで、狂信的な故に徐々に壊れていく大人たちを筆頭に、主人公以外の人物たちの壊れっぷりが半端なく、特に妹、弟の幼さゆえの残酷さが秀逸。姉を魔女と信じて疑わず、無邪気に陥れようとするその様が個人的には一番の恐怖でありました。基本的には一人の少女の受難を描いた正統派なホラーなので、凝った捻りやどんでん返しもない、オーソドックスなストーリーなのだけれど、そんなシンプルなものでも細部のこだわりや演出でここまで面白くなるという見本のような佳作です。後、主人公を演じたアニヤ・テイラー=ジョイ。「スプリット」でもいい味出してたゴス系美少女ですが、ここでもその危うい魅力全開(というかこれでブレイクしたんですね)。か細く繊細ながらも妖しい色気全開の彼女、演技力はもとより日本人受けしそうな美少女なのでこれからますます人気が出そうです。
★★★★
「怪盗グルーのミニオン大脱走」
いやーミニオンかわいいっす。というかもうそれだけであとはどうでもいいんですが、そういうわけにもいかないのでいちおうひょうかしようとはおもいますが、いろいろかんがえてみてもやっぱりミニオンかわいいでおわってしまいます。だってグルーとかそのむすめたちとか、グルーのかのじょとか、しょうじきどうでもいいんですよ。というかかれらぜんぜんみりょくてきじゃあないんですもの。どちらかというとムカつくかんじ。まえからおもってたんですが、このアニメかいしゃキャラつくりがすごくヘタ。でてくるキャラがみんなきほんてきにじぶんかってでイライラするっていうのはもはやねらいとしかおもえないくらい。こんかいもほんとイライラしっぱなし。こんかいのミニオンはかんぜんにそえものなのでえいががふたつあるようなかんじなんですが、ミニオンがでてこないパートはほんとたいくつ。いっこうにもりあがらないものがたり、じぶんかってすぎてイライラするだけのキャラ、わざとらしくてはずしまくりのギャグ…もうミニオンだけでいいです。でも「ミニオンズ」もひどいできだったから、もうちょうへんなんかつくらないでミニオンのたんぺんしゅうをつくればいいのになあ、というかグルーとかもうしょうじきどうでもいい。というかグルーもうみたくないです。さよなら。というわけでミニオンがでてくるところだけチャプターでみられるようになるであろうブルーレイまでまったほうがせいしんえいせいじょういいとおもいます。
★★
「ザ・マミー 呪われた砂漠の女王」
モダンモンスター総登場シリーズ”ダークユニバース”の開幕を告げる、まさかのトムクル主演ミイラ映画。ミイラはともかくなぜにトムクル?と不思議に思ってたのですが、観て納得。これ、ヒーロー誕生もの、「ミイラビギンズ」なんですね。なので「ハンナプトラ」とか期待してしまうと肩透かし必死。というかもはやミイラ自体の設定が揺らぎまくりで、ゾンビやら超能力やらいいとこ取りしまくりの節操のないモンスターに豹変。というわけでその何でもあり感を楽しめるか否かがこの映画の鍵。個人的には途中まさかの「スペースヴァンパイヤ」リメイクかと俄然盛り上がったりしたものの、全体としては詰め込みすぎで下手くそな映画という印象でした。ミイラ再生のリメイクだからそれが根本なのはもちろんで、それだけでもきちんとやれば相当なボリュームだと思うのですが、シリーズ第一弾という事でいろいろやらなきゃいけない事もあるし、せっかくのトムクル主演だからアクションもやっぱりやりたいし、やっぱり恋愛要素も不可欠だし、ミイラをセクシー女性にしたんだからそこもやっぱり強調しておきたいし、ホラーなんだからゾンビとかも出したいし、ミイラなんだから砂嵐もやりたいし、大好きな「狼男アメリカン」のキッチュな笑いもやりたいし…てな感じでやりたい事、やらなきゃいけない事のごった煮状態で観てる方がついていけない状態。やり手の監督ならそれもきちんと交通整理するんでしょうが、シナリオライターとはいえやはり新人監督、どうにもこうにもしっちゃかめちゃかでどれもが印象に残らないという最悪の結果になってしまいました(あとヒロインがあまりに昔ながらのヒロインでそれにもちょっとイライラ)。まあ着地点はそれなりに収まったし、これから先の展開も結構面白そうではあるので、今回だけで終わって欲しくはないですが、何にせよもう一度きっちり状況把握、整理整頓して欲しいとは思います。
★★★
ここでお得な映画番組情報‼︎台東区の銭湯「有馬湯」をキーステーションにお送りする毎回1本の映画について僕の友人である40代男達が語るポッドキャスト「セントウタイセイ.com」。かなりマニアックなものから有名どこの邦画を独特すぎる視点で時に厳しく時に毒々しくだけど基本は面白おかしく語っておりますので、是非聞いてやってくださいませ。
よろしくお願いします‼︎