2016年5月期鑑賞映画つぶやきレビュープラス1
もうこの方式が馴染んできてしまってるこのブログ。サボりと言われてもしょうがないんですが、今年はこれで行こうかなあと…まあ記録に残すことが大事ってことで。
5月は全26本。あんまり劇場に行けてないのが悲しいですが。
例によって箸にも棒にもかからないものは書きません。
しかしもはやつぶやきではない長さ…
では
「テラフォーマーズ」
いやもう、もしかしてとか、奇跡的にとか、そういう希望は全くなかったわけではないんです。だって腐っても三池崇史。出来不出来の差(気合の入れ方とも言う)があまりに激しいとはいえ、どれも「やっぱり映画」っていうものを感じさせてくれる、なんだかんだで”映画監督”(そう、あの超駄作「神さまの言う通り」でさえ、やっぱり”映画”なんですよ。結局、撮り方っていうか演出が”映画”してるんですね。それはまあ例えばアングルだったり、演技だったり、編集だったりまあ色々なんですが、それがやはり劇場で見ることを前提に考えらてるって事で。それはもう染み付いてる癖みたいなものなんでしょうね。良くも悪くも。)。
そんな三池だからこそ、一縷の期待を持って劇場まで行ってしまったわけです。もちろん最悪の前評判は知ってましたし、それなりの覚悟も持ってました。
いや~想像を遥かに超えました。その出来の悪さに。いやもう何が悪いかとか何がどうとか言いだしたらきりがないんですが、決定的なのがセンスというかやる気の無さ(最初のブレランモドキでもう笑うしかなかったです。つうか古すぎ笑)。正直邦画だし、予算がないのは百も承知。大体原作自体が完結していないし、そもそも登場人物全員日本人って時点で違うわけだし、もうそういうところは今更文句言うところじゃあないわけで(っつうかそれを言うのは野暮ってもんです)ないならないなりに知恵と工夫を凝らすのが映画人ってもんでしょう。それがこの映画には一切感じられない。もう画面全体から滲み出す諦めと手抜き感。全編「金無いし時間も無いからしょうがないじゃん」的な諦めと開き直り。それが一番腹が立ちました。まだ進撃の方が戦う意欲が見えたしやってやろう感があた分だけ(前編だけですが)許せたりもするのだけれど、これはもうハナから諦めの境地。しかもそれが映画の全容素に伝染しまくってるという悪循環。これはもう三池云々じゃあなくて、もう構造的な問題かと。このまま原作つきの安易な映画の濫発すれば、邦画の全体のレベル低下(と格差化)とそれによる観客のレベルの低下が一層進み、邦画のガラパゴス化が現実のものになるかもしれないという危機感を本当映画に金を出してる方々は持ってもらいたいと切に願います。
★
「ちはやふる 下の句」
っと書いておきながらまたもや原作つき映画。しかし「上の句」のなかなかの出来につられ「下の句」も一応鑑賞。上の句が良かったのは完全にスポ根として開き直った結果だと思うのですが、それは「下の句」に恋愛路線は回せばいいやってことだったのかも。というわけで「下の句」は正直微妙な出来でした。というのもやっぱりこの映画、主役であるはずの千早に全く魅力がない。しかも今回の展開ではもはやイライラを通り越して腹が立つレベル。これは物語の展開上しょうがないのだけれど、それを補い応援出来るようなキャラにまで引き上げる演技力というか魅力がどうしても広瀬すずにはないかなと。その分真島が魅力的になればいいのだけれど、前作からやっぱり彼はミスキャスト。どうしても感情移入出来ないというか、真島に必要なリーダーシップかつナイーブで繊細な面が見えてこないのはやっぱり役不足というしかないかなと。とりわけ新役やしのぶ役の子がいいものを持ってるだけに余計この二人の未熟さが目立ってしまいました。
とはいえ2部作としてはきちんとまとまってるし、全体としてはいい出来の映画だと思います。綺麗に終わるラストも好感度高いし。と思ったら続編製作決定(笑)いやいやラストつながりませんよ汗
★★★
「ズートピア」
昨今のピクサー。どうにも今ひとつ。なんというか、トキメキがない。「トイ・ストーリー」の生命感、「モンスターズ・インク」の感動、「ミスター・インクレディブル」の興奮…ピクサーを一言で言えば「センス・オブ・ワンダー」これに尽きると思います。基本お話は道徳的な王道ストーリー。それが才能ある人間たちが知恵を振り絞り持てるセンスを全てつぎ込んだ楽しくて驚きに満ちた世界の中で展開されるわけだからそりゃ面白くないわけがないってなもんで。正直ピクサーは物語を語るために世界があるんじゃなくてその逆だからこそ面白いので、それはもうピクサー以外ではありえない事だったりすんですね。だから、そこの世界の作り込みがおろそかになったら自ずとピクサー映画って面白く無くなる訳で。そういう意味でどうも最近、特に「モンスターズ・ユニバーシティ」あたりからその辺の詰めが甘くなってる気がします(とはいえ「インサイドヘッド」は良作でした。これは久しぶりにセンス・オブ・ワンダーに溢れてました…)。で、「ズートピア」もそのイマイチ甘い部類でした。肉食・草食・寒冷・熱帯などに世界がわかれてるっていう設定自体は素晴らしいもののそれが今ひとつ生かしきれてない印象。細かいディティールも今ひとつツッコミ不足というか想像の域を出ない感じであまり驚きも無く、しかも一番残念なのは物語がその設定を生かしきれていない事。偏見と差別が裏テーマなのはいいとして、それならもう少し世界観を作り込んで物語の根幹にまで落とし込む工夫が欲しかったし、今までのピクサーならそれが出来ていたはず。例えば野生に帰る事が果たしてそこまで悪い事なのか、というか、そもそも人間もどきの生活に至るまでの進化の道程とか、じゃあ人間はどこに行ったのかとか、昔のピクサーならそこまでやっていたはず。そういうセンスの輝きもなく、ただ擬人化して表面的な道徳振りかざしストーリーを語られてもやはりそれはつまらないかなと。どうもディズニー傘下になってからピクサーは量産しすぎなような気がします。も少し落ち着いてじっくり考え抜かれたキラリと光るものが観たいです。
★★
「ヘイル・シーザー」
コーエン兄弟って本当映画好きなんだなあって事が改めてわかる映画。つうかそれだけ。というかコーエン兄弟影武者使った?っていうくらい箸にも棒にもかからない平凡な映画。豪華すぎるキャスティングの無駄遣いぶり(改めてジョージ・クルーニーとコーエン兄弟の相性の悪さが露呈されました)から見ると、本当ハリウッド黄金期を再現する事だけが目的だったんじゃあないの?っていう位の内容の無さはもしかして確信犯かもですが(あえてそういう薄っぺらい内容でハリウッド黄金期を茶化した可能性もあるかと)それは正直観てるものにとってはどうでもいいというか。確かに豪華スターが再現するシーンは最高でしたが、ただそれだけというのは正直苦痛。確かに色々ストーリーもあったのだけれど、それが全く印象に残らないのはあまりにおざなりというか手抜きというか。そもそもコメディって感情移入っていうか、観客の代弁者たるキャラクターが必須なんだけれど(と云うかこういうシテュエーションコメディは特に)、コーエン兄弟、神の目線タイプ監督なのでそういうキャラがすごく苦手。なのにこういうコメディ大好きっていうのは、ある意味無い物ねだりなのかもしれません。でもそんな欠点を密かに補った快作が「xyzマーダーズ」、「赤ちゃん泥棒」なんですが、それはまた別の機会に。
★★
「モンスターズ 新種襲来」
怪作「モンスターズ」の作る意味あるのか的続編。なのに実は結構面白かったという拾い物的な佳作でありました。まあ低予算・無名のキャスト・スタッフっていうのは当然として、そんな時一番大事なのは面白い物を作ろうとする気概。アイデアを突き詰め、徹底的に研ぎ澄まし、その成果をいかに映画として魅せるか。そういうところの血涙振り絞る的なところが結構みえたこの映画。中東の砂漠で大暴れする巨大なタコとか、ジープに追走する犬系のモンスターとかなかなかに唆る映像。こういう絵があればこの手の映画は成功だと思います。まあストーリーとかは…なんでそこを期待すると落胆しますが、異質なものが異質な空間で存在感を示すっていうSF的映像に目がない人にはタマラない映画です。
★★★
「野火」
映画秘宝界隈で非常に評価が高い本作。映画館で鑑賞出来なかったので、ソフト化を機に鑑賞。いやー力作です。鑑賞後これだけ疲れた映画は昨今無かったです。とにかく映画全てのベクトルが戦争の本質=ただの殺し合いに向かって突き進んでいるのが凄まじい。しかもそこに遠慮が全くないので目を背けたくなる場面しかないっていう潔さ。これはもう興業度外視でこの映画を作らなきゃっていう使命のみで突き進んだ塚本監督の執念の賜物。ある意味自主映画でなければ成立しなかった凄みがこの映画のすべてだと思います。スプラッタ描写の遠慮の無さや物語の展開のあまりの救いの無さにも全て監督の覚悟。その覚悟の強さが何故か妙に心地よくなってくるのはある意味映画鑑賞の醍醐味だといえるでしょう。まあ細かいところを言えばチープさが正直目立っているし、HD(?)の映像はどう見てもこの映画には合わない。もちろん事情があるのは百も承知だけれど、そういうお金的な面で悔しい思いをしてしまう今の日本映画界の状況を踏まえ、それでも一人の映画監督の激情がこれほど表現されてる邦画は昨今無かったので、そういう面でも必見の力作です。スプラッタ描写が苦手でという言い訳はこの映画の場合絶対に観ない言い訳にしてはいけません。それを踏まえて全てを受け止める覚悟を持って観るべき映画です。
★★★
「ゾンビ・ガール」
「グレムリン」「ハウリング」などで一世を風靡した巨匠(断言!)ジョー・ダンテの新作!でも劇場未公開。しかも超B級・低予算。
でもそれがいい!正直映画としての出来はハチャメチャです。というかストーリー、全然面白くないです。多分世の中学生がノートの端に思いのまま書いたような陳腐すぎるお話です。でも、そこがいい!というかそれでいいんです。だってもうダンテめっちゃ楽しそうなんです。もう好きな事を全部詰め込みましたっていうか、思いついた事全部やっちゃえ的な悪ノリ感が半端ない。まさに”やっちゃえダンテ”的なノンストップバカが炸裂。乗れない人には全く乗れないけれど、少しでも波長があったらこれほど楽しい映画もまあないでしょう。決してオススメはしないけれど、ある人(ゾンビ大好き!意地悪大好き!植物図鑑なんて絶対観ねえ!アート系ってなんぞや?っていう人)にはタマラないクソバカ映画。
★★★
「神様メール」
うーん。予告編でこれは弾けたバカ映画だと思って観に行ったのですが、何気に結構真面目なスピリチュアル系映画でした。って事が全てで、要はバカになりきれない、中途半端な映画。神様がベルギーにいてしかも最低のクズ野郎ていう設定は最高。前半の神様が世界を作っていくあたりはバカセンスに溢れてて最高なのだっけれど、娘がメールを送って家出してから失速。安直な人間賛歌に堕落してしまいました。別にそれでもいいのだけれど、使徒それぞれの物語がどうにも練り込み不足。どうして彼女はゴリラに惚れるの?どうして彼は女の子になりたいの?とかそういう疑問が次々出てきて途中から完全に置いてけぼり。いや原題からすると監督はこちらがやりたかったんだろうけれど、全人類が余命を宣告されたらっていう素晴らしいアイデアをこんな風にしか扱わないのはやっぱり監督の変なヒューマニズムというか、知性のひけらかしというか。それが妙に鼻につく、ある意味ヨーロッパ映画らしい映画。でももしモンティ・パイソンが同じ設定で映画作ったらさぞや毒だらけのブラックに満ち満ちた傑作が生まれただろうなあなんて見ながら妄想してしまいました。それほどクソ野郎神様って設定は魅力的なんだけれど…
★★
「エンド・オブ・キングダム」
一言。やっぱりこういう映画はやりすぎの快感がないとつまらないなあ…良くも悪くも普通のアクション映画に成り下がってしまったのはやっぱり”こりゃやりすぎでしょう”的な勢いが足りないからでしょう。とはいえここまでシナリオが穴だらけなのに、ある程度見れてしまう、退屈はしないのはそれなりにアクション演出が及第点なのとジェラルド・バトラーの溢れ出る漢汁のおかげ。ラストの決め台詞(ネタバレなんで書きませんが)、大笑いしました。近年稀に見るバカ決め台詞。ここ(のみ)最高でした。しかしよくこんなセリフ書けるな笑
★★
「デッドプール」
いやまさか日本でここまで話題になるとは思わなかったです。祝!大ヒット!
正直予告編は結構不安でした。なんかリズム悪いっていうか、キレがないなあて思ってました。すいません。
まさか俺ちゃんがここまで完コピされて実写化されてるとは夢にも思いませんでした。この無責任で善悪の彼岸どころか現実と虚構の壁まで安安と超えてしまってる最終兵器的キャラがここまで実写映画にフィットするとは。これはもうシナリオライター(本当のヒーローってクレジットされてましたね。納得)の功績。それプラスもちろんこの人・ライアン・レイノルズ。セクシーNo.1の絶頂期から、あの緑の人のせいで下積みに突入、出演作がこの若さで44本もあるという壮絶な経験を経て満を持してのデップー。つうかもうレイノルズ=デップー以外考えられないというか、これからレイノルズはデップー以外出れないんじゃないかというくらいのハマリ役&気合の入れよう。違う役者が同じセリフ、同じ演技をしたら絶対にムカつくであろうキャラがレイノルズ渾身のおふざけ&愛嬌でここまで可愛くなるとは。さすがに企画から制作、果てはシナリオにまで関わり現場でデップーまんまでアドリブしまくったレイノルズ。これ相当というか徹底的に研究してないと絶対にできない演技です。本当報われてよかった…正直彼のそんな万感の思いに溢れた演技を見るだけで涙を禁じえませんでした。アクションも何気に快調だし、まあ敵が弱いのとX-メンが二人だけ(でもキャラたちまくりでよかったですが)っていうのも少し寂しいし、全体としてまとまりすぎてる感も否めないなあと。恋愛ドラマを軸にした分だけ結構ストレートな仕上がりで、まあそれがヒットの一因でもあるのだけれど、バカ映画っていうほどバカになり切れてない感は否めないかなと。でもその両極をなかなかのバランス感覚でまとめた監督の力量は大したもんだと思います。とにもかくにも才能豊かな大の大人たちが、その能力の全てを使って真剣に命がけでバカとドラマの融合を突き詰めたこの映画、去年のマッドマックスまではいかないにしろ、作り手たちの愛が伝わって来る、本当に愛すべき可愛い映画だと思います。とにかく大ヒット、本当におめでとうデップー=レイノルズ。
★★★★
以上。今回は本数少ないのに全体が長すぎ、まとまりなさすぎでした。ラストまで付き合っていただきありがとうございました苦笑
もうこの方式が馴染んできてしまってるこのブログ。サボりと言われてもしょうがないんですが、今年はこれで行こうかなあと…まあ記録に残すことが大事ってことで。
5月は全26本。あんまり劇場に行けてないのが悲しいですが。
例によって箸にも棒にもかからないものは書きません。
しかしもはやつぶやきではない長さ…
では
「テラフォーマーズ」
いやもう、もしかしてとか、奇跡的にとか、そういう希望は全くなかったわけではないんです。だって腐っても三池崇史。出来不出来の差(気合の入れ方とも言う)があまりに激しいとはいえ、どれも「やっぱり映画」っていうものを感じさせてくれる、なんだかんだで”映画監督”(そう、あの超駄作「神さまの言う通り」でさえ、やっぱり”映画”なんですよ。結局、撮り方っていうか演出が”映画”してるんですね。それはまあ例えばアングルだったり、演技だったり、編集だったりまあ色々なんですが、それがやはり劇場で見ることを前提に考えらてるって事で。それはもう染み付いてる癖みたいなものなんでしょうね。良くも悪くも。)。
そんな三池だからこそ、一縷の期待を持って劇場まで行ってしまったわけです。もちろん最悪の前評判は知ってましたし、それなりの覚悟も持ってました。
いや~想像を遥かに超えました。その出来の悪さに。いやもう何が悪いかとか何がどうとか言いだしたらきりがないんですが、決定的なのがセンスというかやる気の無さ(最初のブレランモドキでもう笑うしかなかったです。つうか古すぎ笑)。正直邦画だし、予算がないのは百も承知。大体原作自体が完結していないし、そもそも登場人物全員日本人って時点で違うわけだし、もうそういうところは今更文句言うところじゃあないわけで(っつうかそれを言うのは野暮ってもんです)ないならないなりに知恵と工夫を凝らすのが映画人ってもんでしょう。それがこの映画には一切感じられない。もう画面全体から滲み出す諦めと手抜き感。全編「金無いし時間も無いからしょうがないじゃん」的な諦めと開き直り。それが一番腹が立ちました。まだ進撃の方が戦う意欲が見えたしやってやろう感があた分だけ(前編だけですが)許せたりもするのだけれど、これはもうハナから諦めの境地。しかもそれが映画の全容素に伝染しまくってるという悪循環。これはもう三池云々じゃあなくて、もう構造的な問題かと。このまま原作つきの安易な映画の濫発すれば、邦画の全体のレベル低下(と格差化)とそれによる観客のレベルの低下が一層進み、邦画のガラパゴス化が現実のものになるかもしれないという危機感を本当映画に金を出してる方々は持ってもらいたいと切に願います。
★
「ちはやふる 下の句」
っと書いておきながらまたもや原作つき映画。しかし「上の句」のなかなかの出来につられ「下の句」も一応鑑賞。上の句が良かったのは完全にスポ根として開き直った結果だと思うのですが、それは「下の句」に恋愛路線は回せばいいやってことだったのかも。というわけで「下の句」は正直微妙な出来でした。というのもやっぱりこの映画、主役であるはずの千早に全く魅力がない。しかも今回の展開ではもはやイライラを通り越して腹が立つレベル。これは物語の展開上しょうがないのだけれど、それを補い応援出来るようなキャラにまで引き上げる演技力というか魅力がどうしても広瀬すずにはないかなと。その分真島が魅力的になればいいのだけれど、前作からやっぱり彼はミスキャスト。どうしても感情移入出来ないというか、真島に必要なリーダーシップかつナイーブで繊細な面が見えてこないのはやっぱり役不足というしかないかなと。とりわけ新役やしのぶ役の子がいいものを持ってるだけに余計この二人の未熟さが目立ってしまいました。
とはいえ2部作としてはきちんとまとまってるし、全体としてはいい出来の映画だと思います。綺麗に終わるラストも好感度高いし。と思ったら続編製作決定(笑)いやいやラストつながりませんよ汗
★★★
「ズートピア」
昨今のピクサー。どうにも今ひとつ。なんというか、トキメキがない。「トイ・ストーリー」の生命感、「モンスターズ・インク」の感動、「ミスター・インクレディブル」の興奮…ピクサーを一言で言えば「センス・オブ・ワンダー」これに尽きると思います。基本お話は道徳的な王道ストーリー。それが才能ある人間たちが知恵を振り絞り持てるセンスを全てつぎ込んだ楽しくて驚きに満ちた世界の中で展開されるわけだからそりゃ面白くないわけがないってなもんで。正直ピクサーは物語を語るために世界があるんじゃなくてその逆だからこそ面白いので、それはもうピクサー以外ではありえない事だったりすんですね。だから、そこの世界の作り込みがおろそかになったら自ずとピクサー映画って面白く無くなる訳で。そういう意味でどうも最近、特に「モンスターズ・ユニバーシティ」あたりからその辺の詰めが甘くなってる気がします(とはいえ「インサイドヘッド」は良作でした。これは久しぶりにセンス・オブ・ワンダーに溢れてました…)。で、「ズートピア」もそのイマイチ甘い部類でした。肉食・草食・寒冷・熱帯などに世界がわかれてるっていう設定自体は素晴らしいもののそれが今ひとつ生かしきれてない印象。細かいディティールも今ひとつツッコミ不足というか想像の域を出ない感じであまり驚きも無く、しかも一番残念なのは物語がその設定を生かしきれていない事。偏見と差別が裏テーマなのはいいとして、それならもう少し世界観を作り込んで物語の根幹にまで落とし込む工夫が欲しかったし、今までのピクサーならそれが出来ていたはず。例えば野生に帰る事が果たしてそこまで悪い事なのか、というか、そもそも人間もどきの生活に至るまでの進化の道程とか、じゃあ人間はどこに行ったのかとか、昔のピクサーならそこまでやっていたはず。そういうセンスの輝きもなく、ただ擬人化して表面的な道徳振りかざしストーリーを語られてもやはりそれはつまらないかなと。どうもディズニー傘下になってからピクサーは量産しすぎなような気がします。も少し落ち着いてじっくり考え抜かれたキラリと光るものが観たいです。
★★
「ヘイル・シーザー」
コーエン兄弟って本当映画好きなんだなあって事が改めてわかる映画。つうかそれだけ。というかコーエン兄弟影武者使った?っていうくらい箸にも棒にもかからない平凡な映画。豪華すぎるキャスティングの無駄遣いぶり(改めてジョージ・クルーニーとコーエン兄弟の相性の悪さが露呈されました)から見ると、本当ハリウッド黄金期を再現する事だけが目的だったんじゃあないの?っていう位の内容の無さはもしかして確信犯かもですが(あえてそういう薄っぺらい内容でハリウッド黄金期を茶化した可能性もあるかと)それは正直観てるものにとってはどうでもいいというか。確かに豪華スターが再現するシーンは最高でしたが、ただそれだけというのは正直苦痛。確かに色々ストーリーもあったのだけれど、それが全く印象に残らないのはあまりにおざなりというか手抜きというか。そもそもコメディって感情移入っていうか、観客の代弁者たるキャラクターが必須なんだけれど(と云うかこういうシテュエーションコメディは特に)、コーエン兄弟、神の目線タイプ監督なのでそういうキャラがすごく苦手。なのにこういうコメディ大好きっていうのは、ある意味無い物ねだりなのかもしれません。でもそんな欠点を密かに補った快作が「xyzマーダーズ」、「赤ちゃん泥棒」なんですが、それはまた別の機会に。
★★
「モンスターズ 新種襲来」
怪作「モンスターズ」の作る意味あるのか的続編。なのに実は結構面白かったという拾い物的な佳作でありました。まあ低予算・無名のキャスト・スタッフっていうのは当然として、そんな時一番大事なのは面白い物を作ろうとする気概。アイデアを突き詰め、徹底的に研ぎ澄まし、その成果をいかに映画として魅せるか。そういうところの血涙振り絞る的なところが結構みえたこの映画。中東の砂漠で大暴れする巨大なタコとか、ジープに追走する犬系のモンスターとかなかなかに唆る映像。こういう絵があればこの手の映画は成功だと思います。まあストーリーとかは…なんでそこを期待すると落胆しますが、異質なものが異質な空間で存在感を示すっていうSF的映像に目がない人にはタマラない映画です。
★★★
「野火」
映画秘宝界隈で非常に評価が高い本作。映画館で鑑賞出来なかったので、ソフト化を機に鑑賞。いやー力作です。鑑賞後これだけ疲れた映画は昨今無かったです。とにかく映画全てのベクトルが戦争の本質=ただの殺し合いに向かって突き進んでいるのが凄まじい。しかもそこに遠慮が全くないので目を背けたくなる場面しかないっていう潔さ。これはもう興業度外視でこの映画を作らなきゃっていう使命のみで突き進んだ塚本監督の執念の賜物。ある意味自主映画でなければ成立しなかった凄みがこの映画のすべてだと思います。スプラッタ描写の遠慮の無さや物語の展開のあまりの救いの無さにも全て監督の覚悟。その覚悟の強さが何故か妙に心地よくなってくるのはある意味映画鑑賞の醍醐味だといえるでしょう。まあ細かいところを言えばチープさが正直目立っているし、HD(?)の映像はどう見てもこの映画には合わない。もちろん事情があるのは百も承知だけれど、そういうお金的な面で悔しい思いをしてしまう今の日本映画界の状況を踏まえ、それでも一人の映画監督の激情がこれほど表現されてる邦画は昨今無かったので、そういう面でも必見の力作です。スプラッタ描写が苦手でという言い訳はこの映画の場合絶対に観ない言い訳にしてはいけません。それを踏まえて全てを受け止める覚悟を持って観るべき映画です。
★★★
「ゾンビ・ガール」
「グレムリン」「ハウリング」などで一世を風靡した巨匠(断言!)ジョー・ダンテの新作!でも劇場未公開。しかも超B級・低予算。
でもそれがいい!正直映画としての出来はハチャメチャです。というかストーリー、全然面白くないです。多分世の中学生がノートの端に思いのまま書いたような陳腐すぎるお話です。でも、そこがいい!というかそれでいいんです。だってもうダンテめっちゃ楽しそうなんです。もう好きな事を全部詰め込みましたっていうか、思いついた事全部やっちゃえ的な悪ノリ感が半端ない。まさに”やっちゃえダンテ”的なノンストップバカが炸裂。乗れない人には全く乗れないけれど、少しでも波長があったらこれほど楽しい映画もまあないでしょう。決してオススメはしないけれど、ある人(ゾンビ大好き!意地悪大好き!植物図鑑なんて絶対観ねえ!アート系ってなんぞや?っていう人)にはタマラないクソバカ映画。
★★★
「神様メール」
うーん。予告編でこれは弾けたバカ映画だと思って観に行ったのですが、何気に結構真面目なスピリチュアル系映画でした。って事が全てで、要はバカになりきれない、中途半端な映画。神様がベルギーにいてしかも最低のクズ野郎ていう設定は最高。前半の神様が世界を作っていくあたりはバカセンスに溢れてて最高なのだっけれど、娘がメールを送って家出してから失速。安直な人間賛歌に堕落してしまいました。別にそれでもいいのだけれど、使徒それぞれの物語がどうにも練り込み不足。どうして彼女はゴリラに惚れるの?どうして彼は女の子になりたいの?とかそういう疑問が次々出てきて途中から完全に置いてけぼり。いや原題からすると監督はこちらがやりたかったんだろうけれど、全人類が余命を宣告されたらっていう素晴らしいアイデアをこんな風にしか扱わないのはやっぱり監督の変なヒューマニズムというか、知性のひけらかしというか。それが妙に鼻につく、ある意味ヨーロッパ映画らしい映画。でももしモンティ・パイソンが同じ設定で映画作ったらさぞや毒だらけのブラックに満ち満ちた傑作が生まれただろうなあなんて見ながら妄想してしまいました。それほどクソ野郎神様って設定は魅力的なんだけれど…
★★
「エンド・オブ・キングダム」
一言。やっぱりこういう映画はやりすぎの快感がないとつまらないなあ…良くも悪くも普通のアクション映画に成り下がってしまったのはやっぱり”こりゃやりすぎでしょう”的な勢いが足りないからでしょう。とはいえここまでシナリオが穴だらけなのに、ある程度見れてしまう、退屈はしないのはそれなりにアクション演出が及第点なのとジェラルド・バトラーの溢れ出る漢汁のおかげ。ラストの決め台詞(ネタバレなんで書きませんが)、大笑いしました。近年稀に見るバカ決め台詞。ここ(のみ)最高でした。しかしよくこんなセリフ書けるな笑
★★
「デッドプール」
いやまさか日本でここまで話題になるとは思わなかったです。祝!大ヒット!
正直予告編は結構不安でした。なんかリズム悪いっていうか、キレがないなあて思ってました。すいません。
まさか俺ちゃんがここまで完コピされて実写化されてるとは夢にも思いませんでした。この無責任で善悪の彼岸どころか現実と虚構の壁まで安安と超えてしまってる最終兵器的キャラがここまで実写映画にフィットするとは。これはもうシナリオライター(本当のヒーローってクレジットされてましたね。納得)の功績。それプラスもちろんこの人・ライアン・レイノルズ。セクシーNo.1の絶頂期から、あの緑の人のせいで下積みに突入、出演作がこの若さで44本もあるという壮絶な経験を経て満を持してのデップー。つうかもうレイノルズ=デップー以外考えられないというか、これからレイノルズはデップー以外出れないんじゃないかというくらいのハマリ役&気合の入れよう。違う役者が同じセリフ、同じ演技をしたら絶対にムカつくであろうキャラがレイノルズ渾身のおふざけ&愛嬌でここまで可愛くなるとは。さすがに企画から制作、果てはシナリオにまで関わり現場でデップーまんまでアドリブしまくったレイノルズ。これ相当というか徹底的に研究してないと絶対にできない演技です。本当報われてよかった…正直彼のそんな万感の思いに溢れた演技を見るだけで涙を禁じえませんでした。アクションも何気に快調だし、まあ敵が弱いのとX-メンが二人だけ(でもキャラたちまくりでよかったですが)っていうのも少し寂しいし、全体としてまとまりすぎてる感も否めないなあと。恋愛ドラマを軸にした分だけ結構ストレートな仕上がりで、まあそれがヒットの一因でもあるのだけれど、バカ映画っていうほどバカになり切れてない感は否めないかなと。でもその両極をなかなかのバランス感覚でまとめた監督の力量は大したもんだと思います。とにもかくにも才能豊かな大の大人たちが、その能力の全てを使って真剣に命がけでバカとドラマの融合を突き詰めたこの映画、去年のマッドマックスまではいかないにしろ、作り手たちの愛が伝わって来る、本当に愛すべき可愛い映画だと思います。とにかく大ヒット、本当におめでとうデップー=レイノルズ。
★★★★
以上。今回は本数少ないのに全体が長すぎ、まとまりなさすぎでした。ラストまで付き合っていただきありがとうございました苦笑