300 帝国の進撃


まーいまどきの副題がつけられ、少し切ない気分になってしまったこの映画。


あの「漢たちのパン一筋肉肉弾血祭り」大傑作でなぜかレンタルでは異様な人気の「300」の続編なのに妙に扱いが悪いのはなぜなのだろう。劇場ではあっというまに終わってしまってるし、興行成績の上位にも結局顔を見せず。「アナ…」なんかよりよっぽど映画らしい映画だったんだけどなーってほんと切なくなってしまいます。


前作のあまりのかっこよさ&くどさ&濃さに強烈にやられたものにとって続編は正直歓迎せざるものでして。なんてったってあの漢の中の漢、レオニダス王はすでにいないのだから。あのはちきれんばかりの筋肉から湧き出る漢臭、何者をも寄せ付けない頑強な意思と、屈強な漢たちからの尊敬を一身に集める強烈なリーダーシップ。たくましさの中にほのかに見せる家族への愛と仲間への信頼と愛。そんな我らがヒーロー・レオニダス王亡き後300が成立するわけはないと思っていたので。


で、今作。正直物語はあってなきがごとし。


なんやかやで前作はそれなりの物語があり、そのストーリーがシンプルかつストレートだったため観てる方もすんなりとあの世界に入り込めたし、ひたすらかっこよさとクールさを追求しまくったあのグラフィックノベル感全開かついかにも映画的な動きを兼ね備えた発明(的映像)を堪能できたわけで、ザック・スナイダーはそれなりに抑揚というかそのあたりのバランス感覚があったりします。


今回の続編、作りこまれた(作りこみ過ぎた)映像はほんとかっこいいし、アクションなんかもほんとクール。たぶんシーンシーンでこれ以上かっこいいい映像ってこれから10年は生まれないんじゃないかと思います。それほど各々の映像はかっこよくてしびれます。でもなんというか、ひたすら豪勢な料理を延々喰わされてるような感じ。そのあたりのバランスがどうにもへたくそで、やっぱりそれでは飽きてしまうってもんです。

かてて加えて今回結構物語が複雑。バックトゥザフーチャー2方式の物語は大谷のストレートのような剛球じゃなく高速スライダーのような少しひねった感じなので今一つすんなり入り込めません。プラス主役をはじめとする男性陣。まあレオニダス様と比べるのは酷かもしれませんが、どうにも線が細い。前作であれほどの化け物ぶりを発揮したペルシャ王でさえ今回少々影が薄くなってます(まあこれは一重に見せ方の問題なんですけど。神さまを人間に落としちゃダメでしょ)。


とまあいろいろ欠点がある映画ではあるんですが、そんな様々な問題をすべて吹き飛ばしてしまったのが我らが姉御。エヴァ・グリーン。いやー男前です。別嬪さんです。エロいです。怖いです。くるってます。

もうエヴァ様だけで、この映画全部オッケーです。ちょっと上目使いの憎々しい視線ときれきれのアクションのマッチ感、狂気をはらみすぎてにじみ出まくってる緊迫感。それなのに愛した男に対するちょっとした目線の妖艶さ。いやもう最高です。


もうこの映画、そんなエヴァ嬢の存在を体験するだけでおなか一杯どころか別腹にもなにか入りそうな、そんなエヴァ嬢のためのスター映画でした。


★★★