ヒアアフター


死にかかわる3人の心の機微を描いたわが師匠イーストウッド大先生の最新作。


さすがです。

見事です。


もはやこれはわびさびの世界。


まったく無駄のない、研ぎ澄まされた映画。

物語を効果的に語るためだけにすべてのベクトルが向かっている、その潔さ、高潔さ。

イーストウッド師匠だからこそ許される、その謙虚さ。(地味さといってもいいかもしれない)


素晴らしいです。


また役者の演技も見事。

自然なのに伝わる、その絶妙のバランス。ちょっとしたしぐさ、目線の動き、セリフ回し、どれも自然なのに、その意図するところが完璧に伝わる。ともすれば大げさになりがちな物語なのに、そんなことを一切感じさせないナチュラルさ。いかに撮影現場の雰囲気がよかったのかまでわかってしまいます。


物語が物語なので、どこか嘘くさく、眉唾的なところが出てきてもよさそうなのに、それを感じさせない上品さ。

これは一重に師匠の物語だけを語ろうという抑制のたまものです。


しょっぱなのかなり大がかりな特撮シーンよりも、料理教室の二人の(かなりエッチな)やりとりとか、怒りをかみ殺して微笑む表情とか、再会した母親に向けた満面の笑顔とか、そんな些細なことのほうがずっと印象に残ってる。そんな丁寧な仕事は現代のハリウッドにおいてはやはり師匠が最高です。


驚いて、恐怖して、笑って、泣いて、そして言葉では言い表せないあたたかな感情に包まれる。

そんな物語です。(あえて映画とはいいません)


★★★★



とはいうものの、すいません、正直ハードルあげすぎました。

これ、ここから物語が始まる!!ってときにラストを迎えるようなお話なんすね。

だからお話的には「これからやん!!」って正直思っちゃいました。

もちろんこれはこれで納得はできるし、師匠じゃなかったら観れたもんじゃないと思いますし。

まあなんにせよ師匠、次回作撮影中だそうなので(フーバーでディカプリオって…すごすぎです)上がりまくったハードルを越えてくれると信じてます(--)