今回は、早稲田アカデミーの中期経営計画について記載します。
高校受験関連のブログで、通われている方が多い早稲田アカデミーのサイトに、中期経営計画があります。(2021年1月29日公表で、2021年3月期~2024年3月期を対象)
早稲田アカデミーは上場企業なので、IR(Investor Relations:インベスター・リレーションズ)を公表しています。(決算情報などですね。)
【決算情報】
【中期経営計画】
https://www.waseda-ac.co.jp/corp/ir/policy/assets/pdf/business-plan/business-plan_notice.pdf
上記中期経営計画を見れば、これ以降を見る必要はないのですが。。。見た感想でも記載しようと思います。
※下記ですが、ぱっと見るとネガティブに見えてしまう部分もあるかと思いますが、歴史ある会社に課題があるのは当たり前ですし、受験実績・業績を確実に伸ばしているという意味では素晴らしい会社だと思います。通われている方は何も気にする必要はありませんし、これから通われる方も素直に受験実績を見れば良いのかなと思います。その点だけ了承ください。。。
中期経営計画としては極めてシンプルな構成になっているかと思います。P20,21に業績目標・利益計画を記載していますが、堅実に成長していこうというスタンスなのかなと思いました。
それに伴って、その前の内容もそれほど大きなことは宣言していない印象です。
P5に過去20年間の合格実績、塾整数・売上の伸びを記載しています。
グラフで正確な数字は読み取れないですが、下記の感じで成長してきています。これは大きな実績でしょう。
(合格実績)*2001年→2020年
御三家中学 約70人→約410人
早慶高校 約750人→約1500人
(塾整数・合格者数)*2001年→2020年
塾整数 約10,000人→約40,000人
売上 約50億円→約245億円
P8、9で骨子となる中期ビジョンを記載しています。
【既存 コア事業の強化】*全7つの内、4つを記載
授業サービス品質の向上
採用と研修育成の強化
教務システムの改善
低学年戦略の拡充
【新規 創出とチャレンジ】*全7つの内、4つを記載
オンライン校設立と展開
ICT活用新規サービス
個別指導部門の拡充展開
英語ブランド校舎展開
普段から皆さんが感じていることが、【既存 コア事業の強化】に入っているのではないかと思います。(採用と研修育成の強化 、教務システムの改善 というところでしょうか。)
P11~18にかけて、重点施策をページを取って記載しています。ここが早稲田アカデミーの計画の肝の部分になるかと思います。
印象としては、将来への明るい見通しを提示するのではなく、現時点で起こっている"課題"を積極的に解決していくという印象を受けました。歴史がそれなりにある会社なので大変な部分も多いのかなと推測します。
P12、13で「①サービス品質向上による顧客満足度の向上」で以下の2つを取り上げています。
・人材育成の強化
・ICT活用新サービス
人とシステムの面で課題をかかえていることが分かります。塾の場合の人は先生だと思いますが、人の確保・定着というところで苦労されているのかもしれません。規模が大きくなっていくと質の維持というのも難しくなってくると思いますので、今後の拡大に向けて仕組みが必要と判断されているんだと考えます。
P14、15で「②コア事業強化による合格実績戦略の推進」で中学受験、高校受験、大学受験、個別指導について言及しています。
・中学受験→教材とカリキュラムの全面改訂を進めるようです。(既に進めている?)一強のサピックスを追うためには必要な施策なのでしょうか。
・高校受験→「通常授業と志望校別コースのシナジーを高め~」としているので、私には分からないですがここに大きな課題感があるのでしょうか。「首都圏都県立の難関公立高合格実績を伸⾧させるべく~」とあるので、私立だけでなく公立にも力を入れていく方向性のようです。
・大学受験→「難関大の合格を目指す成績上位の生徒を対象とした指導に特化」とあるので、大学受験では対象を絞ろうとしているんですかね。「小中学部との連携をさらに強化し、~」とあり、中学受験を経験した人、高校受験を経験した人が、受験が終わったら離れていく現実があるってことですね。ここをどう取り込んでいくのかがカギのようです。
・個別指導→「研修育成制度の充実を進めて授業サービス品質の向上を図り、難関中高大の合格実績を伸⾧させ~」とあり、これだけ見ると個別指導より集団の方が優先になっているのかなと感じました。
P16、17に「③教育サービス創出による新収益基盤の構築」では今後の新たな収益源を目指しています。そのキーワードが
・オンライン校と海外展開
・英語教育ブランドの展開
です。ここは考えられる方向性なのかなと思います。
P18に「④永続的な成⾧を実現できる体制の構築」を上げています。
・経営基盤の強化→ICTの活用と、面白いので全文抜粋しますが、
「働きがいのある職場環境を整備し、全職員がモチベーション高く日々の業務に臨めるように、生徒・保護者の皆さまに明るく元気に接することができるようにしていきます」 だそうです。
・企業価値の向上→これは普通のことが記載されています。
P20、21の最後に数値計画を掲載しています。ちょっと私的に気になったのが、経常利益率の低さです。
2021年3月期実績が4.2%で、4.4%(2022年)→5.0%(2023年)→5.9%(2024年)の計画を立てています。塾の場合、人手ビジネスになるので経常利益率はそこまで高くはならないとは思いますが。。。
そこで、同じ規模感の塾をざっと調べてみると、リソー教育(TOMAS)と東京個別指導学院の経常利益率は10%程度でした。
利益が少ないと次への投資や、現状の課題への改善ができにくいはずなので、早稲田アカデミーの経常利益の低さは気になりました。このあたりはいつか調べて記載してみたいと思います。。
可能性としてあるのは、
・人件費の高さ→良い先生を確保・維持、他社との差別化をするためには、ある程度人件費を高くする必要があります。また、システム的な問題で、人手を多くかける必要があるのかもしれません。
・立地の良さ→立地が良いと場所代が増えていきますが、ここは他の塾も同様だと思われます。
というところかなと考えています。
一方で、うちが受講しているスマイルゼミ(ジャストシステム社)は講座の配信ビジネスなので、加入者は増えれば増えるほど、儲けることができますし、実際、すごい儲かり方です。。。羨ましいぐらいです。。。
5月中旬に決算発表がありますので、もし気になることがあればまた記載しようと思います。
早稲田アカデミーの株を一定以上保有していると、「株主優待券(自社グループで使用可能)」をもらえるようです。。。それは塾費等に使えるようです。。。ということは受験生の親に応援してもらいたいってことですね。