りんご男の事はすっかり忘れ、テレビを見ていた。
今では懐かしい、家のダイヤル式の黒電話が鳴った。
母は気だるそうにのっそりと起きてきて、電話に出た。
「はい、もしもし」の後の、声のトーンと口調が突然変異した。
今まで聞いた事のないような、いつもよりワントーン、いやツートーンほどアップした、変な口調で話し出した。
母の口調になんだか甘ったるい女を感じて、すごく嫌悪感を抱いた。
しかし、その後、「まぁ!この子ったら!りんごをどこにやったのかしら」と言い出したらから、驚いた!
なんと相手は、りんご男だったのである。
最悪だ。
りんご男は母にバラした上に、母のりんご男へ対する気持ちを少し感じ取ってしまったからだ。
電話を切った後、こっぴどく叱られると覚悟した。
しかし、電話を切った後、母の機嫌は最高潮のままだった。
なんと猫なで声で私に、「りんごどこにやったの?」と優しく聞いたのである。
私はすんなりと、いつもの隠し場所からりんごを取り出した。
なんと「隠さないでもいいのに」と、優しく言ったあと、りんごを愛おしそうに見つめたのである。
いつも知らない人から物をもらったら絶対にダメだと、あれほど言っていたのに私の頭はひどく混乱した。