母の彼氏たち
母は近所でも有名な美人だった。
今、当時の写真を見てもちょっと見惚れるほどの顔だ。
夜の蝶としてもさぞかし人気だったと推測される。
母はなぜか、色んな男と私を引き合わせた。
行った事も見たような事もないような、煌びやかなレストランで食事をした。
その後、自分の歯科医院で、私の歯の治療をした男もいた。
大きな百貨店に入る本屋の店長だかオーナーだか知らない男も、好きなだけ絵本を持って帰っていいよと言ってきた。
何も凄いと思わなかったし、私は何を聞かれてもお地蔵様のように口をつぐんでいた。
それでころか、毎回おしっこを漏らした。
幼稚園や、祖母や叔父や叔母と出かける時にさえ、漏らした事など一度もなかった。
だけど決まって、そういう時には無言で漏らした。
母は決まって、「この子、緊張してしまって」と相手の男の前で慌てた。
中には、これで新しい服を買っておいでと、お金を母に渡した男もいた。
なぜ、いつもそういう時に漏らしてしまうのか、今の自分でもよくわからない。