朝から、皆がソワソワしていた。

 

祖母は家を念入りに掃除し、叔父は普段グンゼのタンクトップにステテコが、「えっ?そんな服持ってたの?」というようなキッチリとしたシャツにスラックスを履いて、新聞に視線を落としていたが、まるで上の空のようだった。

 

 

 

 

 

一番変なのは、母だ。

 

朝から起きているではないか。しかも朝なのに念入りに化粧をしている。

 

 

「こんにちは!」

 

誰かな?と急いで玄関に走ると、髪が肩ほどまである長身の若い男だった。

 

心の中で「あっ!!」と叫んで、急いで逃げた。

 

そこに立っていたのは、確かに「りんご男」だったのだ。

 

 

 

 

 

祖母と叔父に自己紹介をした後、隠れている私を見つけて、まるで旧知の中であるかのように「〇〇ちゃん!久しぶり」と声をかけてきた。

 

わたしはいつものお地蔵さんに変身し、一切の口をつぐんだ。

 

幸い、自分の家の中なので、おしっこは漏らさずに済んだ。

 

 

母が選んだ相手は、帰り際に「これで好きな物を買いなさい」とお札を渡してきた男たちではなく、スーパーの袋に入ったりんごを、まるで遠慮するなとばかりに無理矢理押し付けてきた男だったのだ・・・。