「りんご男」改め、「お父さん」
母は、りんご男をお父さんと呼びなさいと言った。
確か、最初はなかなか呼べなかった、というか話せなかった。
会話は母を介してしているようなもので、お地蔵さんが加速し、家ではほとんど話さなくなった。
初めて、自分の部屋というものを与えてもらった。
ベットも買ってもらった。
母は誇らしそうに、「これはフランスベットという高級な物なのよ」と言った。
当時としては高級な、エレクトーンも買っていた。
母はとても浮かれていた。
母は「りんご男改め、お父さん」と恋愛中なので、わたしは家の中では一人だった。
その高級なベットやエレクトーンは、私への免罪符だったのだ。
いままでうるさい程に大人数で賑やかに暮らしていたのに、その慣れない新生活と同時に、一年生になった。
苗字も変わった。
そして一人になった。
慣れない環境の中、夜は一人でベットで寝た。
ばあちゃんのあたたかさや、変な昔話が恋しくて、毎晩静かに泣いた。
「帰りたい、帰りたい」
いつもそう思っていた。