2010年度版の日本糖尿病学会のガイドラインを見てみると、
「糖尿病の食事療法としては、カロリー制限食を推奨する」と記載されている。

総摂取カロリーは、予想される消費カロリーを計算式から求める事が出来る。

標準カロリー=標準体重×身体活動量

標準体重={身長(m)}×{身長(m)}×22

身体活動量は大体30kcal/kgで算出する。

160cmの人ならば、総摂取カロリーは1600kcalになる。

さらに、たんぱく質:脂質:炭水化物=15:25:60の割合にする事も書かれている。

しかし、このカロリー制限食は、臨床の現場では、患者にとって負担になる事が多い。

そこで、主に現場で用いるのが、
「Bernstein diet」である。

これは、Ricard K Bernsteinが1997年に提唱した食事療法である。

画期的なのは、
「糖質を130g/日に抑える」だけなのである。

このBernsteinはⅠ型糖尿病の患者である。
自身が様々な食事療法を試して導き出した結果なのである。

この糖質制限食は、「炭水化物を抑える」事が大事になる。

糖質130g/日は、白米で約400gである。

茶碗2杯程度が目安である。

この糖質制限による総摂取カロリー制限で、得られるメリットは大きい。

Ricki J Colmanは、サルを用いた実験で、「カロリー制限食は寿命延長、発ガン抑制効果がある」と2009年のSience誌に発表した。

なるべく簡単に食事療法をしたい方にはオススメのdietである。




日本人1億3000万人のうち、4000万人が高血圧症を患っている…

日本高血圧学会では、そう指摘している。

4000万人とは、アルゼンチンの人口(2010年度)と同じである。

改めて数字を見ると、驚いてしまう。

日本人の3人に1人が高血圧ならば、高血圧の原因としては何が多いのだろうか?

「塩分が多い食事」

「嗜好品(アルコール摂取、喫煙)」

「ストレス」

「不眠」

「肥満」
などと言われているようだ。

しかし、臨床の現場では、「原因不明の高血圧」が圧倒的に多い。

「高血圧になった理由は?」と言われても、「塩分の取りすぎ」や「ストレス」とは言わない。

「体質でしょう」と答えるくらいである。

では、「高血圧の治療は?」

治療方針としては、男性と女性で変えている。

男性の場合では、「降圧薬の内服」を第一選択に考える。

女性の場合では、「食事療法」を第一選択に考えている。

一般的に男性の食事療法や嗜好品中止は、困難な場合が多い。

食事を作る男性が増えてはいるが、妻に作ってもらっている場合が多いだろう。

また、外食をする事も多い。

5~6gの塩分を含んだラーメンをスープまで飲み干すのは、男性である。

長年慣れ親しんだ食事内容や嗜好品を止めるなら、死んだ方がマシという方が多い。

それならば、初めから内服の必要性を説明した方が早いし、内服の結果もすぐに出る。

「結果に納得する」のが、男性に多い。

女性は、「食事を作る」ので、食事療法を勧める。

女性の場合は、「高血圧治療過程に納得してもらう」事が必要である。

無理に内服療法を押し付けても、「納得されずに治療を続けない」のがオチである。


高血圧症は、生活の質を極端に下げてしまう疾患を合併する疾患である。

その高血圧症を治療するためには、「病気をよく知ってもらう」というよりは、「自分の体の事を大事に思ってもらう」事を一番に考える必要がある。










「症状がある患者側の目線で、救急車を使う場合」はどんな事例が適性使用になるのか?

事例を踏まえて、患者側の視点、医療従事者側の視点を交えて考えてみよう。

case6
「胸が苦しい」

危険な兆候なのかは、「胸が苦しい」という以外の症状が鍵になる。

・「冷や汗がある」
非常に危険な状態を考える。
(心筋梗塞、大動脈解離など)

移動させるのは危険なので、救急車を使用する必要がある。

・「座らないと呼吸が出来ない、肩で呼吸をしている」

呼吸不全の兆候である。
(急性心不全、肺動脈塞栓症、気管支喘息の発作)

移動は不可能なので、救急車を呼ぶ必要がある。

「息を吸うと胸が苦しい」というのは、臓器の障害ではない。

臓器の障害であれば、常に限局しない痛み(ドラマで胸を抑えて倒れるシーンがある)が体を襲う。

また、呼吸不全というのは、イメージとしては、「全速力で走った時の状態」に体が陥っているのである。

会話する事は出来ないし、
座って肩で呼吸していないと苦しいのである。

「救急の現場が少しでも改善するように…」

日々努力をしていきたいと思う。


日本人の高血圧症患者は、約4000万人(日本高血圧学会の推計)と言われている。

正直、「多い!」と思う。

では、高血圧と診断される血圧異常は?

「140/90mmHg」

高い方を収縮期血圧、低い方を拡張期血圧という。

人によっては、「150以上が高血圧だ」と主張されるかもしれない。

実は、理由があって140/90mmHgという数値に決まったのである。

それは、「日本人を研究した結果」なのである。

久山町研究といって、九州大学が1960年から久山町の住民の方々に協力してもらって、日本人に多い生活習慣病の治療とそれによる効果を研究したものだ。

その研究の結果、血圧は「140/90mmHg以下」にコントロールする事が脳卒中などの病気が減らせる事が判明した。

実際、1960年と2000年を比較すると、脳卒中による死亡は1/7以下になったのである。

こうした研究に基づいて目標血圧にまで達することが、「高血圧治療戦略」になる。

つまり、高血圧の治療は、食事療法や運動療法に加えて内服療法を考慮するのであって、「薬を飲めばいい」という訳ではないのである。

もっと単純で「薬を一回飲めばいい」なら治療に協力してもらいやすいのだが、「毎日飲んでもらい、血圧測定をしてもらう」必要があるのが、臨床の現場では悩ましい事である。




「症状がある患者側の目線で、救急車を使う場合」はどんな事例が適性使用になるのか?

事例を考えながら、患者側の視点、医療従事者側の視点を交えて考えてみよう。

case5
「熱がある場合」

救急車を使わないとマズイのは、
「意識が悪い」
という症状が出ている時だ。

「意識が朦朧としているという症状がないなら、救急車を使わない」

自分が患者である場合には、なおさらそうしている。

それは何故か?

「救急車を呼ぶ」

「救急を受け入れる病院に搬送される」

これが、救急車を呼ぶという時に起こる事だ。

救急車を呼んだ時点で、
「○○病院に行ってくれ」という事は今の救急医療環境では不可能になってしまう。

発熱している状況を我慢する事はない。

・「自力移動(タクシーの使用など)が可能な内は、自力で移動しよう。」

・「自分で選んだ医療機関に受診が出来る内に受診しよう」

そうする方が、治療への近道になるからだ。

また、救急車使用時は、この点も大事なポイントになるであろう。
・「経験の浅い医師・看護師に協力する必要がある。」

救急医療機関は、基本的に研修指定病院だ。
体がツライ状況でも、医療教育に協力する事が患者に求められる事もある。

こういった事情を踏まえて、受診行動で「救急車を使用するべきか」を考えた方がいい。

「原因は何なのか」
「早く治したい」

体調不良時にそう思うのは、当たり前だ。

ならば、原因追求に長けている医師に頼みたいと思えば、
「どこの医療機関がいいのか?」という事を考える必要がある。

それであれば、「医療機関を選べない救急車を呼ぶ事」は避けた方がいいし、自分の都合にも併せて受診する事をした方がいい。

熱が出て体が非常にツラい場合に、なるべくスムーズに治療に至るためには、
「早く受診する事」よりも「非常事態なので、計画して医療機関を利用する事」が求められる。

自分の体のリスクマネジメントの一環として、「どの医療機関を受診するのか?を考えておく」事は大事なポイントだと考える。