行って君と会うべきか、

それとも今日は諦めるべきか、

それだけでこんなに悩めるのは

ちょっとした才能だ


こうして家にいると、

やらなければならないことそっちのけで

色々と無駄なことを考え始める

ついには、「耳が赤くなるかならないか」

化学実験までしてしまった


こんな風にしていても、

いつかは君に、冷める日が来るんだろうか

今はそんなこと、とても考えられない


とても、とても

金曜日の夜のmarunouchi cafe

思い思いに過ごすオフィスピープルの間で、

私もやっぱり書いている


すごい勢いで、書き続けている

頭の左隅に、君を置いて

充分理性で、愛しているつもり


今度は、君の方が理性を失ってない?

・・・なんてね 言ってみたい


でも、君は普段あんまり理性的だから

時にはそんな風にしてほしい


今はバランスを取ってしまうけど、

もう少ししたら、私も一緒におちていけそう

歌っていると、よく

気づかないうちにポケットに手が入っていて

優しいベーシストにたしなめられた

懐かしいな もう、4年も前の自分


また知らずのうちにポケットに手が入る

いわゆる照れ隠しってやつ

今度はマイクを持っていなくて

代わりに君が、隣にいる


じっとしていると

触れている部分が暖かくて、

もう少しだけ傍に行きたくなる

本当は目をつぶって、

そこだけ感覚を拡張したい

体中にひろげたい


正気に還ると

そこは蛍光灯の照った、いつもの研究室

やっぱり君はいるけれど、もう私一人のものじゃない


本当は君も連れていきたい このtripに

黒生は、ただのビールが嫌だった私の前に

キャラメル・ラテは、お酒の飲めないHさんの前に


100万ドルとまではいかないが、

70万ドルくらいの夜景が、パノラマに拡がる

ぼんやりと見とれて、最初のうちは

会話も飲み物もなかなか進まない


君は少し向こうにいて、

やっぱりお酒を前に、別の大人と談笑する

ここはやっぱり、露骨には見ないように


唯一同じ立場の相手に、この態度は不自然?

…なんて、自分でつっ込みたくなるくらい


君を見ない 話をする大人だけに視線を送る

一人でゲーム


オッケイ、うまく目を合わせずにバーを出た

さっき、10m越しに合ったのを除いてね


強い女の子だと思わないで

本当はすごく、我慢してる

最近結構、うまくいっている。


プレゼンはつっかえないし、評価は悪くない。

春からの付き合いになる、教授や学部生の信頼も得ている感じ。


自分はまだまだとはいえ

憧れのエンジニアたちと仕事ができるし、

1日1日、何かを得ている。

生きている実感が、ありありと体に染みてくる感じ。


だからこそ、完璧じゃないと気が澄まない。

ちょっとしたミスが、自分で許せない。


だけど実は、もう一つ理由があって

それは、久々に君と会ってしまったから。


笑っちゃうよ。


君がどんなにすてきでも

次会った時はまっすぐ見られるように、

少しでも完璧でいたいだなんてさ。


ぴりぴりしているようでも、

中身はこんな感じなの。


君には、もしかしたら

全てお見通しなのかもしれないけれど。


ねえ、すごく会いたいな。

複雑で面倒な文脈をぶっとばして

今、すぐに。

皆でバカになって、制服なんぞ着てみる

きっかけがなければできないことだから、満喫


君を、遠目に盗み見る


びっくり!

予想していたよりも、ずっとよかったから

・・・なんて思ってしまう自分が恥ずかしいので

ずっと普通を装っていた


でも、びっくり!


不覚にも、こんなところで

惚れ直してしまった


また君を、好きになったよ

君が、


君が目の前で

知らないところへ連れて行かれそうだったから、

ごく自然に待ったをかけた。


「困るんです!」


誰が?自分が?


ついに言ってしまったね、と言われたが

なぜか幸せな一瞬でもあったのだ。

他愛ない会話をエンジン音で飲み込みながら、

車が、渋谷の交差点に差し掛かる


私は、ここで降りなくちゃいけない


君は安全のために前を見ていなくちゃいけなかったから、

ドアを開ける前に、ギアにかけた手首を

右手で少し握った

「がんばってね」とだけ、言いながら


まだ雨が降っていて、

赤いバックライトは、雑踏と喧騒の中に

すぐ見えなくなった

少しだけ見送って、歩き出す


君の口元が笑っていたことを

思い出しながら


霧のような雨が

少しだけ街の夜景を、やさしく見せている

秋のある木曜日

「お前にマックは失礼だと思って」


本当は一人だとケチってマックチキンと飲み物で済ませるし、

帰りがけ、国道沿いを歩きながら缶チューハイを飲んだりするんだけど、


あなたのその言葉、

ちょっとうれしかったんだ

23歳になって最初の夕暮れを

研究室の窓から、見るとはなしに見ている

蓮向かいでは先輩が書き物をしていて

隣では助手Fさんが仕事をしていて


穏やかで、平和なひと時


「23歳、何かましたい?」

そうだね、何かますか

かましちゃうか かましちゃえるのか

その前に、Reeewind!


思いが、思い出が、大切な人たちが

体に力をくれる


ここ数日、風向きが変わってくるのを感じている

もうそろそろ、帆を揚げる?


どう出るか、どう転ぶか

今はもう、


前に行くことしか考えない