駅の売店でお茶を買ったら

 

「あら、お月見。着物って素敵ですねえ。」

 

とお声がけいただく。

 

自己満足で着ているものの、気がついてもられるとやっぱり嬉しい。

 

帯あげを月に見立てたお月見コーデ

 

草木染作家の西橋はる美「月華」は月の満ち欠けが絣で織りだされています。
 
この季節、超大活躍のれえすの花の木賊に兎の刺繍帯をコーディネート。

 

公共交通機関を利用したのは、東博の「きもの展」以来、ひと月ぶり。

 

どうしても、みたい作品があったのです。

 

第67回日本伝統工芸展が日本橋三越にて開催中(〜9月28日まで)

 

コロナの影響で春の部会展と支部展が開催されなかったこともあって、久しぶりにズラッと作品群をみました。

 

工芸会の公募展には、「本展」といわれる日本伝統工芸展、「部会展」といわれる専門分野別の組織展、「支部展」といわれる9つの支部展があります。中でもこの「本展」の審査はとても厳しく、著名な先生でも必ずしもその作品があるとも限りません。緊張感を持って公募展に出展することは伝統を継承し、さらに向上していくために切磋琢磨することに他なりません。

 

またその至高を鑑賞するということは、きものエンドユーザーも目を養うことになります。

 

 

文部科学大臣賞 松枝哲哉「光芒」

 

ぜひ、多くの方に肉眼でみてほしい作品です。

 

夜空のような深い藍地に白い彗星の軌跡が藍の濃淡で表されています。光が対角線上でパッと開いたような意匠となっていて大きな躍動感となって迫ってくるようでした。

 

作品の前には喪章。

 

今年7月、松枝哲哉さんはご逝去されました。

 

2017年の夏に、久留米の工房へお伺いしました。

 

久留米絣の歴史から重要文化財の指定条件。絣をつくる絵糸、絵台、緯取枠、半機、小乱れ上げ…。そして絵絣をつくるのに欠かせない粗苧(あらそ)について、藍について、木綿について、本当にたくさんのことを教えていただきました。

 

画一的だった絵絣の世界に、自然や宇宙の躍動感を織りこんだ作品は、工芸の世界の新しい可能性と広がりをみせてくださいました。

 

この世の中に素晴しい作品を、そして絣の世界に道標となる遺作を残してくださったことに、感謝申しあげたいと思います。

 

ああ、書いていても涙があふれてくる。

 

なんだか悲しいニュースが多すぎますね...