松たか子さんの着物姿が話題となっています♡
アカデミー賞のレッドカーペットでの装いは世界中から最も注目されるファッション。
ここぞという時に着物を着てくださるのは嬉しいですね〜♪
さて…、こちらの総絞りの疋田鹿の子の訪問着。
松皮菱取りに松と波が金糸で刺繍されています。
「取り」というのは、着物の意匠構成のひとつ。
松皮菱や雲などの図形で画面を区切ることで変化をつけ遠近感を生み出すものです。
「松皮菱」は、桃山時代の武家の調度品の意匠に多く使われた文様。小袖の絞りの防染工程の文様取りとして辻が花にもつかわれています。稲妻っぽい菱形を組み合わせたような形が特徴です。
そして、「総絞りの疋田鹿の子」
絞り染めは、布の一部を糸で括る、縫い締める、折りたたむ、などをして圧力をかけた状態で布を染めることで、布の一部分に圧力をかけて染料が染み込まないように防染し文様表現をしたものこと。世界中で古くから自然発生的に行なわれている素朴な技法ですが、滲みを抑え美しく文様をだすには高度な技が必要とされます。江戸時代は絞りの技法が発達し、慶長小袖や寛文小袖のような染め分けが展開されていきます。
「鹿の子」の由来は夏の鹿の毛の斑点模様のこと。
点で表す精密な絞りはあまりにも手間がかかることから贅沢品とされ、1683年(天和3年)には奢侈禁止令が発布され、販売が中止されました。これによって新たな防染による文様表現として生まれたのが、友禅染めです。
有名人の着物の話題となると、やたらと着物は高額だという話がでてくるのですが…。
手仕事による総絞りは、超手間がかかった素晴しいものには違いないですが、高額品であるという側面ばかりがピックアップされるのは、着物業界にとってどうなのでしょう?
「本当は8ケタだけど、今なら6ケタ切って特別にお譲りします…」というようなセールストークが蔓延しそうな…。
冷静に考えたらあり得ない、あったら不条理すぎる、その場限りのセールストークは、まさに自らの首を絞るようなものです。と、釘をさしておきます。
〜 追記 〜
ネット上で、高麗屋の家紋である「四つ花菱」文様という記事が流布していますが、それはないです。なぜなら、この文様は絞りという技法の防染工程の「文様取り」だからです。
「取り」という意匠構成は、絞りという技法が発展し展開していく過程において重要な位置を示しています。