三菱創業一族である岩崎家のコレクションが所蔵されている静嘉堂文庫。
三菱二代目社長の岩崎弥之助(岩崎弥太郎の弟)と四代目社長の岩崎小弥太(弥之助の子)によって1892年(明治25年)に設立されました。
1924年(大正13年)に桜井小太郎の設計によって建てられた、スクラッチタイル貼りの洋館には貴重な史料が所蔵され、紹介による閲覧申請がないと入ることができません。
三菱を創業した岩崎弥太郎はあまり美術品に関心を持たなかったそうですが、弟の弥之助は刀剣、書画、茶道具を愛し、蒐集に力を入れます。弥之助が最初に購入した茶道具は、天下人の間を渡った大名物の唐物茶入である「付藻茄子」と「松本茄子」。
息子である小弥太は中国陶磁器を系統的に蒐集したことでも有名ですが、珠玉の名椀といわれる唐物茶碗の「曜変天目(稲葉天目)」を手に入れます。
1940年(昭和15年)に小弥太は財団法人静嘉堂を創立、1992年(平成4年)には創設100年を記念して美術館が開館しました。
静嘉堂文庫でははじめてとなる染織展「名物裂と古渡り更紗」展が開催中(〜 12月15日まで)
茶人で染織好きなら、このうえなく萌える♡
茶道具の着せ替えごっごであり、ファッションショー。
静嘉堂文庫が所蔵する染織品には装束はなく…、表具や茶道具の仕覆が主。
それは、渡来の名物裂であり、インドからもたらされた古渡り更紗などです。
茶道具と仕覆が同時展示されるという、見逃せない展覧会となっています。
国宝 大名物 曜変天目(稲葉天目)◇南宋時代(12〜13世紀)
徳川家光から春日局へ下賜され子孫の稲葉家に伝わったことから稲葉天目といわれます。小宇宙といわれる瑠璃色に虹がかかったような光彩。
紺地二重蔓牡丹唐草文金地金襴仕覆◇明時代(14〜15世紀)
室町将軍家に伝来した中国絵画の表装にもつかわれた裂地。
白地雲文金襴仕覆◇明時代(14〜15世紀)
稲葉天目が岩崎家に入った折りに新調された仕覆。
大名物 唐物茄子茶入れ 利休物相(木の葉猿茄子)◇南宋〜元時代(13〜14世紀)
千利休から徳川家光、伊達政宗と伝わった茶入れ。
松平不昧「古今名物類従」
大名物 唐物 瓢箪茶入れ(稲葉瓢箪)
挽家袋の有栖川錦、蜀錦、伊予簾緞子、薩摩間道。
瀬戸肩衝茶入れ(古瀬戸) 白肩衝
挽家袋は金地紋天鵞絨(ヨーロッパか中国)、この鶏頭金襴は金200両の記録が残る高額なもの。
気になった裂地をいくつかピック
イランの段毛織
清時代の蓮池水禽文縫取織
インドの金更紗
葡萄栗鼠の更紗
先染めの絣と後染めの更紗という技法が併用されている裂地
絣のようにみえますが手描きの染めの裂地。
敷かれている赤地の反物はロシアン更紗といわれる19世紀のヨーロッパ更紗。
ローラー捺染の16mの反物。
織の組織、技法、加飾方法、文様と、生地を多角的に鑑賞することも、名の由来から想いを馳せることも、楽し。
まだまだ、ご紹介したいところですが、これにて。
ぜひご自分の眼で鑑賞されてみてくださいませ^^/
※会場内での撮影及び「きものカンタービレ♪」への掲載の許可を静嘉堂文庫よりいただいております。
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