ご相談やご質問のメールをたくさんいただいております。そのやりとりの中で、私も気づきを得ることがあり、それはとても有り難く感謝いたしております。ですが、この秋は忙しくしておりまして、個々へすべてご返答することが、時間的にかなり辛い状況です。

 

「これは本物ですか偽物ですか」という写真付きだったり、○○だったら○○ですか?というご質問のメールをいただくのですが…。

 

まず、本物か偽物か…ということに関して言えば、反物を肉眼で見なければわかりませんのでお答えできません。反物を見たとしても、その<売り文句>の正誤の検証しかできません。

 

例えば、経糸ラミー、緯糸インド芭蕉糸をつかったインド芭蕉布を八重山上布として売っていたら、八重山上布ではないので八重山上布としては偽物です。上布でつかわれる苧麻は靭皮繊維、芭蕉は葉脈繊維という大きな違いがあり、八重山地方では上布と区別して、経糸と緯糸の繊維違いの織物は交布(ぐんぼう)とされています。経糸にラミーをつかった緯糸芭蕉糸のものは芭蕉布と称されることはありますが、繊維の違いから上布とはされません。

 

締機で織られた宮古上布らしい宮古上布を重要無形文化財として売っている呉服屋さんが多いですが、宮古上布の重要無形文化財の指定条件は、絣模様は緯絣のみであっても、手結い、手括りのみとされています。そして織歴が30年以で宮古布保持団体に入っている人が織ったもののみです。結城紬には重要無形文化財の証紙がありますが、宮古上布には重要無形文化財の証紙がありません。なのでわかりにくいのです。宮古上布の経済産業省の伝統的工芸品の指定条件の絣模様は、締機であっても、手結いであっても手括りであっても経緯糸の絣。これには伝産マークの証紙がつきます。

 

重要無形文化財も伝統的工芸品もどちらが良いものであるとか貴重であるとかの問題ではなく、文化財保護法に基づいて指定されたもの、伝産法に基づいて指定されたものの違いです。ですがそれに付加価値をつけて売るならば、その売り文句は正確でなければ、買い手にとっては、騙されたことになりかねない…ということかと思います。

 

商品が適正価格であるかのご質問も度々いただきますが、私がお答えできるものではありません。店鋪、人件費、展示会、流通、様々なものが乗っかって販売価格となるのがご商売です。

 

私が着ているものの価格をお聞きになられる方もいらっしゃいますが、購入時の価格はほとんど覚えておりません。そして、着物も帯もデザインは同じでも、つくったときでコストは違うでしょうしそれによって価格が変わることもあると思います。なので直近で覚えているものもトラブルの元となりかねませんので、お答えは控えさせていただきたいです。

 

着物のお手入れに関しては、素材によってすべてやり方は違いますので一概にはいえません。それは自分で試してみてわかることで、私もたくさんの失敗を重ねています。伸縮率、色移り、堅牢度など、状況によってどうなるのかは、毎日の生活の中で自分なりに検証しておりますが、知れば知るほど、マニュアル化できるものでもなく、糸、染料、織りによって違うものだなと実感しております。そしてそれこそが、布を纏う着物という衣裳の魅力だと思っております。

 

着物も帯もけっしてお安いものではありませんので、買物、お手入れ、様々なことで失敗したくないというお気持ちはとてもよくわかります。「きものカンタービレ♪」を読んでくださる方のお役に立ちたいとは常に思っておりますが、だからこそ、いい加減なご返答もできず…、すると返信に時間がかかりすぎてしまうという状況なので、ご理解いただければと思います。

 

着物はマニュアルでなく、着て生活してこそわかるもの。

呉服屋さん選びは、自分で足を運んで自分にあう呉服屋さんをみつけること。

 

あまり答えになっていないかもしれませんが…^^;

それを含めて、お互いに着物を楽しめますように、と願っております。

 

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相互交流までの余裕がなく心苦しく思いますが、励みになっております。
皆さまの寛容さと染織に対する好奇心が私の原動力です♡

 

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