江戸時代の小袖の意匠を復刻した訪問着のお誂えレポのはじまりです。お誂えの元になる小袖にはいくつか候補がありますが、まず着手することにしたのはこちら。

 

「白麻地唐団扇花熨斗模様染刺繍帷子」
前田家7代宗辰の正室、常子(会津藩保科正容の息女)が着用した麻地の夏の小袖です。前田宗辰と常子は1744年(延享元年)に結婚、翌年の1745年(延享2年)に前田宗辰は家督を継ぎ、その年に常子は逝去しています。なのでこの小袖は18世紀中頃につくられたのは間違いないでしょう。

江戸時代の武家女性の帷子には生絹や紋紗の生地もありますが、これは細い苧麻糸をつかった麻の上布地に摺疋田と繍で、花熨斗と唐団扇をあらわしています。

 

今回のお誂えは「小袖の意匠を復元する」ことをコンセプトとしているので、生地や技法は、江戸時代のものをそのまま踏襲するつもりはありません。あくまでも決めた予算内で、この意匠を生かした自分が必要とされるであろう用途に合わせて着るに相応しい訪問着を誂えます。

 

夏の訪問着の意匠としては別な候補があるので、この小袖の意匠は袷の訪問着にすることに。

 

唐団扇は日本では武将が軍の采配のためにつかったものであり、現在では相撲の行司軍配としてつかわれているものです。唐団扇と花熨斗の加飾方法は摺疋田と繍。繍のところをすべてを刺繍にすると重くなり過ぎてしまうので、例えばそこは友禅をつかって、でも摺疋田は可愛らしく…、軍配の房紐の刺繍は上手なところでなければ…と、お誂えをどちらにお願いするか思考を巡らせることに…。

 

「白麻地唐団扇花熨斗模様染刺繍帷子」のお誂えをお願いすることにしたのは「京都 に志田」。に志田好みといわれる雰囲気に近いものがどうやら理想型になりそうだということ、以前に絞りと刺繍を併用したお誂えをお願いしたときにとても良いものができたこと、そしてこうしたお誂えに慣れていらっしゃるというのが、お願いした理由です。

 

元となる小袖の写真をお送りし、事前にメールでもご相談させていただいた上で先月室町にあるお店へと伺いました。

 

地色は、元の小袖は帷子なので白地ですが唐団扇と反転させるように地色を濃紫色が希望。じつは以前に、に志田の若女将である郁子さんがお召しになられていた濃紫色を記憶していたのです。

たくさんの見本裂をみせていただいたのですが、自然光でみると、自分が思っていたものと今ひとつ違うような…

そしてコレ!と思ったものは、やはり郁子さんがお召しになられていたものでした。ですが引き染めではなく浸染で染められたもの。今回のような摺疋田と糊上げや友禅の併用の場合は地染めは引き染めになりますが、どうやってこの深い色を出していただくか…。

 

摺疋田の色はどうするか、摺疋田以外をすべて刺繍にするか、友禅と併用するか、生地の地紋のあるなしはどうするか。

 

そして花熨斗の花を何にするのか、軍配の配置だけではなく房紐にもこだわりを。左胸、上前、裾、後ろ、右外袖、左内袖の意匠の配置を郁子さんの振袖を元にご相談しました。

 

第1回目の打ち合わせとしては、かなり深くできたように思います。

 

次回は夏に、描いていただいた下絵をみながら生地を選ぶことになると思います。

 

かなりの長期計画になると思いますが、素材、生地、加飾方法なども事細かにご相談させていただけるので、とても楽しみです♪

 

誂えに至った経緯はこちら

江戸時代の小袖の意匠を復元した訪問着の誂え計画 〜 序章 〜

 

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