ぬぬパナはその名前の由来が八重山地方の方言であるように、八重山染織が多いこともあって、絹の着物が主流ではありません。が、あえて、日本の着物について知るなら、やはり絹についてとりあげようと、そして着物を着る立場で着心地についてあらためて考えようということで、今回のテーマは「絹の着心地はどこから」ということになりました。

 

その中でもとりあげたかったのは「糸」について。

 

例えば「紬」は、生糸を引くことができなかった繭や屑繭から紡がれて、自家用の副産物として紬が織られていたという歴史があります。しかし現在「紬」として流通しているものは、経糸、緯糸ともに紬糸がつかわれているものというのは本当に僅かであり、経糸は玉糸や生糸がつかわれることがほとんどです。ちなみに大島紬は経糸、緯糸どちらも生糸です。

 

経済産業省の伝統的工芸品となっているものは(伝産マークの証紙があるもの)は、その指定条件から消費者側も知ることができますが、用語統一されていないのでとてもわかりにくい。そしてこの指定条件があることによって、それに縛られてしまうというのもあまりよろしくないと思っているのですが、それはまた別の話。

 

着物の「糸」が何なのか。よく国産か海外産かといわれますが、国産の繭は1%にも満たないのが現状です。現在の着物として流通しているものの中で着心地を論じるならと考えて、流通している繭の処理方法と糸のつくり方に注目しました。よくいわれる「日本の絹」の証紙問題もそれがつくられた背景と本質を知らねば無意味なのです。

 

自分の着ている着物が、生繭なのか乾繭なのか、生糸なのか、紬糸なのか。座繰りなのか、手紡ぎなのか。糸の撚りは諸撚りなのか片撚りなのか、それによって着心地が違うのではないかと思いあたりました。毎日着物生活をしているので着心地は誰よりも検証できます、この利点を生かして調べることに。

 

糸については、全国の産地組合、都道府県市町村の文化財指定担当部署、製糸会社、糸問屋、そしてお付き合いのある作家さんに改めて電話取材し(このために電話はかけ放題プランにかえた)、資料づくり。これはぬぬパナのためというより、私の好奇心からです。

 

井戸端会議の講師メンバーの中でも、こんなオタクなことがしたかったのは私だけだったので…^^; 「もっとお客様のことを考えてお勉強より持ちこんだ着物を実際に触っていただいたほうが良いのでは?」ということになり、資料のご紹介はザッと流す程度にしてしまったのですが、着心地についてあらためて考えたい皆さまの「糸口」となれば幸いと思っております。糸口って言葉にまさにふさわしい。

それぞれの着物につかわれている経糸と緯糸。精練のあるなし、生糸の撚り、壁糸、駒糸、強撚糸などを、着物と一緒にならべて検証できるようにしました。各産地でご自分のところのものをされるということはあるかもしれませんが、それぞれの糸を用意して一堂にお見せするということは、まずないと思います。しかも「ぬぬパナ」の商品ではなく、私たちぬぬパナレクチャー講師陣の私物です。そして「ぬぬパナ」の作品でもないという。

皆さまに存分に触っていただけるように、ウエットティッシュも用意。拡大鏡でもみていただきました。

 

スライド資料でご紹介したのは、例えば、生繭からひいた生糸と乾繭からひいた生糸の違い。こんなに色が違うのです。

そして、久米島方式の糸紡ぎと結城方式の糸紡ぎの違い。諏訪式繰糸の実体験の話など。私はすごく不器用なのですが、絹だけでなく自然布を含めると糸づくりの体験だけはかなり網羅しています。

 

今回私が宅急便で送った着物だけでも26枚。コールマンのトランク3つに詰め込んでホテルから会場まで持ちこみました。他の講師の方々も持ってきてくださっているので、全部で何枚あったのかしら…^^;

持ち込んだ着物とスライドでご紹介したところの染織マップ

 

「染めの着物」では、染めの加飾方法について。西岡万紀さんに説明していただきました。西岡さんは京都市立芸術大学の大学院で染織学を専攻され染織実習などの講師の経験もおありになる方なのです。おそらく、染めの下地となる白生地についてももっと語りたかったと思うのですが、時間切れ。

そして染めのテーマでは「着心地は居心地から」ということで、歴史的背景に裏づいた染めの技法の用途について。当世の結婚式事情や、私が個人的に着手したお誂えのお話も。もっと井戸端会議になっても良かったのですが、そこは皆さま控えめでらっしゃったような。

 

1時間半には収まりきらないテーマであったこと、1日目は「ぬぬパナの主旨」説明から浦さんのお話になり、涙がとまらなくなり話せなくなってしまったこと、(2日目は浦さんの話は最後にしてもらった…)、お客様も着物に不慣れな方から着物の査定に興味がある方まで客層が幅広くどちらに向けて語るかブレてしまったこと、着物に触っていただくことをメインとしたため最後はわちゃわちゃだったこと、などなど…。反省点も多かったのですが、着物は何からできているのか、何のために着るのか、改めて考えていただくきっかけになってくれたらと思います。

 

アメリカ、台湾、北海道、熊本と遠方から、本当に多くの方々に来ていただきました。そして、きもの文化検定1級の歴代首席が3人!(もっといた?)これもスゴいことかも。満席でお申し込みできなかったという方も会場に来てくださり、心より感謝申し上げます。

 

「ぬぬぬパナパナのぬぬ」レクチャー講師陣。

左から、和裁師の松下妙子さん、私、ぬぬパナを浦さんの代わりに引っ張ってくださった染織作家の原千絵さん、すみれ庵の西岡万紀さん、着物さくさくの須賀凌子さんとカメラ

文化講座2日目の午前中は、松下さんと須賀さんによる半衿付け講座もありました♡

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さて、今後の「ぬぬぬパナパナのぬぬ」がどうなるのか。

多方面からお問い合わせいただきましたが、私はいつも応援するのみですので、それはつくり手の皆さん次第でしょう。ぬぬパナのつくり手は呉服業界では若手といわれますが、当たり前ですが立派な大人です。作家としてこれから販路を広げてほしいと思いますが、「ぬぬパナ」で培われた良さを無くさぬよう、忘れぬよう、そして誰かに利用されることのないよう、「ぬぬパナ」の大ファンのひとりとして心から願っています。

 

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相互交流までの余裕がなく心苦しく思いますが、励みになっております。
皆さまの寛容さと染織に対する好奇心が私の原動力です♡

 

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