コストを削減し量産化されたものが主流になることによって、本物がなくなる…というのは、着物だけではありません。

 

建具がまさにそうです。

 

現在の建具は、紡績糸のように木材を繊維状にほぐして接着剤で固めた繊維板に、インクジェット友禅のように木目調を印刷した樹脂シートを張りつけたものが主流となっています。これらは工業製品として扱われるので試験での耐久性や強度をクリアし、本物の木のような伸縮や反りが起こることがないというメリットがあります。量産化されているものなので寸法も規制サイズに決まっていることから現場での調整も必要がない、なので技術がない施工者でも扱うことができます。そして何よりも低価格です。

 

ああ、まさに着物と同じ…。

 

紡績糸ができたことで丈夫ではあるけれど、手績みや手紡ぎの技術と風合いが損なわれ、インクジェットというプリントが可能になったことで味もそっけもないコピーが出回って本物の友禅や型染めがなくなりつつあり、量産化のプレタがでてきたことで、経験と技を持つ和裁師もいなくなりつつあります。

 

しかし、建具を売っているところは、自分の扱う製品がどういうものなのかは把握していますし、あやふやな表示をして消費者を騙すようなこともありません。

 

私は紡績糸も、インクジェットも、本物との違いを明らかにし低価格で売ることはありだと思っています。着物は人の手間がかかれば高額になりすぎますし、手が届かないものになってしまうので、用途にあわせて様々なものが選べるということを望んでいます。

 

 

この数ヶ月、あらゆるインテリア関係のショールームをまわっています。そして、行き着いたのは、<本物>を造作でつくってもらうということでした。

 

しかし、今はまず材料となる木がない、それをつくることができる建具屋さんが少ない、何よりもそんなものをすべてつくったらとんでもない価格になってしまう。。。

 

というわけで、蔵戸だけは時代を経たものをつかいます。着物でいったらアンティークですね。

求めているのは、本物の素材ならではの味と重厚感なのです。

これらは調整が大変ですけれど、ゼロスタートでないので後はこれに合わせてつくれば良いのです。

どうなるかわかりませんが(設計士泣かせ)、着物にあうのはやはりこういったものでしょう。

 

野の花工房の諏訪好風先生の紫根染に雀に稲穂の帯をコーディネート。

染めたての紫根染を即買いしたのですが、2年経ってもまだ紫根染の匂いが抜けません。でも、これは本物ならではの良さです。何でも利点と難点があるのでそこを理解したうえで楽しみたいものです。

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