嫁入り道具としてある程度は着物を揃えるのが当たり前であった時代とは違って、どんなに素晴らしいものであっても、現代では着物に資産的価値はないとされています。もちろん一生ものといわれるものや、代々受け継がれるものというのは存在しますので、礼装や準礼装となるものは、むしろ一生ものであるがゆえに、着物生活をしている私でもそうそう誂えることはありません。

 

嫁入りの時にある程度揃えてもらっておりますので、次は五十路になってから、その年代以降にあうものをつくるというのが漠然とした人生の着物計画です。

 

しかし結婚後、若い頃はあまり好きではなかった着物の良さに目覚め、日常を着物生活で送るようになると、日常で楽しむ着物はいくらあっても足りません。季節限定の文様を纏って四季を謳歌したいし、日本全国の産地のものを集めて袖を通してみたくなりました。さらに自分自身の眼と足でそのつくられる現場もみたい…など、染織の世界は底なし沼のように深く、どっぷりと嵌まっております。。。

 

今、着物を着て楽しみたい人は確実に増えていると思います。着物人口が増えてくると、あらゆる場面においてより高品質のものを求める方々がでてきますので、今はあまり動きがないといわれる高級フォーマル需要も増えるのでは…と思うのですが、肝心のつくり手が高齢化していて、さらに後継者もなく、この先つくられるのは難しいのが現状です。

 

織りや型絵染めなどの工芸品や趣味性の高い作家ものの友禅は拘りのものがつくられていますが、いざというときに必要となる古典柄や吉祥柄の友禅の高品質のもの(白生地の問題も含めて)は、この数年で良いものはぐんと無くなってしまったように感じています。

 

私は、お食事に料亭の懐石からファーストフードがあるように、着物にも色々なものがあってほしいし、その時々に必要に応じて楽しみたいので、どちらもあってほしい。着物業界も着物愛好家も、自分の作品や愛するものに誇りを持つことは素晴らしいことですが、互いを非難するのではなく、認めあい有無相通じる関係であってほしいと願っております。

 

と、こんな暑苦しい着物エンドユーザーとしての想いをお話をしに、染の聚楽のアンテナショップである、銀座きものギャラリー泰三さんへ♪

 

店主の高橋泰三さんは、厳しい意見を述べられますが、教養豊かで見識があり、何よりも誠意をもって人と向き合ってくださる方だと思います。そしてその毒舌ともいえる意見は、目先の利益のみにとらわれた安易なものづくりへの抑止力として必要不可欠なのですが、毒が先にまわってしまいそうで、弱輩の私が分をわきまえず失礼とは承知しながらも、きものエンドユーザーの1人として直接お話にすることに。

 

長々と話し込みすぎて、泰三さんとのお写真を撮影しそびれましたので、泰三が誇る作品のアップを。素晴らしいでしょう〜。

 

泰三のきものは、絞りに繍箔の技を凝らした慶長小袖の現代版ともいえる豪華なものが主流です。この総刺繍は中国蘇州でされています。長浜ちりめんに友禅と桶絞りをし、総刺繍の手作業だけをエンドユーザーの手の届く(それでも遠いですが…)価格にするために中国で行なっているのです。分業制の一部を他国でしていることになりますが、刺繍の糸や図案、そして直しは京都でされています。コストを抑えて最高峰の技を伝承するという手段としてありだと思います。意義もされていることも明瞭なのですから。

 

こうした部分刺繍のものは京都でされているのだそう。

 

総刺繍を中国蘇州でされているのは、あくまでも価格を抑えるための企業努力として考えられたものであり、それを明瞭にされていることが、きものエンドユーザーへの信頼へと繫がるのです。

 

以前から泰三さんのところでつくるなら<色留袖>と思っているのですが、現状で考えるならまず付けさげかと…、心揺れるところではありますが…。これなら着こなせそうと思った逸品。

 

先日、BS朝日の「皇室スペシャル 美しすぎる美智子さま 〜京都の職人が競う名作着物30選 」という番組がO.Aされました。泰三さんが取材に協力され職人のところへ案内をし解説もされています。

「私の家にはテレビというものがありません」というお話をしておりましたので、わざわざDVDに落としてくださったのです。(これを見るにはPCに外付けのプレイヤーを繋がねばなりませんので、まだ拝見できておりませんが…)

木村孝先生も出演されているとのことなので楽しみ♪

 

こちらの写真集が番組の元になっているようです。

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「着物が売れなければ職人を守ることはできない」その通りなのです。この美しい着物の技が伝承されることはすでに難しい危機的状況のように思いますが、それでもみてくださる方が多ければ、購買に繫がり、何とか伝承される道があるのではないかしら…と、それでも一縷の望みをもって「きものカンタービレ♪」をつづけております。

 

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